「旅するメーカーズディナー」と銘打たれた同ディナー。作り手の話を聞いて、ふるまわれた料理を味わうことで、その土地の食をはじめとした魅力に気づき、現地を訪れたい気持ちになることでしょう。本稿ではイベントレポートとともに、徳島のおすすめ観光スポットも紹介します。
※価格は税込み表記です。
徳島食材のご馳走を6皿のペアリングで
「旅するメーカーズディナー」で提供された料理は、フレンチ仕立ての全6品。各皿に合わせてお酒が提供されるフードペアリングのコースとなっており、特に料理には徳島の恵みがふんだんに盛り込まれていました。
1皿目は「“酒粕”のフィナンシェと“さくらももいちご”」。コースのスタートに出される軽いおつまみ(アミューズブーシュ)として、通常はコースの最後に登場するデザート(デセール)を提供するという、サプライズ感のある演出が素敵です。こちらに、JAL国際線のビジネスクラスで採用されているシャンパーニュ「DELAMOTTE(ドゥラモット)」がペアリングとして提供されました。
フィナンシェといえば焦がしバターとアーモンドが決め手ですが、酒粕が加わることでまろやかかつ奥深い味わいに。また、徳島県佐那河内村のわずか数軒の農家のみで生産される希少な「さくらももいちご」はきわめて糖度が高く、甘さのはっきりとしたアミューズに、泡も味もキリッとクリアな辛口のシャンパーニュが心地よくマッチしていました。
また、使われていたお皿は徳島が誇る陶器「大谷焼」であり、こちらは持ち帰れるという嬉しいサプライズプレゼントも。
2皿目は冷前菜で、「サーモンと黄金の村“キャビアライム”」と、ドイツ産のリースリング種を使った白ワインのマリアージュ。脂がのったサーモンはほんのり温かく、徳島名産のすだちを使った冷たく爽やかなサワークリームソースとのメリハリが絶品です。
こちらに花を添えるのが、徳島県那賀町産のキャビアライム。日本では珍しい高級柑橘で、軽く搾ると果肉が押し出され、プチプチシャキシャキした食感と、新緑のような清涼感を演出してくれます。ドライなリースリングも春を思わせるようなフレッシュ感で、清々しい気持ちになりました。
3皿目は温前菜で、「猪と“コウノトリ蓮根”のファルシ」が登場。猪は「阿波地美栄(ジビエ)」と呼ばれる徳島ブランドで、こちらをパテのように仕上げて蓮根にはさみ、フレンチのファルシ(肉や魚、野菜など食材を詰めた料理)が表現されていました。
蓮根は、コウノトリが巣を作るほどの豊かな圃場(ほじょう)で採れた、徳島県鳴門市のコウノトリ蓮根を使用。シャキッとして甘く、ジューシーな猪のパテと好相性です。また、トップにはフキノトウの天ぷらがあしらわれ、グラッシーな苦みがおいしいコントラストを生み出していました。
ペアリングのブルガリア産オレンジワインも、フローラルな果実味と野生酵母によるアーシーな香りが料理にマッチ。コウノトリ蓮根にあわせて、鳥を描いたようなエチケットの銘柄を選んだという心遣いも、技ありだと感じさせます。
生産者のストーリーを中継で聞きながらの晩餐会
4皿目は魚料理で、「“鳴門鯛”のアンクルート“鳴門ワカメ”のヴァンブランソース」。鳴門で獲れた海の恵みをパイ包みとソースで表現したポワソンとなっており、ワカメは生産者「うずしお食品」の代表取締役・後藤弘樹さんが中継で紹介してくれました。
サクッとしたパイと、ふんわりやわらかい鳴門鯛のメリハリが絶妙な食感。随所に使われたワカメは潮の香りと塩味を演出し、個性豊かなおいしさに。また、白ワインを使ったソースながら、あえて合わせたのは日本酒。「鳴門鯛」という銘柄を醸す鳴門市の蔵元「本家松浦酒造」の純米吟醸酒「鳴門鯛 LED(レッド)」のペアリングです。
こちらも現地から、十代目当主の松浦素子さんが紹介してくれました。LEDの多様な光を既存の酵母に照射し続け、突然変異によって生まれた徳島県の新酵母「LED夢酵母」を使っているのが「鳴門鯛 LED(レッド)」とのこと。味わいは実にフルーティーで、酸も心地よい濃醇旨口。「これなら白ワインよりこの日本酒!」と思えるほど、鯛とワカメの濃厚なポワソンとも至福のマリアージュでした。
ステージ状の空間で魅せる音楽と美食の饗宴が斬新
