東西の文化をつないだ交易路 「シルクロード」に息づく 歴史ロマンを感じる旅へ
中国産の絹(シルク)を運ぶ交易路だったことから、19世紀ドイツの地理学者リヒトホーフェンによって名付けられた「シルクロード」。後に、東洋と西洋を結ぶ歴史的な交易路の総称として用いられるようになったこの交易路網は、古代から東アジアから中央アジア、西アジア、ヨーロッパをつないできた歴史的な場所です。なかでも、中国の長安(現在の西安)や洛陽から甘粛省北西部の都市・敦煌を経て、中央アジアへと至る複数のルートは世界遺産「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」の構成要素でもあり、「西域南道」や「天山南路」など、紀元前から利用されてきた重要な隊商路の記憶を、今も感じることができる場所です。今回の特集では、敦煌やウルムチ、トルファンなど、「シルクロード」と深い関わりを持つ街や見どころをご紹介。悠久の時を経て受け継がれるスケールの大きな風景とエキゾチックな文化を楽しむ旅へ!
シルクロードオアシス都市・敦煌
北京から西へ2,000km以上、甘粛省北西部に位置し、シルクロードの分岐点に位置するオアシス都市として発展してきた敦煌。かつて中国人は、中国の西に位置する国々を「西域」と称しましたが、敦煌はこの「西域」への出入り口としての役割を古くから担ってきた場所です。そして、タリム盆地やゴビ平原、ツァイダム盆地に囲まれたこの街の周辺には、「シルクロード」ゆかりの名所が多く点在しています。
敦煌周辺で「シルクロード」らしさを感じるのなら、まずは「鳴砂山」へ向かうのがおすすめ。敦煌市内から南へ6kmほどに位置するこの場所には、シルクロードを象徴するような美しい砂丘が広がっています。さらに「鳴砂山」の麓には三日月型の泉の横に楼閣が建つ「月牙泉」があります。砂丘とオアシスが描き出す美しい風景は、「これぞシルクロード!」という感動を与えてくれるはず。ラクダで砂丘を観光するキャラバン体験なども楽しめるので、「シルクロード」のパノラマをゆっくりと堪能してください。
さらに、敦煌周辺には世界遺産にも指定される巨大な仏教遺跡「莫高窟」や漢の時代に西域への関所として築かれた「玉門関」や「陽関」などの歴史遺産が点在しています。いずれも「シルクロード」のオアシス都市として栄えた敦煌ならではの見どころなので、ぜひ訪れてみてください。
ウルムチ、トルファン……。エキゾチックな文化と 美しい大地にふれる「シルクロード」の旅
中国の西端に位置する新疆ウイグル自治区は、古くから「シルクロード」と深い関わりを持ってきたエリア。日本の約4.5倍もの面積を誇る広大な大地に、ウイグル族をはじめ、漢族やカザフ族、キルギス族、モンゴル族などの多彩な民族が暮らす新疆ウイグル自治区を訪れれば、広大な荒野と山々が織りなす美しい風景と「ここは本当に中国?」と思うようなエキゾチックな文化に出合うことができます。
新疆ウイグル自治区の旅の拠点となるのが、天山山脈の北麓に位置する中国西部最大の都市・ウルムチです。自治区内の政治、経済、文化の中心地として発展する市内には、自治区の歴史に関する「新疆ウイグル自治区博物館」などの見どころがあります。
さらにウルムチの南東およそ190kmに位置するトルファンは、「シルクロード」のオアシス都市として栄えた場所。イスラム教のモスクやバザールなどがあり、異国情緒満点です。周辺には、漢代からの都市遺跡「交河故城」や、5世紀から7世紀にかけて繁栄した高昌国の王城遺跡「高昌故城」などの遺跡が残されています。また、トルファンのシンボルともいえる「火焔山」は、かの「西遊記」で、孫悟空が牛魔王と戦った場所としても有名。三蔵法師も旅した遙かなる「シルクロード」に思いを馳せるのにぴったりの美しい名所です。
遙か昔から東洋と西洋を結んできた通商路「シルクロード」には、この場所でしか見られない美しい自然や、多彩な文化が今も息づいています。ちょっと長めの休みを取って、ゆっくりと「シルクロード」の魅力を楽しんでください。
ひとことコメント
ウイグル族をはじめ、さまざまな民族が暮らす新疆ウイグル自治区。このエリアならではの文化を手軽に楽しむなら、ウイグル料理に挑戦してみるのがおすすめ! 羊肉の串焼きや手打ちパスタのような麺料理“ラグメン”は、おなじみの中国料理とはひと味違ったスパイシーさが魅力。「シルクロードに来たなぁ」という気分が俄然盛り上がります!
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