中学、高校時代は、吹奏楽部に所属し、トロンボーンを担当。スポーツとはほとんど縁がなかったという岡本唯さんが、走ることと出会ったのは社会人になってから。もともとランニングを趣味にしていた父親のすすめもあり、仕事から帰宅後、その父親と妹の3人で家のまわりをジョギングし始めたのがきっかけです。
画像1: 海辺を走り、世界遺産 天草の教会をめぐる。知らない街を走る”旅ラン”の魅力とは?

最初は、30分も走るのがやっとでしたが、少しずつ時間と距離を伸ばしていくと、「渋谷・表参道 Women’s Run」という10kmを走る大会があることを知り、「渋谷と表参道の道路を走るなんて楽しそう」と、気軽な気持ちでエントリー。目標は1km6分のペースを維持して1時間以内にゴールすること。
結果は57分16秒と、見事に目標をクリアし、それが「うれしくて、うれしくて、もっと走りたい」と思うようになったそう。

以来、岡本さんの”日常”に、走ることは欠かせなくなりました。趣味とトレーニングを兼ねた日々の朝ランや夜ランに加え、週末は少し遠出してのランニング。トレイルランを含め年に10以上の大会に出場し、今では多いときで1ヶ月300km以上走ることもあるそうです。
その中でも、岡本さんが特に楽しみにしているのが、地方のマラソン大会に出場し、その土地の文化と触れ合う、旅行とランニングを掛け合わせた”旅ラン”です。岡本さんにとって旅ランは走り続けるモチベーションのひとつ。
マラソンと、旅ランの魅力をご紹介する【JAL 旅ラン INTERVIEW】。第1回目は、岡本唯さんにお話を伺いしました。

画像2: 海辺を走り、世界遺産 天草の教会をめぐる。知らない街を走る”旅ラン”の魅力とは?

岡本唯さん
2016年4月に長野マラソンにてフルマラソン・デビュー(4時間19分13秒)。以来、フルマラソンからウルトラマラソン、トレイルランニングの大会まで、さまざまな大会に出場。PB(パーソナルベスト)は3時間49分11秒(2017年名古屋ウィメンズマラソン)。PUMAのランニングチームTOKYO IGNITE所属。

マラソンはひとりじゃない。仲間と走っている感覚が楽しい

画像: マラソンはひとりじゃない。仲間と走っている感覚が楽しい

OnTrip JAL編集部(以下、JAL):大会デビューとなった「渋谷・表参道 Women’s Run」のこと、覚えていますか?

岡本唯(以下、岡本):よく覚えていますよ。最初はやっぱり緊張しましたね。大会となると、普段、家のまわりをジョギングするのとは全然、違うし、何より「タイム出るかな?そもそも完走できるかな?」と、不安がいっぱいでした。実際に走り始めても苦しかったのですが、ふとまわりを見回してみたら沿道の人が応援してくれていることに気がついて。それがものすごく、力になったんです。

そうしてまわりからパワーをもらいながら、なんとか完走できて、さらに目標だったタイムも切れたことがうれしくてうれしくて、もっと走りたいと思うようになりました。

JAL:走ることが楽しくなった?

岡本:いえ、正直、今でも走っているときは苦しい気持ちが8割(笑)。でも、普段、スポーツ選手でもないのに、あんなに知らない人から応援されることって、あまりないですよね。それがなんだかうれしいのと、やめられないひとつの喜びにもなっています。

JAL:沿道の応援が、岡本さんにとってマラソンを続けるひとつのモチベーションにもなっていると。

岡本:そうですね。まちがいなく、楽しみのひとつになっています。もちろん、走り始めた頃に比べたら、走ることそのものも楽しくなってきましたよ。最初はひとりで走るのがいやで、グループランに参加して走るようになったら、走ることがどんどん楽しくなっていってきました。

JAL:マラソンって、どうしても孤独なイメージがあるのですが、そうではないんですね。

岡本:もちろんベストタイムや優勝を目指してストイックに取り組む人もたくさんいますが、わたしは、自分が楽しいと思える気持ちを大事にして走っています。大会によってベストタイムを更新するという目標を設定したりしますが、わたしがなにより楽しいと思えるのは、仲間と走ること。仲間がいると不思議と走るのが楽しくなってくる。大会でも、走っているのは自分ひとりじゃない。あのみんなで走っている感覚が私は好きなんです。

ランナーズハイになったフルマラソンデビュー

画像: ランナーズハイになったフルマラソンデビュー

JAL:フルマラソンまでチャレンジしようと思ったきっかけは?

