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西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
市内を走る路面電車に乗って道後温泉駅まで。松山市駅から市内をのんびり20分ほどのところに西日本でも随一の温泉地道後温泉があるとは、幸せな街ですね。宿泊しなくても日帰りで楽しむことができる温泉街。神社巡りや商店街でのお買い物など、のんびりと散策できますよ。柑橘専門店に一六タルトや坊っちゃん団子と、グルメも充実です。
街のシンボル、明治時代に建てられた道後温泉本館。
道後温泉は「日本書紀」にも記載があり、また聖徳太子も訪れ、かの夏目漱石にも愛されたという歴史ある温泉街。
その中心地にある「道後温泉本館」は、重厚な木造建築三層に塔屋を載せた独特の姿で温泉街の中でもその存在を大きく知らしめています。2009年、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星を獲得し、国内はもとより海外からの旅行者をも惹きつける魅力的なスポットとして多くの人々が訪れます。
現在は保全修理中ですが、修理を行う間も可能な限り利用できるようにと配慮ある工程が組まれています。そのため約7年という長い時間をかけながら修理を行い、工事と並行して営業が行われています。公式サイトでは本館の営業状況が更新される他、周辺外湯も紹介されているので、訪れる前に確認してみてください。
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路面電車に乗って道後温泉へ。
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道後温泉駅は1911年に建てられた旧駅舎が復元されています。その横には伊予鉄市電の「坊っちゃん列車」が停車しています。
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駅前にあるからくり時計。1時間ごと(特別期間は30分ごと)に賑やかな音楽と共に夏目漱石「坊つちやん(坊っちゃん)」の主人公たちが登場します。時間になると多くの人たちが時計の前に集まります。すぐお隣には足湯もありますよ!
道後温泉本館。共同温泉浴場で、明治時代から時間と資金を投じて改築されました。道後温泉の名前を有名にしたのはお湯の良さはもちろんのことこの本館があってこそ、と言っても過言ではありません。
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渋い銀色の瓦には「宝珠」のマーク。寺などで見かけることが多いこのマークは温泉街あちこちで見られます。これは道後の象徴的な印ともなっていて、お湯の湧き出る様子であるなど様々な意味を持ちます。
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もうひとつ、よく見かけるのが「白鷺」。道後温泉を見つけた白鷺伝説にちなみ、白鷺のモチーフが使われています。
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屋根の下につけられた「懸魚」。温泉が湧きだす様が躍動感溢れる彫刻で表現されています。道後温泉の改築は松山城の城大工であった坂本棟梁により設計されています。
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工事中の道後温泉でしか見られないという「火の鳥」。道後REBORNプロジェクトの一環として、火の鳥オブジェの展示や夜間のプロジェクションマッピングなどが行われています。
重要文化財、近代化産業遺産、塔屋から打たれる太鼓の音は残したい日本の音100選など、様々な指定を受けている道後温泉本館。これからも愛される場所になるように日々進化中です。
神社仏閣巡りを楽しもう!温泉浴衣のままでのんびりまわれる街ブラ体験。
道後温泉にある神社やお寺もその歴史は相当なもの。数ある中でも「伊佐爾波神社」は平安時代の書物にすでに書かれていた格式ある神社。本殿は横から見ると「M」の文字に見える、2棟がつながった全国的にも珍しい形。朱塗り社殿は、安土桃山時代の特徴を感じさせる風格ある雰囲気を漂わせていて一見の価値ありです。
また温泉地にはなくてはならない「湯神社」は道後温泉街の中心にあり、社殿の立派さが歴史を感じさせます。温泉の神様である少彦名命が祀られており、道後温泉を先々まで見守ってくれることでしょう。
少し奥に行ったところにある「円満寺」は若い女性に大人気。お手玉のようなお守り「お結び玉」に願いをかけることで良縁祈願、恋愛成就、夫婦円満などの御利益があると言われています。
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温泉街にある神社仏閣巡りに出発します。まずはハードな階段から!
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長い階段、最後は息が切れます…。階段の中腹、狛犬が緑に隠れてひっそりと鎮座していました。

「伊佐爾波神社」、階段の正面に朱塗りの楼門が見えてきました。額には八幡宮とあります。
伊佐爾波神社は過去には「湯月八幡」と呼ばれていました。楼門からは左右に回廊へと続きます。

朱塗りに極彩色の細工をあしらった楼門。1667年に造営された貴重な文化財です。
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こちらが回廊。奥まで続き、ロの字にぐるりと本殿を囲んでいます。
楼門をくぐり奥へと進むと、ここで「湯月八幡宮」の扁額を見ることができました。「蟇股」にも色彩豊かな装飾が施されていました。

