自由に台湾に渡航できる日が来たら、食べ歩きや市街地の散策といった定番の過ごし方とは趣向を変えて、心に残る美しい景色を探す旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
花蓮(ホワリエン)エリア
台北から鉄道で約2時間、台北の松山空港から約50分の場所にある花蓮は、台湾人に人気の観光地です。台北からの日帰り旅行もしやすい場所なので、日帰りツアーを利用して訪れるのもおすすめです。
大理石の岸壁は大迫力 太魯閣国家公園 九曲洞
花蓮の見どころとして外せない場所が、「太魯閣国家公園(タイルーガーグオジャーゴンユエン)」。「台湾府志」に記された「台湾八景」のひとつです。大理石の岩盤が立霧渓という川に浸食されて形成された渓谷が公園の中心となっています。迫力ある奇岩と森の緑のコントラストが美しい場所です。
南北に約38km、東西に約41kmに広がっており、総面積は9万2000ヘクタールにも及びます。広大な敷地の中にさまざまな絶景スポットがあるのですが、広大すぎるがゆえにあらかじめどこへ行くか決めておかないと、うまく回ることができません。
そこで、どこを訪れるか迷ってしまう方におすすめしたいスポットが、「九曲洞(ジョーチユドン)」です。元々、車両用のトンネルとして中を通れるように整備された洞窟で、頭上には大理石の岩壁が広がり、遊歩道の下には立霧渓の急流が流れています。どこを向いても絶景を楽しむことができるのです。
九曲洞には、日本統治時代につくられた通路なども残っています。訪れた際はぜひ探してみてください。
日の出の時間帯を狙って訪れたい 七星潭海灘
花蓮で宿泊するなら、「七星潭海灘(チーシンタンハイタン)」で日の出を鑑賞するのがおすすめです。
七星潭海灘は、花蓮空港の東に位置する七星潭風景区にあります。弧を描いた湾からの太平洋の眺めは昼間に見ても美しいのですが、日の出の時間帯の海の景色は、格別です。
台鉄花蓮駅からも遠くないため、近くには民宿がたくさんあり、宿泊する場所には困りません。地元でも朝日を見るために早起きをする人が多いそうで、宿泊すると、必ず翌日の日の出の時間を教えてもらえます。
実は、この場所から日本の最西端、沖縄県の与那国島までは直線距離でわずか約140kmという近さ。そのため、海の景色は沖縄に似ていると感じる人もいるでしょう。沖縄との違いは、海岸沿いに丸みを帯びた砂利が多いこと。波が荒いため、石が長い年月をかけて削られたのだそうです。
晴天の中で見る朝日も美しいのですが、特に美しいのは曇りの日の朝日です。雲から光が零れ落ちて作り出された、幻想的な光のカーテンを見ることができます。
台東(タイトウ)エリア
台東は、花蓮よりさらに東に位置するエリア。台北からは、鉄道で最速でも約3時間30分かかるので、1泊2日は確保して観光することをおすすめします。道中は台湾の田舎の風景を車窓から見ながら駅弁を食べて、のんびりと旅を楽しみましょう。
台湾一景色が美しい駅 多良車站
多良車站(デュォリャンチャーヂャン)は、1992年から2006年まで台湾鉄路の南廻線の駅の一つとして使用されていましたが、現在は廃駅になっている駅舎です。台湾で最も景色が美しい駅といわれています。あまりにも人気があるため、2022年以降に駅として営業再開することが検討されているのだそう。
駅舎は高台にあり、深い青色をたたえた太平洋を見下ろすことができます。台湾鉄路の電車が駅を通り抜ける瞬間は、太平洋と電車を同時にカメラに収めることができるシャッターチャンス。鉄道好きはもちろん、そうでない方も写真を撮りたくなること間違いありません。
原住民族の鮮やかな衣装は圧巻 布農部落林休閒農場
台湾には16もの原住民の部族が残っており、その中でも7部族が台東に居住しています。そんな台東の原住民が住む「布農部落」の文化を知ることができる施設「布農部落林休閒農場(ブーノンブールオリンショーシェンノンチャン)」が台東市内からタクシーで30分程度の場所にあります。
布農部落の人々は主に狩猟と農業で生活していて、中央山脈の麓にある延平郷桃源村が故郷です。特徴的な農民族の文化を一般の観光客にも知ってもらうために、この地に観光センター「布農部落林休閒農場」を設立したそうです。
布農部落の人々は、鮮やかな装飾品や衣類を身にまとっています。ここでは、民族舞踏体験やアクセサリー作りなどが楽しめるだけでなく、豊作を祈る歌とダンスのステージなどを鑑賞することもできます。特産品も販売されているので、ここでしか買えないお土産を手に入れましょう。
台東らしい景色が楽しめる 台湾鉄路の車窓から見える景色(台東駅~金崙駅)
台東の景色の特徴は、海岸線と田園風景が同時に楽しめるところでしょう。そんな台東ならではの景色が最も美しいといわれているのが、台東駅(タイトンヂャン)~金崙駅(ジンルエンヂャン)の路線です。
この景色を楽しむ旅のお供には、「源昌関山弁当」がおすすめです。可愛い木箱につめられたお弁当で、台湾有数の米どころ、関山のご飯の美味しさを楽しめます。
宜蘭(イーラン)エリア
最後にご紹介するのが、宜蘭エリア。台北から鉄道・バスに乗って1時間ほどで行ける台湾有数のリゾート地です。台北在住の人が週末に滞在することも多い場所で、台北から日帰りで行くことも可能です。最近は、台湾でもハイキングやトレッキングがブームになっており、そういった目的で訪れる人も多いようです。
うっそうとした森を探検家気分で歩く 見晴古道
太平山にある見晴古道は、廃線を利用してつくられた遊歩道です。太平山では日本統治時代の1915年に樹木の伐採が始まり、伐採した材木の運搬に「太平山森林鉄道見晴線」が使用されていました。現在は、その一部がこの遊歩道になっています。
うっそうとした森が広がっており、霧や雲海が発生することも多いこの場所。そんな気候や雰囲気から「晴れている空を見たい」という気持ちになるため、「見晴」と名付けられたのだとか。道中は、冒険好きな人にはたまらない雰囲気です。
太平山は避暑地として人気が高い場所です。台湾には明確な四季が無いといわれていますが、太平山は冬には雪が積もることもあります。夏でも天気が変わりやすいので、上着やスニーカーを持参して行くことをおすすめします。
中国式の建築が取り入れられた珍しい教会 聖母升天堂
羅東は夜市で有名な街ですが、羅東を訪れたら聖母升天堂(シェンムーシェンディェンタン)という教会にもぜひ立ち寄ってみてください。
イタリア人神父の構想と設計によって、中国式の建築が取り入れられた教会です。台湾人気ドラマのロケ地としても知られていて、多くのドラマファンが訪れています。
ビビッドな色使いが美しく、なんとも異国情緒を感じさせるデザインになっています。パステルカラーのステンドグラスや花柄の天井など、見どころは多数。
教会近隣は落ち着いた雰囲気の台湾の下町なので、ゆっくりと歩いて散策してみてください。
台湾人が台湾のことを語るとき、「宝の島」という表現を使います。九州ほどの大きさの小さな島の中に、美しい自然や原住民の文化などのさまざまな魅力がつまっているのが、台湾なのです。
日本では空前の台湾ブームが訪れていますが、台湾に興味を持ったならぜひ何度も通ってみてください。何度訪れても、台湾は新しい顔を見せてくれます。
コロナ禍が去って自由に行き来できるようになる日のことを、台湾の人も自然も待ってくれているはずです。
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