日常から解き放たれた旅のひとときは、普段とは違う体験の連続です。浮き足立ってしまう気持ちなどから、旅先で大事なものをなくしてしまうケースは稀にあります。慣れない海外という環境であればなおのこと。場合によっては盗難のリスクもあります。
出発前にできる!盗難・紛失の予防と備え

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海外旅行での盗難や紛失は、予防と分散がポイントです。「持ち物」「情報」「保険」「スマホ」の4つの項目に分けて、それぞれ具体的にご紹介します。
① 貴重品や持ち物の盗難・紛失対策

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旅行の持ち物を準備する際には、以下のような点を意識しましょう。すぐにできるシンプルな対策だけでも、被害を最小限にすることができます。
- クレジットカードは2枚以上用意し、別々に保管する。
- 現金・クレジットカード・パスポート・スマホをひとまとめにしない。
- ファスナー付き・防犯性の高いバッグを選ぶ。
- ボディバッグやネックポーチを活用する。
② 情報と連絡先の控え
予防・対策をしてもトラブルに遭ってしまう可能性は0ではありません。もしもの時のために、手続きなどで必要になる情報や連絡先の準備をしておくことも大切です。
- パスポート番号を紙やスマホに控える。コピーなどでも◯。
- クレジットカード会社、通信会社、保険会社などの緊急連絡先を紙やスマホに控える。
- 日本大使館や領事館の所在地、連絡先を紙やスマホに控える。
- すぐに連絡の取れる家族や友人の連絡先を紙に控えるほか、旅程を共有しておく。
いざというときのために、「どこに連絡すればいいか」を把握できており、その連絡先がわかる状態がベストです。
③ 海外旅行保険とサポート体制の確認
旅マエには、海外旅行保険に加入することも忘れずに。紛失や盗難に遭ってしまった場合でも、補償やサポートを受けることができます。
保険に加入する際は、補償範囲の確認(紛失は対象になるのかなど)を必ず行いましょう。すぐ確認できるように紙にプリントしておくこともおすすめです。
また、普段から使っているクレジットカードに付帯で海外旅行保険がついている場合もあるので、旅行準備中に一度確認すると良いでしょう。
海外旅行に行く際は、保険は“持ち物のひとつ”と考え、必須で準備しておくことをおすすめします。
④ スマートフォン・データの準備
スマホはあらかじめ「端末を探す」機能をオンにしておき、クラウドのバックアップを最新の状態に。二段階認証など未設定のものがある場合には設定をして、セキュリティを強化しておきましょう。
旅行中は常に注意!現地での防犯意識も大切

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旅マエの事前準備をしっかりしていても、旅行中の防犯意識が薄いと意味がありません。
旅行中は、気持ちが高揚するあまり、つい荷物への注意が薄れがちです。人混みや公共交通機関ではバッグを体の前に持ち、ファスナーがしっかり閉じているかをこまめに確認しましょう。また、ホテルではセーフティボックスを活用し、パスポートや予備のカードは部屋に置く場合でも“隠す”意識が大切です。
テーブルや椅子に荷物を置いたまま席を立つ、スマホを手にしたまま歩くことは、海外では大きな油断となり、トラブルの引き金に。「少しなら」「自分なら大丈夫」という思い込みを避け、防犯意識を忘れずに過ごしましょう。
盗難・紛失に気づいたら、まずやるべきこと(基本の初動マニュアル)
もし“モノがないこと”に気づいたら、まず深呼吸。焦る気持ちを抑え、落ち着いて状況を整理しましょう。置き忘れか、盗難かを判断し、心当たりのある場所に連絡。それでも見つからない場合は、現地警察への届出とポリスレポートの取得が重要です。
そのうえで、カード会社や保険会社、必要に応じて日本大使館・領事館にも連絡します。現場の状況、紛失物、時間などをメモに残しておくと、後の手続きがスムーズです。
パスポートをなくした場合

