スウェーデンとロシアからの支配時代を経て、約100年前にようやく独立を果たしたフィンランド。若い国ゆえの宿命か、首都ヘルシンキにはほかのヨーロッパ各都市と比べ、観光名所がそれほど多くはありません。この街の魅力は、観光用に手入れされた華やかさではなく、日々の暮らしのなかに宿る安らぎです。今回はフィンランドが世界に誇るデザインから、人々の日常を垣間見、体験できる素敵なヘルシンキの街歩きを、現地在住コーディネーターがご案内します。
文:歌野嘉子 写真:Jukka Isokoski 編集:原里実(CINRA)

生活の相棒がきっと見つかる。フィンランドデザインのギャラリー&ショップ

LOKAL(ロカル)

フィンランドの日常を、キラリと彩るデザイン。シンプルなフォルムに暖かみのある装飾や色を施したプロダクトは、世界的にも「フィンランドデザイン」としてその名を轟かせています。そんなフィンランドデザインを発信しているのがヘルシンキ中心部の「デザイン地区」。直径約1.5キロメートル、のんびり歩いてちょうど良い大きさのエリアに、およそ200のデザインショップやギャラリーが集まっています。

ギャラリー&ショップ「LOKAL(ロカル)」は、このデザイン地区の真ん中に店を構えます。フォトグラファーとしてキャリアを積んできたオーナーが、国内在住のアーティストやデザイナーに活躍の場を与えようとオープンしました。

画像: ギャラリーでは年に8回の企画展が展開されている

ギャラリーでは年に8回の企画展が展開されている

ショップで扱っているのは、日常使いの小物やアクセサリー。素材の段階からデザイナーの手を経て、私たちの手元に届くまで、そのストーリーを肌で感じられるような品々が揃います。貴重な白樺材を使った作品はどんな職人がどんな手間をかけてつくっているのか、フィンランドの生活にキャンドルが欠かせないのはなぜなのか……。手仕事の過程やつくり手の思いについて、スタッフの方のとても気さくな説明もあり、デザインに対する理解が自ずと深まります。

画像: ショップスペースには小物やファッション雑貨がずらり

ショップスペースには小物やファッション雑貨がずらり

自然の素材を大切にし、生活の相棒として永く使うことに重きを置くと、シンプルなデザインが残っていくのでしょう。旅から日常生活に戻ったあともずっと愛用したくなる、そんなフィンランドデザインの逸品がきっと見つかるはずです。

画像: 白樺のバッグ、手づくりのミツロウキャンドル、現地在住日本人デザイナー島塚絵里さんのカレンダーなど

白樺のバッグ、手づくりのミツロウキャンドル、現地在住日本人デザイナー島塚絵里さんのカレンダーなど

画像: 現地在住日本人彫刻家小山泰さんの動物たちは、ショップでも永く愛されるアイテム

現地在住日本人彫刻家小山泰さんの動物たちは、ショップでも永く愛されるアイテム

LOKAL(ロカル)
定休日月曜
営業時間火曜〜金曜11:00~18:00、土曜11:00~16:00、日曜12:00~16:00
weblokalhelsinki.com
住所Annankatu 9

穏やかな空気が流れる、イラストレーターの小部屋へようこそ

Atelier Matti Pikkujämsä(アトリエ マッティ・ピックヤムサ)

ロカルから歩いてすぐ、レコードショップやお菓子屋さんが並ぶブロックに、優しい明かりが漏れる小さなアトリエがあります。地元で活躍するイラストレーター、マッティ・ピックヤムサのお仕事場兼ショップです。

画像: ほっこりとした温かい雰囲気で、独特の味わいがあるマッティの仕事場

ほっこりとした温かい雰囲気で、独特の味わいがあるマッティの仕事場

マッティは地元ヘルシンキ芸術デザイン大学の卒業生。雑誌や書籍、新聞のコラムなどでイラストを手がけるほか、日本でも出版されている絵本作品や、4年前に始めて以来大人気の似顔絵描きなど、幅広い仕事で世界中から愛されています。

画像: 動物の原画は自宅に飾るために購入する方が多いそう。マッティの穏やかな眼差しが、描かれた動物たちの表情や仕草から感じられる

動物の原画は自宅に飾るために購入する方が多いそう。マッティの穏やかな眼差しが、描かれた動物たちの表情や仕草から感じられる

アトリエではマッティお気に入りのレコードが流れ、棚には似顔絵描きの間にふるまうコーヒー用の、個性豊かなマグカップたちが並びます。マッティの視点を借りて自然や動物を眺めるもよし、アトリエに流れる穏やかな空気に触れるもよし。ほかにはないとっておきの空間に足を運んでみませんか。

画像: マッティお気に入りのカップは、フィンランドの名窯「アラビア」のヴィンテージのほか、日本のショップ「Kirsikka(キルシッカ)」とコラボした有田焼など一点ものばかり

マッティお気に入りのカップは、フィンランドの名窯「アラビア」のヴィンテージのほか、日本のショップ「Kirsikka(キルシッカ)」とコラボした有田焼など一点ものばかり

画像: マッティの妹、手工芸作家カイサの作品も販売している

マッティの妹、手工芸作家カイサの作品も販売している

Atelier Matti Pikkujämsä(アトリエ マッティ・ピックヤムサ)
定休日なし
営業時間決まった営業時間なし
webmattipikkujamsa.tumblr.com
住所Laivurinrinne 2

ぴったりのお気に入りをいつまでも。本当に身につけたいものが見つかる

MARKET(マーケット)

デザイン地区の北東側。港に面し、週末には市場が開かれるマーケット広場の一帯には、フィンランドの手仕事や美味しいもの、魅力がぎゅっと詰まったエリア「Torikorttelit(トリコルッテリ)」があります。軒を連ねるのは、フィンランド発祥のブランドショップやハンドクラフトショップ、クラフトビールレストランや北欧料理店などなど。