岡本:初めて「渋谷・表参道 Women’s Run」に出場して以来、少しずつ大会に出るようになって、さらにラン友が増えていったそのつながりで、今のプーマのランニングチーム『IGNITE TOKYO』にも入らせていただきました。

そのチームにはフルマラソンやトレイルランに挑戦している人がたくさんいて、話を聞いているうちにわたしも走りたいと思うようになったのがきっかけです。

JAL:走る前は、やはり初めて出場した大会同様、スタート前は不安でしたか?

岡本:はい。一般的な市民マラソンは制限時間が7時間というところが多いのですが、初めてフルマラソンに挑戦した長野マラソンは5時間で、結構、厳しい大会なんですね。わたしにとって42.195kmは未知の距離だったので、制限時間内に走れるか、そもそも完走できるのか不安でした。

JAL:結果は?

岡本:当日、スタート時は風が強いうえに雨も降っていて、コンディションは最悪。でも、すごく楽しめました。この大会でも、雨のなか、沿道には多くの方が応援に来てくれて、声援を送ってくれたからです。なによりうれしかったのは、大会のゲストランナーだった高橋尚子さんが、善光寺のあたりで並走してくれて、「女性ランナー、がんばってください!」と声をかけてくれたこと。後ろから追いつかれて、あっという間に抜かれていったのですが、でもそのひとことにものすごいパワーをもらって、走っているうちにランナーズハイのような状態にもなって走りきることができました。

結果は、4時間19分と、目標としていたサブ4.5(4時間30分)を切ることができました!

方言にほっこり!その土地その土地ならではエイドと声援が力になる

画像: 方言にほっこり!その土地その土地ならではエイドと声援が力になる

JAL:それから岡本さんは、全国各地のマラソン大会に出場するようになったわけですが、地方大会ならではの魅力というものはありますか?

岡本:地方の大会の場合、ちょっと旅行気分で行けるので、日帰りで走る大会とはまた違った楽しみがあります。たとえば、今年出場した函館マラソン。この大会はエイドがおもしろくてマラソン大会なのですが、函館名物のラーメンや海鮮丼、メロンなどがエイドで振る舞われるんです。

JAL:ラーメンに海鮮丼!?すごい大会ですね。

岡本:はい!海鮮丼なんかイクラにウニものっていて、おいしかったー。メロンもテンションが上がりましたね。あと何キロ走ったらメロンが食べられる!そう思って走るとがんばれるし、42.195kmもあっという間でした。

ほかにも金沢でのマラソンでは、名物のカレーが出たり、名古屋のウイメンズマラソンではういろうが出たり。地方大会のエイドには、こうしたその地方の特産物を用意してくれる大会がたくさんあります。その土地その土地の特産物に出会えるのも、地方マラソンならではの楽しみですね。

JAL:普段、よく走るところとは違った場所を走る、というのも楽しそうですね。

岡本:たしかに地方に行くと非日常感を味わえるのが新鮮でいいですね。めくるめく景色はいつもと違うのであきがこないし、気持ちよく走ることができます。それとマラソンでは、ランニングウォッチなどを使ってタイム計測と同時に、スマホとGPSを連動させて地図上で走ったところを記録することができます。そうしたログを全国に増やしていくと走りながら旅をしている気分になれることも楽しみのひとつです。

なによりもわたしにとって元気の源である沿道からの声援が、地方大会のほうがあたたかく感じられます。分け隔てなく、走っている人全員に声援を送ってくれたり、その声援に方言なんかが混じっていると、ほほえましくなって、「ありがとー!がんばるよー」と思わず答えたくなる(笑)。ゴール前で「おかえりー」とか言われたら、もう涙が出るほどうれしくなりますね。

だから地方大会ではコースのアップダウンが大きくても、旅気分で走れてさらにあたたかい声援を受けることが多いので、思っていた以上に早く走れることがあります。旅ラン・パワーですね!