国指定重要文化財の本殿。2棟の社殿がくっついて並ぶ「八幡造」という国内でも珍しい形。大屋根は檜皮葺きで格調高い。

神社を後にし、階段を下りるところで遠くに松山城が見えました。

湯神社へも階段で。これは道後温泉本館側とは逆方向から向かう際に使う階段で、どちらからも行くことができます。

湯神社へ行く前に中嶋神社へお参り。なんとここの神様は、“お菓子の神様”。兵庫県から分祀された田道間守神をお祀りする神社。神様は八百万、お菓子の神様もいるんですね。

額は、愛知県知事などを務めた松山市名誉市民・久松家の定武氏によるもの。

大きな屋根の湯神社。温泉地へ行ったならばぜひ足を運びたい神社です。

いぶし銀の瓦は、この地方でよく見かける「菊間瓦」。日の光で明るいシルバーに光輝くような瓦です。
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横にまわり込み本殿を拝観。銅葺き屋根の緑青色への変化が、この社の歴史を感じさせます。
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神社仏閣のご紹介の最後は、可愛い「お結び玉」に願いを込めて。円満寺です。
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良縁祈願や縁結び祈願、夫婦円満などにご利益があるとされるお寺です。
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仏堂には鮮やかな地蔵尊が置かれています。木造で、大木から掘り出されたと言われています。本堂とともにこちらでもお祈りをします。
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お手玉のような可愛らしさ。お結び玉に願い事を書きます。色んな色、柄のちりめんでコロンとしたフォルム。たくさん結び付けられているところに私もひとつ、納めてきました!

道後温泉の湧湯が止まってしまった時、円満寺の地蔵に祈願したところ再びお湯が沸き出たことから、別名「湯の大地蔵尊」とも呼ばれています。
みかんジュース専門店やおしゃれなカフェ!温泉街は見どころがいっぱい。
道後温泉駅近くの「10FACTORY」でみかんジュース飲み比べ!
柑橘類の出荷量、種類(品目)ともに全国1位を誇る愛媛県。こちらのお店では、ジュース、アイス、ドライフルーツなど、様々な商品を扱っているのでお土産選びにも最適です。3種類のジュースが飲み比べできるメニューはワンコイン。柑橘への見識を深めるならばぜひ愛媛のこのお店で。日々改良され新しい品種が生まれる柑橘の新たな魅力に気づけるかもしれません。
道後温泉本館目の前の「一六本舗」は、店内からパノラマで本館を見ることができるカフェ。重なり合う重厚な屋根と目線は一緒です。愛媛の名物、一六タルトと坊っちゃん団子のセットで道後温泉を満喫しました。

温泉街は駅から続く商店街や外湯、足湯など、見どころがたくさんあります。
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商店街の中「道後のたま屋」では“みかんおにぎり”を。こちら、なんとみかんジュースで炊き込まれたおにぎり。甘さと酸味と柑橘で、酢飯のような味わい。デザインもとても可愛く、小腹を満たすのに十分です。
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みかんと言えばもうひとつ。「10FACTORY」は旬のうちに絞ったストレート果汁ジュースを数多くそろえている専門店。

ワンコインで飲める3種類飲み比べ。柑橘の種類豊富な愛媛県ならではのメニューです。

この日の内容は「伊予柑、温州、清見」。すべて愛媛県内で作られた柑橘で、外皮が入らないように丁寧に絞られています。
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売り場にはそれぞれの柑橘の風味を5段階で示してあるので、今まで知らなかった自分好みの柑橘を見つけられるかもしれません。

ところで、道後と言えば夏目漱石の小説「坊つちやん」。この中に登場する道後温泉で食べられる団子にヒントを得て、「坊っちゃん団子」は生まれました。

道後温泉本館前にある「一六本舗」は2階から本館の重なり合う屋根を眺めながらお茶できるカフェです。
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ゆず風味の餡がのの字を描く「一六タルト」。カステラ生地にあんこを巻き込むというのは、当時では画期的だったことでしょう。坊っちゃん団子は抹茶、卵、小豆の餡の小ぶりな団子が3つ、串に刺さっています。
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たくさんの観光客で賑わう街を眼下に見ながらお抹茶と共に。
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パノラマのガラス越しの席が特等席です。
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2017年にオープンした「飛鳥乃湯泉」。温泉はもとより休憩所として立ち寄るのにも便利な場所。道後温泉は湯めぐりや街めぐり、食べ歩きまで、様々な楽しみ方ができる観光地でした。
後編はこちら
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