メキシコが最高に盛り上がる「死者の日」(ディア・デ・ムエルトス)。ディズニー映画『リメンバー・ミー』で知名度が増し、近年では国境を超えて祝祭があげられているほど。2008年には、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。

派手な飾り付けと独創的な骸骨の仮装は、一見の価値あり。この記事では、「死者の日」の楽しみ方からお役立ち情報までご紹介。まるでこの世に生きながらあの世にいるような……不思議な感覚の旅に繰り出してみませんか?

※本記事の情報は2024年9月時点のものです。最新情報は公式Webサイトでご確認ください。

「死者の日」(ディア・デ・ムエルトス)とは?

画像: 「死者の日」のシンボル「マリーゴールド」

「死者の日」のシンボル「マリーゴールド」

「死者の日」の起源はスペインによる征服前までさかのぼります。メシカ(アステカ王国を築いた先住民)は、人が亡くなるとミクトラン(死後の世界)に導くための祭りをしていました。その後、16世紀に入りスペイン入植後、キリスト教行事と融合し、現代の死者の日となりました。

「死者の日」には、家族や友人が集い愛する故人を再び現世にお迎えし、絆を深めた記憶を振り返ります。日本のお盆に似ているようで大きく異なるのは、国を挙げての盛大な祝祭である点。奇想天外ともいえる発想で繰り広げられる伝統的なこの祭りは、2008年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

画像: オフレンダ(祭壇)

オフレンダ(祭壇)

「死者の日」(ディア・デ・ムエルトス)はいつ、どこで開催される?

画像: iStock/Miguel Serrano Ruiz

iStock/Miguel Serrano Ruiz

「死者の日」はメキシコ全土で祝われており、11月1日は子どもの魂が、2日は大人の魂がこの世に戻ってくると言い伝えられています。場所にもよりますが、10月25日くらいから11月5日くらいまで、飾りつけを見ることができます。
先住民の割合が多いオアハカ地方が開催地としては有名ですが、メキシコ全土で繰り広げられる大規模な祭り。メキシコシティ周辺だけでもしっかり満喫できます。

「死者の日」に参加するためにはどうしたらいい?

メキシコシティへは、アエロメヒコ航空運航のコードシェア便、もしくはアメリカ・ダラスを経由して向かう方法もあります。気流の関係で行きは約13時間、帰りは約15時間のフライトです。
メキシコシティ国際空港から市の中心部へは、メキシコ政府通信運輸省により認定され、空港内に乗り入れも許可されたタクシー業者の「認可タクシー(Taxi autorizados)(英語ではAuthorized taxiと表記)」が安全かつ快適。空港内の到着ロビーにある24時間営業のチケットブースで、行き先のホテルを告げてチケットを購入し乗車時に運転手に渡すシステムです(約300〜400ペソ=約2,400〜3,200円)。市街地まで約30分です。
ホテルを取る場合は、「メガパレード」のルートとなり、観光にも便利な「レフォルマ通り」沿いがおすすめです。

日本語でのアテンドが必要な場合は、日系旅行会社のツアーを検討してみてください。

「メガパレード」から「骸骨メイク」まで。現地での楽しみ方

「死者の日」は、見るだけでなく参加することもできる祭り。現地で余すことなく満喫するための楽しみ方をご紹介します。

とにかく必見の「メガパレード」

画像: ソカロ広場のライトアップ(2023年)

ソカロ広場のライトアップ(2023年)

市内でメイン会場といえるのは、豪華な飾りつけが施される「チャプルテペック公園」「レフォルマ通り」「ソカロ広場」の3つです。特に夜のソカロ広場で行われるライトアップや光のショーは幻想的な世界へと誘ってくれます。

そして必見のイベントは「メガパレード」と呼ばれる盛大なパレード。軽快な音楽にあわせて、骸骨に扮したたくさんの人たちとともに、フロート(山車)に乗った機械仕掛けの巨大な骸骨が骨をカクカクさせながら練り歩きます。さらにはアステカ時代からの伝統的な踊りである「コンチェロス」の踊り手たちがド派手な衣装を身につけて、太鼓やマラカスの音とともに全身全霊をかけて舞い踊るなど、多彩なパフォーマンスが満載。

ルートは約9km。チャプルテペック公園からスタートして、目抜き通りのレフォルマ通りを通過してソカロ広場でゴールするルート、もしくはその逆ルートをたどることが多いです。混雑しているため、最前列で見たいのなら早朝から場所取りをするのがおすすめ(入場料などは不要)です。
※各イベントとメガパレードの日時、ルートの詳細については、メキシコシティ政府のHPをご参照ください。

さらに露店などでは現金しか受け付けないところも多く、お釣りがない場合もあるので、小銭を用意しておくと安心です。

「死者の日」の見どころ「祭壇」。巨大版はここで見る!

