バリ島といえば世界的なビーチリゾートですが、この島の魅力はそれだけではありません。中心地から離れ、山間部にある村・ウブドなどの地方へ行くと、地元の人々が日常的に通う「ワルン」と呼ばれる大衆食堂があります。
ここでは、スパイシーなおかずが少しずつ乗った「ナシチャンプル」や、鶏肉や豚肉の串焼きに甘いピーナッツソースをかけた「サテ」など、バリ島ならではのローカルフードを地元っ子に混ざって楽しむことができます。
また、バリ島には、古くから「バリ・ヒンドゥー教」という独自の宗教が根づいています。寺院や、そこで見られるバリ舞踊からは、バリ・ヒンドゥー教の宗教観を知ることができますが、じつは食事からもその文化を垣間見ることができるのです。
今回は、そんな伝統文化を色濃く残し、美しいライステラス(棚田)でも知られるウブドのローカルグルメスポットを紹介します。
文・写真:小杉和生

神に捧げる豚の丸焼きを、地元っ子とともに堪能

IBU OKA(イブ オカ)

バリ料理の代名詞ともいえるのが、「バビグリン」。豚のお腹にスパイスを詰めてじっくり丸焼きにしたもので、バリ・ヒンドゥー教のお祭りやお祝いに欠かせない伝統料理です。神様にお供えしたあとは、皆で分け合って食べるのが古くからの習わしです。
そんな特別な料理をいつでも気軽に食べられるのが、ウブドに3店舗あるワルン「イブ オカ」。今回紹介する1号店は、オープンエアで開放的な空間で、道ゆく人々の表情を眺めながら食事を楽しむことができます。ウブド王宮のすぐ目の前という、街歩きのついでに立ち寄れるアクセスの良さも魅力的です。

画像: ローカルな雰囲気の外観。店内は清潔で、安心して食事ができる

ローカルな雰囲気の外観。店内は清潔で、安心して食事ができる

イブオカのバビグリンは、ご飯の上にパリパリの豚皮、柔らかくてジューシーな豚肉、豚のソーセージが載せられて提供されます。豚肉は、ニンニクや唐辛子など、さまざまな香辛料で味つけされており、カレーに似た食欲をそそる香りが漂います。インパクト大の見た目ですが、一度食べるとクセになる美味しさ!

画像: 豚のさまざまな部位がのった、スパイシーなバビグリン

豚のさまざまな部位がのった、スパイシーなバビグリン

観光客向けのレストランではなかなかお目にかかれないバビグリンを、地元っ子に混ざって体験してみてはいかがでしょうか。

IBU OKA(イブ オカ)
営業時間11:00~19:00(売切次第閉店する場合あり)
住所Jl. Suweta, Tegal Sari No.2, Ubud

おしゃれなカフェ風ワルンで楽しむ、バリの伝統的な家庭料理

biah biah+(ビア ビア プラス)※閉業

地元っ子が通うワルンは、セルフサービスが主流で、一見すると入りづらい雰囲気漂うお店も多くあります。そんななか、女性一人でも気軽に入れるのが、ウブド中心部から少し離れた、ラヤプンゴセカン通り沿いの「ビア ビア プラス」。
おしゃれなカフェ風の店内には、テーブル席以外にソファ席もあり、ゆったりとくつろいで食事を楽しむことができます。日本語メニューも用意されているので、言葉の心配もありません。

画像: カラフルな内装と大きなシンボルツリーが目印

カラフルな内装と大きなシンボルツリーが目印

ここのメニューは、旅行者向けのマイルドで食べやすい味つけになっていて、豚肉のソーセージ「ウルタン ゴレン」やコロッケのような「ブルグデル クンタン」といった、日本人が身近に感じる伝統料理もいくつかあります。
小皿料理が充実しているので、いろんなものを少しずつ食べられるのも魅力。盛りつけにはバナナの葉が敷かれていて、ローカルな雰囲気を楽しめます。

画像: インドネシア風コロッケの「ブルグデル クンタン」

インドネシア風コロッケの「ブルグデル クンタン」

一風変わったドリンクにも注目。バリ島に古くから伝わる漢方ドリンク「ジャムウ」や、お米から作られた「ライスワイン」などのメニューが並んでいます。漢方は苦くて飲みにくいかも……と思いきや、優しい甘さでスッと飲むことができますよ。

