世界文化遺産の登録基準のすべてを満たす場所
イタリア北東部に位置し、同国を象徴する観光地として知られるヴェネツィア。美しき“水の都”として数々の文学作品や映画の舞台にもなってきたこの街は、「ヴェネツィアとその潟」として1987年に世界文化遺産に登録されています。
ご存じの方も多いかもしれませんが、世界遺産は「自然遺産」と「文化遺産」、そして「複合遺産」に分類されており、合計10項目の登録基準が定められています。そして「ヴェネツィアとその潟」は、文化遺産の基準に定められた6項目すべてを満たす、世界でも数少ない場所なのです。
同様に6項目すべてを満たすのは、中国の「莫高窟」と「泰山」(※複合遺産)だけであり、いかに「ヴェネツィアとその潟」が貴重な文化遺産なのかがわかります。“文化遺産のなかの文化遺産”とも称される「ヴェネツィアとその潟」には、どんな魅力があるのか。次の章からは具体的にご紹介します。
共和国として栄えた時代も。美しき水の都・ヴェネツィアの歴史
アドリア海の最奥部に位置し、118もの島々を無数の橋がつなぐ水の都・ヴェネツィア。この場所に人々が住み始めたのは、5世紀のことと考えられています。その後、7世紀にはヴェネツィア共和国の首都として機能したこの街は、やがて地中海貿易の中継地として発展。14世紀頃には“アドリア海の女王”の異名を持つ都市として、ヨーロッパ中に名を轟かせました。
ヴェネツィア共和国は、歴史上で最も長く続いた共和国としても知られており、7世紀の成立以降、ナポレオン・ボナパルトによって侵略された1797年まで、1000年以上にわたって存続しています。長い歴史のなかで培われてきた建築群や独自の文化が、世界文化遺産に登録された大きな理由。
また、ティツィアーノ・ヴェチェッリオやティントレットなどルネッサンス期のヴェネツィア派を代表する芸術家を数多く輩出し、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』や『オセロ』の舞台となったことも有名。時代ごとに芸術と深い関わりをもってきたこともヴェネツィアの魅力です。
見どころは千年の都を彩る建築たち。壮大な歴史に酔いしれる
長きにわたってヴェネツィア共和国の首都として栄えたヴェネツィアには、数多くの歴史的建造物が点在しています。街全体が美術館のように美しい水の都では、これらの建築をめぐる旅がおすすめです。
ヴェネツィアを代表する名所といえば、まず訪れたいのが「サン・マルコ広場」です。ヴェネツィアの中心的な広場として長い歴史を刻んできたこの場所は、“世界で最も美しい広場”とも称される場所。周辺には8世紀に創建され、総督邸兼政庁として使用されてきた「ドゥカーレ宮殿」や高さ約100mにも達する「鐘楼」、11世紀に完成し、その後幾度となく増改築が重ねられた「サン・マルコ寺院」など、ヴェネツィアを象徴する歴史的建造物がずらりと並んでいます。
また、ヴェネツィアの街を二分するようにS字にカーブする運河「カナル・グランデ」の両岸には、ロマネスク、ゴシック、ルネッサンスなど、さまざまな建築様式の建物が並び、この街が歩んできた長い歴史に思いを馳せることができます。このほか、「リアルト橋」や「ためいき橋」など、運河に架けられた美しい橋も、ヴェネツィアならではの見どころとなっています。
カーニバルやゴンドラ……など、ヴェネツィアならではの観光も
ヴェネツィアの旅の楽しみは、もちろん歴史的建造物めぐりだけではありません。
例年2月頃に開催される「ヴェネツィア・カーニバル」は、ヴェネツィアに息づく歴史と伝統を感じられるビッグイベント。中世の衣装や仮面に身を包んだ人々がパレードする「マリア達の行進」や世界的なデザイナーが審査員を務め“最も美しい仮面”を決める「仮面コンテスト」など、さまざまな催しが行われます。街中がミステリアスな雰囲気に包まれるカーニバルは、この時期にヴェネツィアを訪れた人だけが楽しめる特権です。
このほか、ゴンドラで運河をゆったりと移動したり、イカスミのリゾットやパスタなどの郷土料理を楽しんだり、ヴェネツィアングラスの産地として知られる「ムラーノ島」を訪れたり……。ヴェネツィアの楽しみ方は実に多彩です。ぜひゆっくりとその魅力を堪能してください。
ヴェネツィアとその潟
アクセス | : | ミラノ・マルペンサ国際空港から約310km(鉄道で最短約2時間30分) |
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世界遺産登録年 | : | 1987年 |
世界遺産の種類 | : | 文化遺産 |
登録基準 | : | ・人間の創造的才能を表す傑作である ・建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである ・現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である ・歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である ・あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの) ・顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい) |
ひとことコメント
ヨーロッパ各地で開催されるクリスマス・マーケット。大都市を華やかに彩るイルミネーションから、小さな村で開催されるほのぼのとしたマーケットまで、その魅力は実に多彩!
一般的にクリスマス前の4週間ほどがクリスマス・マーケットの開催時期ですが、街によっては11月半ばから楽しめるものや1月まで開催するものもあるので、現地に足を運ぶ前に要チェックです!
※2022年7月6日に一部内容を更新いたしました
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