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パスポートは、海外での身分証明と帰国に欠かせない最重要書類。紛失や盗難に気づくと、不安が一気に押し寄せますが、正しい手順を踏めば必ず帰国できます。まずは落ち着き、手続きの流れを理解して、ひとつずつ進めていきましょう。旅先での予期せぬシチュエーションでは、冷静さが最大の味方です。
パスポートをなくした場合の対応の流れ
① 落ち着いて状況を確認する(置き忘れか盗難か)。
② なくした可能性のある場所へ連絡する。
③ 被害状況を記録する(場所・時間・状況・写真など)。
④ 現地警察へ届け出て、「盗難・紛失証明書(ポリスレポート)」を取得する。
⑤ 日本大使館・領事館に連絡し、再発行または渡航書の案内を受ける。
パスポートが見当たらないと気づいたら、まずは行動範囲と、最後に確認した場所を思い返すことが出発点です。ホテルのフロント、レストラン、空港、タクシー会社など、心当たりのある場所へ連絡して確認しましょう。
発見に至らなかった場合は、現地警察に届け出て、ポリスレポートを取得します。これは、日本の大使館や領事館で手続きを行う際に必要となります。紛失時の状況や場所、日時をメモしておくとスムーズです。
そのうえで、日本大使館・領事館に連絡します。日本国籍を証明し、新たな渡航書類を取得するための案内を受け、必要書類や受付可能時間を確認しましょう。渡航先によっては、予約制だったり受付時間が限られていたりする場合があるため、早めの連絡が安心につながります。
パスポートをなくした場合、必ず大使館での手続きが必要

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海外でパスポートを紛失した場合、再発行もしくは渡航書(日本への帰国専用書類)の発行手続きが必要です。滞在を継続する場合はパスポートの再発行、帰国が迫っている場合は渡航書の発行が現実的な選択となります。大使館・領事館で求められる主な書類の例は以下のとおりです。なお、渡航先によって異なる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。
・盗難・紛失証明書(ポリスレポート)〈警察で取得〉
・パスポート用証明写真〈国によって規格が異なる場合あり〉
・身元確認書類〈あれば〉
・航空券や旅程を示す書類
写真の規格や必要な書類、手続きにかかる時間は国によって異なるため、事前に案内を確認しましょう。証明写真は現地で撮れる場所を案内してもらえることもあります。再発行には数日かかることがありますが、急ぎの帰国が必要な場合には渡航書の発行に切り替えられることも。どちらを選ぶべきか迷う場合は、大使館の担当者に相談し、旅程や状況に応じた最適な方法を確認しましょう。
万一に備え、出発前にはパスポートの顔写真ページをコピー・撮影してスマホやクラウドに保存し、番号や発行日を控えておくと、手続きが格段にスムーズになります。
財布・クレジットカードをなくした場合

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財布やクレジットカードを失くすと、支払い手段が断たれるだけでなく、不正利用のリスクも生じます。まずは落ち着き、順を追って行動することが大切です。正しい対処法を知っていれば、必要以上に慌てることはありません。
財布・クレジットカードをなくした場合の対応の流れ
① 落ち着いて状況を確認する(置き忘れか盗難か)。
② なくした可能性のある場所へ連絡する。
③ 被害状況を記録する(場所・時間・状況・写真など)。
④ 現地警察へ届け出て、「盗難・紛失証明書(ポリスレポート)」を取得する。
⑤ クレジットカード会社に連絡し、利用停止手続きをする。
紛失に気づいたら、まずは立ち寄った場所や移動ルートを思い返し、心当たりのある施設に問い合わせます。空港や駅、レストラン、観光スポットなど、海外でも落とし物として届けられるケースは少なくありません。
見つからなかった場合は、現地警察に届出を行い、ポリスレポートを取得します。この証明書は、保険請求やクレジットカードの再発行手続きに必要となるため、必ず受け取りましょう。
クレジットカードをなくした場合、すぐに利用停止手続きを