画像: ライスワインの「ブレム」、ジャムウの「サリ トゥムラワッ(春ウコン)」

ライスワインの「ブレム」、ジャムウの「サリ トゥムラワッ(春ウコン)」

biah biah+(ビア ビア プラス) ※閉業
営業時間11:00~23:00
定休日なし
住所Jl. Pengosekan, Ubud

木のぬくもりを感じる「カフェ」で味わう、体が喜ぶヘルシーフード

KAFE(カフェ)

ウブドは、伝統舞踊や絵画など、古くから芸術文化が盛んな村。そんなアーティスティックな空気と豊かな自然が混ざり合った独特な雰囲気に魅せられるヨギー(ヨガをする人)も多く、心と体を癒す「ヨガ」の聖地として人気を集めています。
そんなヨガを愛する人々から人気のカフェが、ウブド中心部にある「KAFE(カフェ)」。ここでは、オーガニック食材を使用したヘルシーフードや、野菜や果物のスムージーが味わえます。ナチュラルな雰囲気のカフェなので、リラックスした格好でも気兼ねなく訪れることができます。

画像: 木の温もりを生かした、オープンエアのカフェ

木の温もりを生かした、オープンエアのカフェ

画像: ランチやディナー時はいつも満席状態

ランチやディナー時はいつも満席状態

数あるメニューのなかでも、一番人気なのが「メグズ ビッグ サラダボウル」。地元のオーガニック野菜を使用したサラダは、これだけでお腹いっぱいになってしまうほどのボリュームです。ほかにもグルテンフリーのメニューや、ビーガン向けのメニューも充実しています。
朝一でヨガをしたあとは、ぜひこのお店に立ち寄ってみてください。きっと素敵な1日の始まりとなるはずです。

画像: 彩り豊かな「メグズ ビッグ サラダボウル」

彩り豊かな「メグズ ビッグ サラダボウル」

KAFE(カフェ)
営業時間7:30~23:00
定休日なし
住所Jl. Hanoman No.44B, Padang Tegal, Ubud

美しいライステラスを一望。ウブドの風を感じながら味わうローカルランチ

Alon Alon Terrace Café(アロン アロン テラス カフェ)

ウブド中心部から車で北に20分ほどの場所にあるのが、テガラランという小さな村。ここには、ウブドの人気観光スポット「ライステラス」があります。
ライステラスとは、丘陵地帯につくられた棚田のこと。バリ島にいくつかあるライステラスのなかでも、特にテガラランのライステラスは、バリ島随一の美しさを誇ると言われ、「神の階段」とも呼ばれています。
ライステラスは、「スバック」というバリ島独自の水利システムが用いられています。この水利システムは、バリ・ヒンドゥー教の「神と人、自然の調和が人を幸せにする」という哲学からつくられたもの。これにより、平等に田んぼに水を分配することができ、各農家も公平に稲作をすることができるのです。

画像: バリ島では三毛作が行われるため、訪れる時期により、さまざまなライステラスの景観が楽しめる

バリ島では三毛作が行われるため、訪れる時期により、さまざまなライステラスの景観が楽しめる

そんなテガラランのライステラスには、美しい景色が一望できるカフェがいくつかあります。渓谷にせり出すようにつくられた「アロン アロン テラス カフェ」は、フォトスポットとしても人気のカフェ。おすすめは、棚田が一望できるガゼボ(周りに壁がなく、屋根と柱のみの建築)席。目の前に広がるウブドの大自然に癒されること間違いなしです。

画像: 心地よい風が感じられるガゼボ席

心地よい風が感じられるガゼボ席

ここでのおすすめは、バリ島民が愛してやまないナシチャンプル。ご飯とおかずが一皿に盛りつけられたワンプレートランチです。インドネシア風串焼きの「サテ」やインドネシア風納豆の「テンペ」のフライなど、ユニークなおかずが添えられた、大満足の一皿です。

画像: ナシチャンプル。「ナシ=ご飯、チャンプル=混ぜる」という意味

ナシチャンプル。「ナシ=ご飯、チャンプル=混ぜる」という意味

ちなみに、ここのカフェに行くなら運動靴を履いていくのがおすすめ。ライステラス内には小道がたくさんあるので、トレッキング気分で向かいましょう。美しい植物や動物を眺めながら歩く時間も、また格別です。