JAL:旅とランニング。なんだか、相性が良さそうですね。

岡本:ばっちりあいますよ!わたしは、なんでもランニングに結びつけると楽しさは倍増するものだと思っています。どこに行くのも走って行ったほうが楽しいし、なにかを食べるにしても走ったあとに食べたほうが絶対においしいでしょう。それに電車やクルマを使うよりも走ったほうがその街のことを感じられます。知らない土地を走るときは、いつもワクワクします。

だから地方大会に遠征に行くときは、だいたい大会後も1泊か2泊して観光して帰ってきます。翌日に、クールダウンも兼ねて、その土地、街並みを走るのがわたしの地方マラソンの楽しみ方。そんな旅ランは、私が走り続けるモチベーションのひとつにもなっています。

次はどこの街を走ろうか。考えるだけでも楽しいですよ!

青い海を望みながら海岸沿いを走る天草マラソン

画像1: 青い海を望みながら海岸沿いを走る天草マラソン

天草は九州熊本県の西部に位置し、周囲を海に囲まれた風光明媚な観光地。禁教令(キリスト教)により信仰の自由が禁じられた江戸時代、隠れキリシタンが潜伏し仏教、神道と共存しながら独自の文化を育んだ天草の﨑津集落は、2018年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産の1つとして世界文化遺産に認定されました。

画像2: 青い海を望みながら海岸沿いを走る天草マラソン

岡本さんも注目する、この天草を走るマラソン大会が、2019年1月27日(日)に開催されます。すでに12回も開催されている同大会は、青い海を望む海岸沿いを走るコースが魅力。目の前に海が広がる景色は開放感に溢れ、潮風を香りながら気持ちよく走ることができます。小さな港町を走ってつないでいくのも、天草マラソンならではの特徴といえるでしょう。

コースそのものは細かいアップダウンがあり、なかなかタフなコースですが、制限時間は7時間と、ビギナーでもチャレンジしやすい大会です。ハーフマラソンの部もあるので、それぞれのレベルに合わせて、ぜひ参加してみてください!

天草マラソン大会事務局
http://hp.amakusa-web.jp/a0455/MyHp/Pub/Default.aspx

天草マラソンの翌日は、世界文化遺産めぐりを旅ランで

画像1: 天草マラソンの翌日は、世界文化遺産めぐりを旅ランで

もしも天草マラソンに参加したら、少し延泊して天草を観光しましょう。翌日のクールダウンも兼ねた旅ランは、ふたたび絶景が続く海岸沿いをジョギングするのもよし。少し足を伸ばして世界文化遺産に登録された﨑津集落を訪れるのもいいですね。その美しい風景の中で、どのような歴史が刻まれてきたのか。400年以上前の江戸時代に想いをはせながら走る教会めぐりは、天草でしか体験できない旅ランです。

画像2: 天草マラソンの翌日は、世界文化遺産めぐりを旅ランで

もしも筋肉痛がつらい……という方は温泉めぐりをどうぞ。天草には温泉スポットがいくつもあります。中でもおすすめしたいのが下田温泉。約750年の歴史を持つ名湯は源泉かけ流しの天然温泉。疲労回復に効果があるといわれ、マラソンの疲れを癒してくれます。

ひと風呂浴びたら、温泉街からおよそ5分ほど歩いて西海岸へ。水平線に沈む夕陽が東シナ海を茜色に染め上げる景色を見れば、きっとマラソンの疲れなど忘れていることでしょう。

画像3: 天草マラソンの翌日は、世界文化遺産めぐりを旅ランで

そして天草での晩餐は贅沢に。天草の四方を囲む海は、さまざまな魚介が生息する豊かな漁場でもあります。新鮮な魚介類をふんだんに使ったメニューの数々は、どれも美味。その土地の食文化に触れるのは、欠かせない旅の醍醐味です。岡本さんいわく、食べる前に少し走っておなかをすかせば、もっとおいしく食べることができるとのこと。この旅ランならではの楽しみ方も、ぜひ試してみてください。

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