お次は肉料理ですが、その間に「俺のフレンチ グランメゾン 大手町」の醍醐味でもある、コンサート会場のような空間を活用したライブ「イーターテイメント」ショーに。楽曲の演者は、国内外で活躍するピアニストの金山千春さん。徳島県出身のミュージシャン・米津玄師さんのヒット曲「Lemon」にはじまり、ジャズのスタンダードナンバー「Fly Me to the Moon」で締めくくる、贅沢な時間を過ごしました。
そしてこのライブと同時に繰り広げられたのが、同店シェフソムリエでもある長谷川純一支配人による、肉料理「“阿波尾鶏”と“天恵茹(てんけいこ)”のシャスール風」のデクパージュ。金山さんの隣で長谷川支配人が阿波尾鶏の丸焼きをフランベ後に切り分けし、食材などの解説をしながら盛り付けまでを魅せてくれました。
シャスールとは猟師や狩人の意味で、ソースなどにキノコを使う料理ですが、このヴィアンドでは高級な大型シイタケ「天恵茹」と淡路名産の玉ネギでシャスール風に。徳島ブランドの阿波尾鶏は、しっとりしてハリのある弾力と濃厚なうまみが絶品。
お酒はJAL国際線ビジネスクラス採用のドイツ産ピノ・ノワール種の赤ワインで、ふくよかな果実味と上品な樽香が心地よくマッチしていました。
そして再びここで映像が。スクリーンに映し出されたのは、ゴッホの「ヒマワリ」、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」と「最後の晩餐」、ミケランジェロの「システィーナ礼拝堂天井画および壁画」といった世界的名画の数々。こちらは徳島県「大塚国際美術館」からの中継で、閉館後に同館の藤田さんが代表的な作品を解説してくれました。
ゴッホが描いた花瓶の「ヒマワリ」全7点をそれぞれ鑑賞できたり、修復前と後の「最後の晩餐」を同時に楽しめたりできるのは、西洋名画を陶板で原寸大に再現する「大塚国際美術館」ならでは。同館までは徳島阿波おどり空港から車で約30分で行けるそうで、その展示を実際に観たくなりました。
そしてラストの6皿目はグランデセール。「“なると金時”のクレーム・ブリュレ“柚香”のソース」がサーブされました。こちらは前述「ひまわり」をイメージした、華やかな盛り付けもお見事。
徳島名産のなると金時の、ほっこりとした甘さをミルキーに仕上げつつ、表面をキャラメリゼして香ばしいクレーム・ブリュレに仕上げた味わいにも驚かされました。徳島企業「日新酒類」のシャインマスカットワインが放つ、初々しい甘酸っぱさもマッチ。
「旅するメーカーズディナー」の締めくくりのあいさつでは、同店の神木亮料理長も登壇。徳島の素材がもつ魅力を伺うと、ストーリー性のあるおいしい食材が豊富なことが第一に挙げられるといいます。日本一のすだち、千年以上の歴史をもつ鳴門ワカメなど、クオリティの高さとキャラクターがしっかり立っているため、フランス料理としても組み立てやすいと教えてくれました。
お店を出ると、徳島県のマスコットキャラクター・すだちくんがお見送り。同時に、味覚にはクレーム・ブリュレの余韻がリフレイン。ひまわりのようなルックスと躍動感あふれるマリアージュは、徳島にふりそそぐ太陽を思わせる輝きがありました。
俺のフレンチ グランメゾン 大手町
住所 | : | 東京都千代田区大手町1-7-2 東京サンケイビルB2 |
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電話 | : | 088-687-3737 |
営業時間 | : | 11:30~15:00(L.O.14:00)、17:30〜23:00(L.O.21:30) |
定休日 | : | 不定休 |
web | : | https://www.oreno.co.jp/restaurant/grandmaison_oreno_otemachi |
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※2023年3月10日に一部内容を更新いたしました
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