「死者の日」の見どころはメガパレードだけではありません。そのひとつが墓地や家庭にしつらえる「祭壇(オフレンダ)」です。
普段は何もない墓石のまわりもこのときばかりは華やかに飾られ、まわりでは「マリアッチ」と呼ばれるメキシコの民族音楽を、こちらも「マリアッチ」と呼ばれる数名の楽団が死者を歓迎するため厳かに奏でます。
祭壇に供物を捧げるのは日本のお盆や墓参りなどと同じ。とはいえそれぞれの供物には意味があります。

現世に戻る長旅での喉の渇きを潤すため。
マリーゴールドの花香りと橙色の花びらで魂を導くため。
お清めのため。
蝋燭の炎行きと帰りの道を迷わないよう光で導くため。
お香(※)除霊のため。
死者のパン兄弟と友人からの捧げもの。
パペルピカド(切り絵)装飾のため。
※樹脂が長い年月をかけて半化石化したもので「コパル」と呼ばれる

他にも大人の魂には生前の嗜好品(テキーラやたばこなど)、子どもの魂には骸骨型の砂糖などが捧げられます。

基本、祭壇は墓地や家庭でつくられているものですが、一般公開向けにつくられた巨大版もあります。2023年は巨大祭壇がソカロ広場とメキシコ国立自治大学オリンピックスタジアムで展示されました。その他、美術館、博物館、市場などにも設置されるので、足を運んでみてください。

「骸骨メイク」を体験

さらに「骸骨メイク」も象徴的。ハロウィンのような思い思いの仮装をするのではなく骸骨姿の一択で、メガパレードの参加者だけでなく街を歩く見物人や観光客の多くも骸骨姿になります。華やかな骸骨メイクをする理由は、「死を怖がらずに受け入れるため」だといいます。

画像: iStock/MStudioImages ラ・カトリーナ(La Catrina)は、19世紀後半、メキシコへの社会批判をコミカルに描いた芸術家ホセ・グアダルーペ・ポサダの作品に登場する骸骨の貴婦人が由来という説があります

iStock/MStudioImages
ラ・カトリーナ(La Catrina)は、19世紀後半、メキシコへの社会批判をコミカルに描いた芸術家ホセ・グアダルーペ・ポサダの作品に登場する骸骨の貴婦人が由来という説があります

骸骨姿の仮装というと、服は黒服に白色で骨格を描いたものをイメージするかと思います。「死者の日」では顔こそ骸骨ですが、衣装は華やかでおしゃれなことも。エレガントな帽子をまとった骸骨姿の女性たちは「ラ・カトリーナ(La Catrina)」と呼ばれています。

もちろん見ているだけでも楽しめますが、やっぱり祭りは参加してこそ意義がある! ということで、ぜひ骸骨メイクをして「見物客」から「参加者」になってください。
自分でメイクしてもいいですが、プロに任せたいときは、レフォルマ通りとソカロ広場周辺の路上に立ち並ぶ露店へ。いくつかの写真からお好みのメイクを選べば15分ほどで完成! もちろん男性用のメイクもあります。

画像: 「骸骨メイク」を体験

さらにコスチュームもあればもっと楽しめます。これらは後述する「シウダデラ市場」または市内のパーティグッズ店で調達できます。
華やかであればあるほどよくて、見物客から「写真を撮らせてください」と声をかけられる頻度も高くなります。参加者どころか、モデル気分まで味わえます。

パン・デ・ムエルトなど、「死者の日」の伝統食を味わう

画像: パン・デ・ムエルトなど、「死者の日」の伝統食を味わう

日本のお盆では「おはぎ」がつきもののように、メキシコの「死者の日」にも定番の伝統食があります。それはパン。とはいえただのパンではなく、「パン・デ・ムエルト(死者のパン)」と呼ばれる特別なもので、スペイン人がやってくる前のメソアメリカ文明が起源で、現代に受け継がれたものです。

パン・デ・ムエルトは地域により特徴があり、ミチョアカン州の一部は人形型、オアハカ州の一部では宗教的な絵が描かれています。
バリエーションがある中、最も知られているパン・デ・ムエルトは、真ん中の丸い部分が頭蓋骨、そこから十字に伸びる4本は骨を表したものです。

