曲がりくねったヴルタヴァ川に囲まれるようにレンガ色の建物が立ち並ぶ様は、わたしたち日本人からすると異世界そのもの。古くは13世紀に建てられた「クルムロフ城」や、中世の雰囲気が色濃く残る「旧市街」など、世界遺産にも登録された街並みは見応えがあります。
街自体はコンパクトで、他の観光スポットと組み合わせやすいことも人気の理由。そんなチェスキークルムロフの見どころと、街を訪れる前に知っておくべき観光情報をご紹介します。
【チェスキークルムロフとは】川に囲まれた世界遺産の街
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チェスキークルムロフは、チェコ南部にありオーストリアの国境にも近い小さな街。チェコの首都・プラハからはバスで3時間ほどです。
13世紀に建てられた「クルムロフ城」を中心として、街全体が世界遺産に登録されているのが特徴。中世の街並みをそのまま残しており、その景色はまるで小さな頃に憧れたおとぎ話の世界のようです。
その名前の由来をひもといてみると、チェスキーはチェコ語で「ボヘミアの」、クルムロフはドイツ語で「川の湾曲部の湿地帯」という意味だそう。その名の通り、街は曲がりくねったヴルタヴァ川に囲まれています。
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街は非常にコンパクトで、旧市街を中心に歩いて一周しても30分ほど。観光地ゆえ英語もある程度通じるので、落ち着いてゆっくり街を見て回ることができます。
【気候・気温】6月下旬頃からの暖かい時期がおすすめ
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北海道とほぼ同じ緯度に位置するチェコは、日本と同じように四季があり、季節の違いがはっきりしています。11月~3月にかけての冬の寒さは厳しく、チェコの中でも山間部にあるチェスキークルムロフではマイナス5℃を下回ることも。ただ、雪化粧した静かな街並みは一度は見たい幻想的な光景です。
夏の平均気温は18℃ほどで、天気も安定しているので、快適に観光するならば、6月下旬から9月初め頃がベストシーズンといえるでしょう。
【交通手段】プラハからバスで。日帰りでも街の魅力をたっぷり堪能
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チェスキークルムロフへ向かうには、プラハからの路線バスがおすすめです。所要時間は3時間ほどで、早朝の便に乗れば朝から夜までたっぷりと観光して、日帰りでプラハに戻ることも可能です。
また、チェスキークルムロフはお隣オーストリアの首都ウィーンとも国を跨いだ直通バスでつながっています。ヨーロッパ周遊をするなら、プラハからウィーンへの移動の途中でチェスキークルムロフに寄るのも良いでしょう。
路線バス以外には、近隣の都市から出発するツアーを利用するという方法もあります。例えば、ドイツのミュンヘンからチェスキークルムロフを経由してウィーンへ抜けるバスツアーなど、片道プランを上手く活用すれば旅の効率もアップしそうです。
【クルムロフ城】庭には熊、壁はだまし絵…見どころ満載の城
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チェスキークルムロフの見どころと言えば、旧市街を見下ろす街のシンボル「クルムロフ城」です。13世紀に、この地を治めていたヴィートコヴィッツ家によって建てられました。
その後の歩みは実に複雑で、時代とともにロジェンベルク家、エベンベルク家、シュワルツェンベルク家…と城主が目まぐるしく変わっていくことになるのですが、ここが注目すべきポイントのひとつ。増改築が繰り返し行われたことで、建築当初のゴシック様式のほか、ルネサンス様式やバロック様式といった、さまざまな建築様式を見ることができるのです。
一時は街が荒廃状態となるなど悲しい歴史を持つチェスキークルムロフですが、そんな状況下でも「クルムロフ城」は街のシンボルとして人々の心を支えていました。チェスキークルムロフを訪れたらまずはこのお城を見学し、その深い歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
旧市街を見下ろすビュースポット
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13世紀からの長い歴史の中で増改築を繰り返してきたクルムロフ城。キャッスルタワーと呼ばれる円柱形の塔は13世紀に建てられたゴシック様式ですが、全体は16世紀にルネサンス様式で再建されました。
この塔から見下ろす旧市街の街並みが素晴らしいと、観光客の間で評判。11月~3月の冬の時期は休館となり、見学はできないので気をつけましょう。なお、城や塔の内部見学は別料金のツアーとなります。
広い庭園を散策 お堀で飼われているのは、なんと熊!?
