美しき街に宿る、アンダルシアの多様な歴史
イベリア半島の南部に位置し、温暖な気候に恵まれたアンダルシア州。先史時代から人々が暮らし、古代ローマ時代やイスラム時代、その後のレコンキスタなどを経て、スペインの自治州のひとつとなったこの地域には、長い歴史のなかで育まれてきた色とりどりの文化が息づいています。
そして、アンダルシア州の州都・セビリヤの魅力のひとつが、多様性に富んだ歴史や文化に触れられることです。たとえば世界文化遺産「セビリヤの大聖堂、アルカサルとインディアス古文書館」の構成資産である「セビリヤ大聖堂」は、スペイン最大の規模を誇るカテドラル。
1402年に建設が始まり、16世紀に完成したといわれる大聖堂には、もともとはモスクのミナレットとして建てられた「ヒラルダの塔」などの見どころがあります。
また、同じく世界遺産の構成資産に指定される「アルカサル」はイスラム教徒によって築かれた城跡の上に建造されたムデハル様式の宮殿です。このように、8世紀にイスラム教徒によって征服され、レコンキスタ語に再びキリスト教徒によって奪還されたセビリヤには、異なる文化が融合することで生まれた美しい建造物が残されています。
さらにこの街には、世界最古の闘牛場のひとつといわれる「マエストランサ闘牛場」や「スペイン広場」など、アンダルシアの歴史を感じられる見どころが多数。
セビリヤを訪れたら、重層的に積み重なった伝統や文化を感じながら、ゆっくりと街歩きを楽しんでみてください。
3,000ものバルが点在する食の聖地
セビリヤを旅する人なら、誰もがこの街に息づく豊かな食文化に驚かされるはずです。スペインを象徴する食文化といえば、さまざまアペタイザーを載せた小皿料理“タパス”ですが、セビリヤにはタパスを楽しめるバルが3,000軒もあるといわれています。
街を歩けば、イベリコ豚の生ハムが名物の老舗から、カタクチイワシのフリットが人気のバル、スペイン風オムレツが評判の店まで、実に多彩なバルが軒を連ねています。「パパス・アリニャース」と呼ばれるジャガイモ料理やトマトベースの冷製スープ「ガスパチョ」、味付け肉を串焼きにした「ピンチョス・モルーノス」など、試しておきたいセビリヤ名物は数え切れないほど。
よく冷えたビールとともにタパスをつまみ、いくつものバルをはしごするのがセビリヤ流です。ちなみに、セビリヤでタパスを楽しむなら、「セビリヤ大聖堂」を中心に広がる旧市街を訪れるのがおすすめ。何軒ものバルが建ち並んでいるので、きっとお気に入りの一軒が見つかるはずです。
セビリヤゆかりの新旧アートを愉しむ
セビリヤは、スペイン屈指の“アート”の街としても知られています。
セビリヤを代表するアーティストといえば、まず名前が挙がるのがバルトロメ・エステバン・ムリーリョです。1617年にセビリヤで生まれたムリーリョは、レコンキスタが完了した15世紀末から17世紀にかけて花開いた“スペイン黄金時代美術”を代表する巨匠のひとり。ロマンティックな色彩と幻想的な光で知られるムリーリョの作品は、「セビリヤ美術館」にも収蔵されています。現在、セビリヤではムリーリョの生誕400周年を祝ういくつかの特別展が行われているのでぜひ足を運んでみてください。もちろんムリーリョのほかにも、画家のバルデス・レアルや彫刻家のマルティス・モンターネェスなど、この時代のセビリヤで活躍したアーティストは多数。街に点在する美術館を巡り、“スペイン黄金時代美術”の息づかいを感じてみてはいかがでしょうか?
セビリヤで楽しめるアートは、もちろん17世紀の作品だけではありません。たとえば映画ファンなら、街の中心部に位置する「スペイン広場」を訪れるのがおすすめです。もともと1929年に開催された万国博覧会の会場として造られたこの美しい広場は「アラビアのロレンス」や「スター・ウォーズ・エピソード2/クローンの攻撃」の撮影が行われたことでも知られています。また、建築好きなら2011年に完成した「メトロポール・パラソル」は必見。ドイツ人建築家のユルゲン・マイヤーが設計したこの建物は、格子状に組まれた木材が織りなす曲線美が印象的。「世界最大の木造建築」とも称されるスケール感は、まさに圧巻の迫力です。“スペイン黄金時代美術”の作品から現代のアートまで、セビリヤに新旧の芸術を、心ゆくまで楽しんでください。
ひとことコメント
セビリヤを州都とするアンダルシア地方には、他にも見どころがたくさん! セビリヤを起点に、温暖な気候と美しい海に恵まれた「コスタ・デル・ソル」やイスラム時代の映画を今に伝える「アルハンブラ宮殿」のある「グラナダ」などに足を延ばしてみるのもおすすめです。
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