岡山の観光地といえば倉敷を思い浮かべる方も多いですが、近年では瀬戸内海の島々に芸術、文化に関心を寄せる来訪者が増え、旅のルートも多様化しています。今回はそんな岡山のなかでも若者に人気を集める注目のエリアをご紹介。案内してくださるのは岡山駅西口で人気ゲストハウス「Guesthouse & loungeとりいくぐる」を運営する「合同会社さんさんごご」の成田海波さんです。

生まれ変わる岡山観光。ゲストハウススタッフが案内する最新注目スポット

近年、観光客からの人気を集めているのが『瀬戸内国際芸術祭』。会場となる瀬戸内海の島々を目指して国内外から岡山を訪れる旅行者の姿を、岡山市内でもよく見かけます。

しかし、瀬戸内の魅力は島だけではありません。岡山に移住してきた若者が新たにお店をオープンさせたり、古くから残る観光資源を活用して新しいプロジェクトを始めたりと、いま、岡山には新しい風が吹いています。今回は、私が普段宿泊のお客さまにすすめている、岡山駅近辺の旬なエリアを紹介します。

歴史ある商店街が魅力。若者たちに人気の奉還町エリア

Guesthouse & loungeとりいくぐる

画像: 奉還町商店街

奉還町商店街

奉還町は岡山駅の西口から西にまっすぐ伸びる1㎞余りの商店街を有する町。「奉還」の名は、大政奉還のときに失職した武士たちが退職金(奉還金)をもとにその地で商売をはじめたことに由来します。しかし、武士が興したお店は商売がうまくいかず、いまでは1店舗残るのみ。その後、商人たちを中心として町がつくられてきたというオチがあります。そんな歴史を持つ奉還町の目玉スポットは何といっても「奉還町商店街」です。駅近ながら家賃の安いこのエリアには、近年若い人々が新しくお店を開くなど、さらなる賑わいを見せています。

画像: Guesthouse&loungeとりいくぐる

Guesthouse&loungeとりいくぐる

そんな風情が残る町並みのなかに「Guesthouse & loungeとりいくぐる」はあります。この場所では、かつて肉屋が営まれており、狐による肉荒しを防ぐべく稲荷神社がつくられました。その鳥居をシンボルとして残し、築60年以上の空き家をリノベーションして生まれたのが「とりいくぐる」です。「旅人と若者、商店街をつなぐ」をコンセプトにしたこの空間には、国内外問わず日々旅行客が訪れてきます。お客さまにおすすめしているのは、ゲストハウス周辺の町歩き。

画像: シンボルの鳥居の先には中庭が広がる

シンボルの鳥居の先には中庭が広がる

徒歩1分圏内には昔ながらの銭湯「鶴湯」やレストラン兼イベントスペース「ラウンジ kado」があり、食事や音楽を楽しむことができます。そのほか、カフェ「grico appart」やアンティーク雑貨「akizu」といった若者に人気のお店や、歴史ある刃物屋さんや和菓子屋さんもあるのでお土産探しにもおすすめです。のんびり商店街を歩きながらこの町に流れる時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

とりいくぐる
定休日なし
営業時間チェックイン 16:00〜22:00、チェックアウト 〜11:00
webhttp://toriikuguru.com/
住所岡山県岡山市北区奉還町4-7-15

『瀬戸内国際芸術祭』の玄関口。世界中から旅行者が訪れる港町 宇野エリア

BOLLARD COFFEE

画像: 年に4回ほど宇野港で行われるマルシェ「UNOICHI」の風景

年に4回ほど宇野港で行われるマルシェ「UNOICHI」の風景

岡山駅から電車で1時間ほどの位置にある宇野は、本州と四国を結ぶ旅客港として栄えた港町。宇野駅に降り立つと瀬戸内海が眼前に広がります。香川県高松市や、『瀬戸内国際芸術祭』が開催される直島、豊島へ渡るフェリーの発着地でもあり、芸術祭期間中や休日には、島を訪れる観光客で賑わいます。

近年は若い世代が移り住み、セレクトショップやカフェ、八百屋さん、パン屋さんなど日常を素敵にしてくれるお店が増えています。なかでもおすすめは2017年6月にオープンしたコーヒースタンド「BOLLARD COFFEE」。海を行き来する船を見ながら1杯ずつハンドドリップで丁寧に入れたおいしいコーヒーが楽しめます。また、焼きたてのカンパーニュに瀬戸内で採れたハチミツ、塩をディップしたモーニングブランチセットは人気のメニュー。これを食べれば充実した1日を過ごせるでしょう。

画像: モーニングブランチセット

モーニングブランチセット

画像: 店舗の二階ラウンジからの眺め。瀬戸内海が広がる

店舗の二階ラウンジからの眺め。瀬戸内海が広がる

美しい瀬戸内海に面する海辺の町の進化はまだまだ続きそう。朝からカフェや市場を楽しめるので、夕方には岡山を出発したい、といった旅程の最終日にお散歩がてら訪れるのがおすすめです。

BOLLARD COFFEE
休業日水曜日
営業時間8:00〜17:00
webhttp://bollard.jp/
住所岡山県玉野市宇野1-7-3 東山ビル1F

