「イギリスは食事がまずい」。そんなイメージをお持ちの方は、ロンドンの最新食事情を知ったらおどろいてしまうかもしれません。もともとイギリス料理の魅力は、ロースト料理などに代表される、素材の持ち味を十分に生かすシンプル志向。そのコンセプトはそのままに、食のグローバル化を受け入れ、いまロンドンをはじめとしたイギリスの食事は、かつてなくハイブリッドな進化を遂げています。その美食化の背景と、いまこそ行くべきロンドンの名店を、『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)の著者であり、飲食店レビュー数1,000軒をくだらないロンドン在住ライターがご紹介します。

移民が育てた極上の欧州・豪州ブレンドブリティッシュ

ロンドン市内のレストランの厨房は、伝統的にイタリア人、スペイン人が圧倒的に多いと聞きます。デザート部門には、もちろんフランス人の姿もちらほら。また、新鮮で栄養豊かな食材を使ったみずみずしい料理が得意なオーストラリア人シェフも大活躍。皆、ロンドンという土地の、異質なもの同士が心地よく混ざり合った空気を吸って成長したシェフたちであり、ロンドナーの舌に合わせた料理を提供しようと食のローカライズを行っています。各地からやってきたトップクラスのシェフたちがロンドンに根づかせた極上レストラン2軒がこちら。

10 Greek Street(テン・グリーク・ストリート)

画像: ディナーは予約をとらないのでオープン時間に行くべし

ディナーは予約をとらないのでオープン時間に行くべし

10 Greek Streetは、旬の食材をマーケットから直接テーブルへと運ぶ直球勝負の人気店。エグゼクティブシェフはオーストラリア出身で、食材選びの大切さを熟知しています。その日仕入れた食材で決める日替わりメニューは、毎日でものぞきに来たいクリエイティビティーにあふれ、どれを選んでも納得のクオリティーです。

画像: 左はホタテのソテーにパンチェッタとハーブペーストを合わせた一品。右はスコッチエッグにマッシュルームや黒トリュフなどをあしらったベジタリアン料理

左はホタテのソテーにパンチェッタとハーブペーストを合わせた一品。右はスコッチエッグにマッシュルームや黒トリュフなどをあしらったベジタリアン料理

10 Greek Street
定休日日曜日
営業時間12:00〜14:30 / 17:30〜22:15(月・火)、12:00〜14:30 / 17:30〜22:45(水〜土)
webhttp://www.10greekstreet.com/
住所10 Greek Street, London W1D 4DH

Opera Tavern(オペラ・タヴァーン)

画像: シックな外観

シックな外観

スペインの小皿料理タパスを扱う店の多いロンドンでも、一、二を争う名店がOpera Tavern。伝統スパニッシュとはひと味もふた味も違う現代的な装いにはいつも驚かされます。美味しいものを少しずつ食べたい日本人にもぴったり。劇場街にあるので、観劇前後に立ち寄るのに最適です。

画像: イベリコ豚の肩肉はシェフのおすすめ

イベリコ豚の肩肉はシェフのおすすめ

Opera Tavern
定休日なし
営業時間12:00〜23:30(月〜土)、12:00〜22:30(日・祝)
webhttp://www.saltyardgroup.co.uk/opera-tavern/
住所23 Catherine Street, London WC2B 5JS

いまいちばん熱い! 中東モダン・フュージョン

中東地域からの移民が多いロンドンには、本格派のトルコ、キプロス、レバノン系のレストランや食堂が数多あります。その厚い中東レストラン層から大きく進化し、他のスタイルとの融合を果たした中東モダン・フュージョンが、個人的にはロンドンでいまいちばんホット。中東料理というと、ラム肉、豆、ナスやザクロ、白練りごまのタヒーニやヨーグルト、そして中東スパイスを使った料理が一般的ですが、そこにイギリスやヨーロッパの味を組み合わせ、現代的な調理技法を取り入れると……味の幅が大きく広がり、ますますエキゾチックで刺激的に。そんな食の冒険を味わってみたい方におすすめする2軒がこちらです。

Honey & Co(ハニー・アンド・コー)

画像: 左は夜のベジタリアンメニュー。右はブランチのメインメニューのひとつ、ハーブと卵を使った「グリーン・シャクシュカ」

左は夜のベジタリアンメニュー。右はブランチのメインメニューのひとつ、ハーブと卵を使った「グリーン・シャクシュカ」

Honey & Coはエルサレム出身の夫婦による小さな食堂ですが、料理のクオリティーはロンドンのトップレベル。週末だけの「ビッグ・ブレックファスト」は小皿とメインがセットになった大満足ブランチで超おすすめ。ホテルの朝食に飽きたらぜひ試していただきたい、ロンドンの新しい朝食です。

Honey & Co
定休日日曜日
営業時間8:00〜22:30(月〜金)、9:30〜22:30(土)
webhttp://honeyandco.co.uk
住所25a Warren Street, London W1T 5LZ

Barbary(バーバリー)

画像: カウンター席のみのシンプルな店内

カウンター席のみのシンプルな店内

コの字型のバーカウンターのみの小さな空間、炭火焼きグリル、フレーバーを凝縮した小皿料理。ロンドンの食トレンドのすべてを取り入れたBarbaryは、大成功を収めた姉妹レストランが始めた「中東+北アフリカ料理」のモダン・バーです。味はもちろんすばらしく、料理人の動きを眺めながらいただくスタイルも、ロンドンのレストランシーンで定着してきたトレンド。業界の最先端がここに結集されています。

画像: ナスにラズベリー&アーモンド・スライス。デザートではありません!

ナスにラズベリー&アーモンド・スライス。デザートではありません!

Barbary
定休日なし
営業時間12:00〜15:00 / 17:00〜22:00(月〜金)、12:00〜22:00(土)、12:00〜21:30(日)
webhttps://thebarbary.co.uk
住所16 Neal's Yard, London WC2H 9DP

多様性が育てたハイブリッド料理はロンドンならでは。ぜひ来て、見て、味わって

5つ星ホテルなどに入っている超高級レストランには、値段に応じた感動があります。しかしいま、そういった店の厨房でロンドンの食業界を牽引しているトップシェフたちが、カジュアル路線のセカンドブランドをつくって成功させたいと機会を狙っていることはたしか。ここでは紹介していませんが、そういうコンセプトで生まれたお店はたくさんあります。ロンドンの食マーケットは確実に高級からカジュアルに移行していると感じますが、どの店にも共通しているのは「カジュアルだからといって味に妥協しない」という強い姿勢だと思います。

また、ロンドンが美味しくなった背景には、この街がヨーロッパやイギリス連邦のハブとしての役割を何十年も担い、移民たちのスキルに支えられてきた事実があることは間違いありません。気になるイギリスのEU離脱はすぐそこですが、EUビザで働いているヨーロッパ系シェフたちの労働権利は守られるとの見方が強いのが現状。仮に厳しい政策がとられたとしても、すでに優秀なイギリス人シェフが大勢育っており、永住ビザに切り替えている移民も多いので、食のスタンダードが下がることはまずないと私は見ています。

ロンドンの魅力は、多様性にあります。ロンドンだからこそ育ったハイブリッド料理の数々、ぜひ味わいに来てくださいね。

江國まゆ

ロンドン在住の編集者・ライター。趣味の食べ歩きが高じて書き始めた食ブログが人気となり、『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にロンドンの情報サイト「Absolute London」を創設し、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむ。http://www.absolute-london.co.uk/

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