画像: トリコルッテリの路地から見える、ヘルシンキ大聖堂(撮影:歌野嘉子)

トリコルッテリの路地から見える、ヘルシンキ大聖堂(撮影:歌野嘉子)

2018年7月、その一角にオープンしたばかりの「MARKET(マーケット)」は、遊び心あるデザインと機能性が好評の婦人服ブランド「R/H(アールホー)」、子育て中のママに絶大な人気を誇る子供服・婦人服ブランド「PAPU(パプ)」、ハーブスキンケアの老舗ブランド「Frantsila(フランシラ)」が共同で運営するショップとして話題になっています。

画像: マーケット

マーケット

「思考に無駄がない姿勢が三社に共通していたので、自然ななりゆきで一緒にお店を開くことになりました」と語るのは、ショップスタッフのスサンナさん。三社それぞれにとって、直営路面店としては唯一のお店です。

画像: ブランドごとのカラーが出つつも、統一感のある店内

ブランドごとのカラーが出つつも、統一感のある店内

パプは近隣諸国で生産するオーガニックコットンを使い、輸送や流通にかかるコストや資源を抑えることで、環境にも消費者にも優しい服づくりを徹底。アールホーは身体に合ったサイズを長く買い続けられるよう、定番スタイルは形を変えないという独自の商品展開が支持されています。フランシラでは天然精油を組み合わせて自分でつくれるフレグランスが人気。三社に共通するのは、「環境に配慮したものづくり」という価値観です。

画像: うさぎ耳のようなデザインは、「ミッキー」と呼ばれるアールホーの定番

うさぎ耳のようなデザインは、「ミッキー」と呼ばれるアールホーの定番

画像: 自分で精油を組み合わせる、人気のオリジナルフレグランス

自分で精油を組み合わせる、人気のオリジナルフレグランス

「アールホーを着ていたお客さまが、ママになったらパプを着てくださることも多いです。私たちが信じる価値を、年代を超えてお客さまと共有できたら最高です」。スサンナさんのまっすぐで無駄がない言葉が、マーケットという場所を象徴するかのようです。

画像: かわいい母子コーデが、パプの人気の秘密

かわいい母子コーデが、パプの人気の秘密

MARKET(マーケット)
定休日日曜(12月は12:00~16:00で営業)
営業時間平日10:00~19:00、土曜10:00~17:00
webrh-studio.fi/blogs/journal/introducing-market
住所Pohjoisesplanadi 19

憧れの家具に囲まれて滞在を。使ってわかるフィンランドデザインの真髄に触れる

Hotel Helka(ホテル・ヘルカ)

ヘルシンキの街をたっぷり散策したあとは、生活に根づいたフィンランドデザインを体験できるデザインホテルで疲れを癒しませんか。「Hotel Helka(ホテル・ヘルカ)」は、中央駅から地下鉄で1駅、徒歩で15分ほどの便利な場所に建つ老舗です。

画像: ホテル・ヘルカ

ホテル・ヘルカ

客室の特徴はなんといっても、「足ることを知る」を実践するような潔いインテリア。フィンランドデザインの巨匠アルヴァ・アアルトが手がけた家具に、若手デザイナー・ハッリ・コスキネンの出世作として知られる「ブロックランプ」など、憧れの家具に囲まれて滞在することができます。見た目だけでなく、機能を感じてこそわかるのがフィンランドデザインの真髄。実際に使ってみることで、永く愛されている理由がよくわかるはず。

画像: 全部屋の天井に飾られたフィンランドの風景写真も魅力的

全部屋の天井に飾られたフィンランドの風景写真も魅力的

画像: アルヴァ・アアルト作の永遠の定番、スツール60E(左)、デスクにはハッリ・コスキネンのブロックランプ(右)

アルヴァ・アアルト作の永遠の定番、スツール60E(左)、デスクにはハッリ・コスキネンのブロックランプ(右)

環境に配慮した宿泊施設に与えられる国際基準のエコラベル「グリーンキー」も取得しているこのホテルは、洗濯してもマイクロプラスチックを排出しないコットン素材にこだわったベッドリネンを使用しているほか、シーツやタオルの交換も申し出があった場合のみ行います。アメニティーは最小限ながら、希望すれば無料でアレルギーフリーの無香料スキンケアを提供してくれる細やかな配慮も。築90年の建物で創業50周年を迎えるホテル・ヘルカは、フィンランドデザインと同じく、一過性のトレンドで終わらない魅力に溢れています。

画像: ロビースペースはコーヒー一杯でくつろぐにも心地良い空間

ロビースペースはコーヒー一杯でくつろぐにも心地良い空間

Hotel Helka(ホテル・ヘルカ)
webwww.hotelhelka.com
住所Pohjoinen Rautatiekatu 23

家具や食器からファッション、イラストレーションまで、フィンランドデザインは日々刻々と発展を重ねています。しかし、その根底で変わらないのは暮らしに寄り添うことを大切にする考え方。この国の人々が育ててきたデザインの本当の魅力は、現地を歩いて初めて理解できるのかもしれません。ヨーロッパ各国への乗り継ぎにも便利なヘルシンキ。この街の日常を覗きにぜひお立ち寄りください。

歌野嘉子
フィンランド在住14年。メディアコーディネートを中心に旅の全般をお手伝いするオフィスウタノ株式会社を主宰。
https://officeutano.fi/

Jukka Isokoski(ユッカ・イソコスキ)
ヘルシンキを拠点にエディトリアル、ウェディング、ポートレイトを主に扱うフォトグラファー。
http://www.jukkaisokoski.fi/

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