国産ジーンズ発祥の地、児島エリア

KAPITAL 瀬戸内児島赭(SOHO)店

児島は岡山駅から電車で約20分の場所にある海辺の町。島とつくだけあってもともとは瀬戸内海に浮かぶ離島の1つでしたが、江戸時代に干拓によって本州と陸続きになりました。塩分を含んだ土地が米づくりに向いていないことから綿花栽培に着手し、繊維産業が根づいていきました。そして1965年、国内で初めてジーンズを縫製し、「国産ジーンズ発祥の地」となりました。品質の高いデニムが人気のファッションブランドKAPITALの本店、「KAPITAL 瀬戸内児島赭(SOHO)店」もここ児島にあります。

画像: KAPITAL 瀬戸内児島赭(SOHO)店

KAPITAL 瀬戸内児島赭(SOHO)店

KAPITAL 瀬戸内児島赭(SOHO)店の特徴は、印象的な建物です。「赭(そほ)」とは日本の古語で赤土色のこと。赭色の建物である旧児島図書館を再利用した店舗は児島の地にしっかりと根づきつつも、都会的雰囲気を含み持つ独特な空間となっています。丸太や廃材などで彩られた内装、インテリアはまるでアーティストのアトリエのような空間です。

画像: SOHO BOOKS

SOHO BOOKS

そして、もう一つの魅力が、本屋「SOHO BOOKS」が併設されていることです。プロデュースをしたのは「1冊の本を売る店」というコンセプトで、全国の本好きからも注目を集める「銀座 森岡書店」の森岡督行さん。写真集、アートブック、厳選された古書から文庫まで、目利きもうなる選書が並びます。県内外より絶えずファンが訪れる児島のアートスポットです。

また、児島に訪れた際は児島半島の南端の港町、下津井へ足を運ぶのもおすすめ。下津井は江戸から明治にかけて栄えた港町で、本瓦葺きの屋根や土蔵が残る古い町並みは県指定の保存地区となっています。鷲羽山から見る瀬戸内海は岡山に来たなら一度は見てほしい絶景です。大小1,000あまりに及ぶ島々で形成された多島海の景観は、きっと忘れられない旅の思い出になるでしょう。

画像: 鷲羽山から眺める瀬戸内海の景色

鷲羽山から眺める瀬戸内海の景色

キャピタル瀬戸内児島赭(SOHO)店
定休日なし
営業時間11:00〜20:00
webhttp://kapital.jp/shop/detail/13.html
住所岡山県倉敷市児島小川町5672-10

歴史ある製錬所の跡地をアートで再生した、犬島

犬島精錬所美術館

画像: 犬島精錬所美術館

犬島精錬所美術館

最後に紹介するのは岡山市唯一の有人島、犬島です。岡山駅からのアクセスは、電車、バスを乗り継いで約80分。そこからフェリーに乗って10分ほどで犬島に到着します。犬島は古くから銅の精錬業と採石業で栄えた歴史があり、現在も当時の遺構が数多く残っています。2008年に犬島製錬所美術館が開館し、2010年の『瀬戸内国際芸術祭』以降は直島、豊島と並び現代アートの島としても知られるようになりました。

犬島製錬所美術館は、「在るものを活かし、無いものを創る」というコンセプトのもと、犬島に残る銅製錬所の遺構を保存・再生した美術館です。素材の特性や自然エネルギーを利用し、環境に負荷を与えず最適な気温を保つことのできる三分一博志の建築、三島由紀夫をモチーフに、彼の生前の家の建具を用いた柳幸典のインスタレーション作品、植物を利用した高度な水質浄化システムの3つが融合したアートプロジェクトとして、美術館そのものが作品となっています。

画像: 犬島の夕日

犬島の夕日

画像: 犬島内では、美術館以外にも集落のなかで「家プロジェクト」が行われており、日常風景とアートの調和を楽しむことができる。写真はアーティスティックディレクター長谷川祐子氏と建築家の妹島和世による『S邸』というギャラリー

犬島内では、美術館以外にも集落のなかで「家プロジェクト」が行われており、日常風景とアートの調和を楽しむことができる。写真はアーティスティックディレクター長谷川祐子氏と建築家の妹島和世による『S邸』というギャラリー

また、1時間程度で散歩できる小さな島内では、海水浴やキャンプも楽しめます。2016年からは「犬島 くらしの植物園」というプロジェクトがスタート。約4,500㎡の土地を来島者とともに開墾したり、自給自足の生活を体験できるプロジェクトを行うなど、長く使われていなかった土地を体験型の植物園として再生させました。島の歴史や文化、そして自然に触れて、ゆっくりと過ごしてみてはいかがでしょうか。

犬島精錬所美術館
定休日火曜日(3月1日〜11月30日)、火〜木曜日(12月1日〜2月末日)※ただし月曜日が祝日の場合は、火曜日開館、翌水曜日休館
公式HPhttp://hyakusan.jp
営業時間10:00〜16:30
webhttp://benesse-artsite.jp/art/seirensho.html
住所岡山県岡山市東区犬島327-4

成田海波

1990年生まれ。青森県出身。「Guesthouse&Loungeとりいくぐる」複合施設「NAWATE」、飲食兼イベントスペース「奉還町4丁目ラウンジ・カド」を運営する「合同会社さんさんごご」のメンバー。「奉還町4丁目ラウンジ・カド」店長。2015年、東京の大学院在学中に会社立ち上げに参加。スペースの運営、イベントを通じて他地域とのつながりをつくりだすことに興味がある。

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