Alon Alon Terrace Café(アロン アロン テラス カフェ) ※臨時休業中
営業時間8:00~19:00
定休日なし
住所Desa Cekingan, Tegallalang, Gianyar, Bali

「神々の島」で、バリ・ヒンドゥー教がもたらす神秘的な時間を体験

バリ島の美味しい料理を堪能したあとは、バリ・ヒンドゥー教が形成した独特の風習や文化を体験してみてはいかがでしょう。
バリ・ヒンドゥー教とは、お隣のジャワ島から伝わったヒンドゥー教と仏教が、バリ島にもともとあった土着信仰と融合したもの。バリ島民の9割以上が信仰していて、「神々はあらゆるところに宿る」という教えから、町のいたるところでお供えものをしていたり、ほぼ毎日、どこかの村でお祭りが開かれたりしています。

画像: 町の至るところで置かれている神様へのお供えもの

町の至るところで置かれている神様へのお供えもの

そのお祭りのなかで披露されるのが、「バリ舞踊」。宗教儀式の際に行われた奉納の踊りで、「レゴン」「バロン」「ケチャッ」が三大舞踊と言われています。ウブド王宮では、毎晩7時半からこのバリ舞踊の公演が行われています。

画像: ウブド王宮(サレン・アグン宮殿)

ウブド王宮(サレン・アグン宮殿)

三大舞踊のなかでもっとも美しいとされるのが、「レゴン」ダンス。女性ダンサーが美しいガムランの音色に合わせて、華麗な舞いを披露します。その独特な目と手の動きは、一瞬で惹きつけられる不思議な力を持っています。

画像: ウブド王宮で上演される華麗なレゴンダンス。ダンサーのきらびやかな衣装にも注目

ウブド王宮で上演される華麗なレゴンダンス。ダンサーのきらびやかな衣装にも注目

もうひとつ、ウブドを訪れたら体験したいのが、バリ・ヒンドゥー寺院の参拝。バリ島には、山の斜面や崖の上といった美しいロケーションの寺院が点在します。
おすすめは、ウブドから車で1時間ほどの場所にある、海に浮かぶ「タナロット寺院」。夕日に照らされる寺院を眺めていると、バリ・ヒンドゥー教の神の存在を感じずにはいられません。

画像: 美しい夕日が見られるスポットとしても有名なタナロット寺院

美しい夕日が見られるスポットとしても有名なタナロット寺院

ウブド王宮
営業時間9:00〜18:00
定休日なし
住所Jl. Raya Ubud, Ubud, Bali 80571
タナロット寺院
営業時間7:00〜19:00ごろ
定休日なし
住所Beraban Abian Village Tuwung Kediri Tabanan Bali, Gianyar

バリ島・ウブドの人たちは、困っている人がいたら放っておけない、優しい気質の人ばかり。美味しそうにローカルグルメを食べていると、地元の人が喜んで話しかけてくれることもあるので、ぜひその際はおすすめのワルンを訪ねてみてください。ローカルしか知らない、とっておきを教えてくれるかもしれません。
ちなみに、とても大らかな彼らではありますが、宗教上で不浄とされる左手で握手したり、子どもの頭を撫でたりするのはタブーなので気をつけましょう。何か親切にしてもらったら、「トゥリマカシ=ありがとう」の一言をお忘れなく!
※3月はバリのお正月・ニュピ(サカ暦の新年)があり、この期間は外出や火の使用、労働、殺生などが禁じられ、観光客の外出も禁止されるので、この時期の観光は避けることをおすすめします。

初回投稿日:2018年11月16日
※2024年12月4日に一部内容を更新いたしました

小杉和生

北海道在住の道産子トラベルフォトライター。渡航歴は30か国100都市以上、国家資格の総合旅行業務取扱管理者資格を持つ。自身が取材、撮影、執筆を行う海外旅行情報サイト「TABI JOZU(旅上手)」を運営。安く賢く海外個人旅行を楽しむためのノウハウを日々発信中。
https://tabijozu.com/

JALパックで行く、バリ島

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