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お城といえば広い庭園も見どころのひとつ。敷地内には5つの中庭や庭園があります。
シュワルツェンベルク家の紋章がついた門や優雅な噴水など、庭にはそれぞれ特徴がありますが、それらを差し置いて有名なのが、第2の中庭へと続く石橋の下のお堀で飼われている熊。17世紀頃から飼育が始まったといわれており、お城の名物的な存在となっています。
ただし、必ず見られるわけではなく、会うことができたらラッキーなんだそうです。
豪華な装飾は実はだまし絵
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遠くから眺めている分には立派なクルムロフ城ですが、間近で見ると豪華な建築装飾のほとんどが描かれているものだということに驚かされます。
石積みの壁は平面に描かれた模様であり、立体的な彫刻もそのほとんどが絵によるもの。そんな不思議な世界は城の中だけでなく、街の至るところで見ることができます。
チェスキークルムロフはもともと手工業が基盤産業で、決して豊かな街とは言えませんでした。そのため、城主であっても豪華な装飾を施す余裕はなく、街中にだまし絵を描かせたのだといわれています。
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photo by Labor Svacek
【旧市街】ビールもお土産もここで。クリスマスマーケットも必見
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photo by Libor Svacek
チェスキークルムロフの面積は、東京都調布市とほぼ同じ約22平方キロメートル。旧市街に至っては、歩いて一周しても30分ほどなので、せかせかとした観光というよりも、ゆったりとした旅を楽しみたい人にとっておすすめの場所です。街の中は石畳で坂道も多いので、スニーカーなどの歩きやすい靴でめぐるのが良いでしょう。
美しい街並みは、どこを歩いてもフォトジェニック
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photo by Ales Motejl
ヨーロッパらしい統一感のある建物とヴルタヴァ川、その周辺には緑豊かな木々や色とりどりの花も咲き、どこを撮っても絵になります。
特に、キャッスルガーデン付近の建物から撮影すると街全体を撮影できるので、この場所は観光客にも人気のスポット。ヴルタヴァ川に囲まれた旧市街を1枚に収めることができます。
レストレランではビールを飲んでのんびり
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チェコはビール大国。国民1人あたりのビール消費量が世界で一番多いのは、実はドイツでもアメリカでもなく、チェコなんです。
そんなチェコで一番人気のビールと言えば黄金色の「ピルスナーウルケル」。実は日本で飲まれているビールの9割以上が、このビールが元祖といわれているのです。街の広場にはレストランやカフェがあり、お酒が好きな方は気軽に楽しむことができます。
おすすめのお土産は木の人形
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photo by PIXTA
チェスキークルムロフのお土産と言えば、木で作られた人形や雑貨がメインです。街を歩けば、カラフルなお土産物をショーウィンドウに並べているお店がたくさんあることに気付くでしょう。おとぎの国のような街の雰囲気にぴったりな可愛らしいものばかりで、女性や子どもに喜ばれること間違いなしです。
また、大人向けのお土産ならプラハに本店があるオーガニックスキンケアブランド「ボタニクス」のコフレもおすすめです。
世界一美しい街のクリスマスマーケットは必見
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クリスマスシーズンにヨーロッパを旅行すると、各地でクリスマスマーケットが開かれており、普段と違った空気を味わえます。
チェスキークルムロフでは、市庁舎前にあるスヴォルノスティ広場でクリスマスマーケットが開かれます。ローカル感のある小さなマーケットですが、ツリーのライトアップやクリスマスキャロルの合唱があり、伝統的な雰囲気を満喫できます。
【宿泊】夜景を堪能するなら眺めの良いホテルで
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photo by Ladislav Renner
チェスキークルムロフの魅力をたっぷり堪能したいなら、ホテルを予約して宿泊するのがおすすめです。
数時間で観光できる小さな街ゆえ、多くの人が日帰りで訪れることは先にお伝えした通りですが、だからこそ、人がまばらな夜は街の雰囲気もガラリと変わります。
観光客がいない街並みを歩くと、まるでその土地の住人になったかのよう。美しくライトアップされたクルムロフ城や街並みは一見の価値ありです。「ベルビュー」や「ルージュ」といった眺めの良いホテルの窓から見る夜景も格別です。
日帰り観光でも宿泊でも楽しめる美しい街
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世界遺産になるほどの貴重な街並みを体験できるチェスキークルムロフ。近隣の都市から日帰りできるアクセスの良さも魅力なので、ヨーロッパ旅行の際には旅程に組み込んで、美しい街並みを堪能してみてはいかがでしょうか。
初回投稿日:2016年1月19日
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。