画像: パン・デ・ムエルトと砂糖でできた骸骨

パン・デ・ムエルトと砂糖でできた骸骨

味も抜群で、一口頬張るだけで甘さの中に爽やかなオレンジとアニス(スパイス)の香りがふんわりと広がります。「死者の日」の期間中はもちろん、9月頃からパン屋やスーパーマーケットに並びます。

さらに「死者の日」の伝統食は他にも。おすすめは、メキシコのソウルフード「タマル」です。トウモロコシ粉を練った生地の中に肉と唐辛子入りのグリーンまたはレッドソースを入れてトウモロコシの葉で包んで蒸したもので、中身はピリ辛のものだけでなく甘いものなどのバリエーションがあります。

画像: モーレとご飯をトルティージャに包んで食べます

モーレとご飯をトルティージャに包んで食べます

また「モーレ」も味わってほしい一品。チョコレートベースにトマト、プラタノマッチョ(バナナの一種)、唐辛子、ナッツ類などを練り合わせたソースを、茹で鶏にかけたもの。これらの妙味は日本では馴染みが少ないので、現地でぜひトライしてください!

メキシコシティを満喫する、おすすめの観光スポット

ここからは「死者の日」とあわせてメキシコを巡るのなら、ぜひ訪れたいおすすめのスポットを3つご案内します。

ソチミルコ地区でゆったりと運河を遊覧

メキシコシティの中心地から南へ約30kmのところに位置するソチミルコ地区で、運河を遊覧することができます。派手でかわいい手漕ぎ小舟(トラヒネラ)に乗り、ゆったりと運河を進むと、そこには豊かな緑が! 自然を感じる癒しのスポットです。ユネスコの世界文化遺産に登録されています。

トラヒネラの所要時間は1時間からで、ガイドさんと要交渉。料金は1艘あたりなので1人でも10人以上でも同額です。少人数の場合は他のグループと乗り合いも可能です。

マリアッチ(伝統音楽を奏でる小楽団)をリクエストすれば(別料金)、彼らも同乗してくれて、好きな曲をあなただけのために演奏してくれます。船着場は何カ所かあるので、自分の現在地から近いところや、乗りやすいエリアを検索してみてください。

お土産を買うなら「シウダデラ市場」へ

画像: お土産を買うなら「シウダデラ市場」へ

ソカロ広場から徒歩で20分ほど、メキシコ各地から集められたカラフルでかわいい民芸品が並ぶ「シウダデラ市場」は、とっておきのメキシコ土産が買えるスポット。骸骨モチーフの品々はもちろんのこと、日本でも人気のメルカドバッグ、花や鳥が鏤められた刺繍服、ルチャリブレ(プロレス)のマスクなどが豊富に揃っています。

そのほとんどが「アルテサニア」と呼ばれる職人の手作り。ひとつとして同じものはないので、よ~く吟味して買ってみてください。
閉店の1時間ほど前になると、閉まりはじめる店もあるので、早めに行くのがおすすめです。

シウダデラ市場

住所Avenida Balderas y Plaza de la ciudadela Col.Centro, Alcaldía Cuauhtemoc, CP 06040 Cdmx.

歴史とアートの街「コヨアカン」をのんびり散策

画像: 歴史とアートの街「コヨアカン」をのんびり散策

メキシコシティ南部の歴史地区、「コヨアカン(Coyoacán)」。メキシコを代表する画家フリーダ・カーロが愛した地としても有名です。

コヨアカン地区のシンボルである「コヨーテの噴水」から「フランシスコ・ソサ通り(Avenida Francisco Sosa)」に入ると、石畳の道にコロニアル様式の家屋が軒を連ねます。周辺に点在する素敵なギャラリーとおしゃれなカフェ。古さと新しさの調和が心地よく、さまざまなお店を見ながら街を歩くだけでも楽しめます。

画像: 週末のアートアジェンデの庭園の絵画市

週末のアートアジェンデの庭園の絵画市

週末は、コヨアカン市場前にある「アートアジェンデの庭園(Jardin del Arte Allende)」へ。ここは地元アーティストたちの作品を買える露店が並び、まるで小さな美術館のよう。観光客でも賑わいます。作品に興味を持ったらアーティストから創作秘話が聞けるかも。ぜひ立ち寄ってください。

あの世にワープしたかのような不思議な体験ができることに加えて、“死”に対する考え方を深めることもできるメキシコの祭り「死者の日」。ただ見るだけでなく参加もすることでさらに楽しくなるはずです。ぜひこの不思議で幻想的な体験を、満喫してください!

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