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同時並行で、クレジットカード会社に連絡し、利用停止手続きを行います。カード番号が完全に把握できなくても、氏名や生年月日、利用国などの情報で対応できる場合が多いので、諦めずに連絡を。
手続きの際には、現地のホテル名や連絡先、紛失した日時などを聞かれることがあります。海外旅行前に、カード裏面にある緊急連絡先や、公式アプリ内のサポート番号を控えておくと、慌てずに済みます。利用停止の連絡時には、以下のポイントを伝えましょう。
・氏名
・紛失したカードの種類〈わかれば番号も〉
・紛失場所と時間
・心当たりのある不正利用の有無
カード会社によっては、緊急再発行カードや、現地で使えるキャッシュサービスを提供している場合もあります。希望がある場合は相談しましょう。日本へ帰国後、改めてカード会社へ連絡し、正式な再発行手続きを行います。
支払い方法がなにもなくなってしまったら…
もし、カードも現金も使えない状況になってしまった場合でも、解決策があります。
まずは、日本大使館・領事館に相談を。直接お金を貸与する制度はありませんが、緊急時の支援情報や、公的窓口・送金手段について案内を受けられます。次に検討したいのが、家族や友人に国際送金を依頼する方法です。主要な送金サービスであれば、オンラインで手続きでき、受け取りもスムーズ。なお、国際送金については日本大使館・領事館で詳しく教えてくれるので、問い合わせてみるとよいでしょう。
また、同行者がいる場合は、一時的に立て替えてもらい、帰国後に精算するという手も。スマホが使える場合は、モバイル決済アプリの送金機能を一時的に活用できるケースもあります。ポイントは、「支払い手段を複数用意し、分散させておく」こと。現金とカードを別々に持ち、予備カードをホテルのセーフティボックスに保管するなど、旅マエの工夫がトラブル時の安心につながります。
スマートフォンをなくした場合

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日本にいるときのみならず、海外旅行時でもスマホは必需品。連絡手段以外にも、調べ物や決済にも活躍します。なくなってしまったら大ピンチですが、慌てずに行動しましょう。
スマートフォンをなくした場合の対応の流れ
① 落ち着いて状況を確認する(置き忘れか盗難か)。
② なくした可能性のある場所へ連絡する。
③ 被害状況を記録する(場所・時間・状況・写真など)。
④ 「端末を探す」機能で位置情報を確認する。
⑤ 通信会社に連絡して、SIM・回線を停止する。可能であれば遠隔ロックを設定する。
⑥ 現地警察へ届け出て、「盗難・紛失証明書(ポリスレポート)」を取得する。
スマホを紛失したら、まずは行動範囲を思い返し、心当たりの施設に問い合わせます。同時に、「端末を探す」機能で位置を確認。見つからなければ警察に届出を行います。
とはいえ、スマホ自体がないと通信手段・連絡手段がない場合も多いでしょう。同行者がいる場合は協力をお願いするほか、端末を探す機能はPCやタブレットでも利用できます。また、各所への連絡はホテルなどで電話を借りられる可能性もあるため、一度聞いてみましょう。
スマートフォンをなくした場合、データ保護を迅速に!

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スマホには数多くの個人情報、決済データなどが含まれているため、もしなくしてしまった場合には、すぐに使えなくすることが大切です。
意外と知られていませんが、じつは遠隔で端末ロックやデータの削除が可能です。同行者のスマホやPC・タブレットなどの他端末から該当の操作を行いましょう。(iPhoneの場合は「紛失モード」、Androidの場合は「デバイスの保護・データ削除」など)
もしもの時、データを削除することが多くの情報を守ることにつながります。旅マエには必ずバックアップを取り、復旧できる安心感を持っておきましょう。
また、通信会社に連絡して回線停止も依頼しましょう。併せて、決済を紐づけているカード会社・銀行へ連絡し、決済停止の依頼をすることも有効です。
紛失・盗難にあったら、帰国後の手続きも忘れずに
トラブルを乗り越えて無事に帰国できたら、ひと安心。ですが、帰国後に必要な手続きやセキュリティ対応を忘れずに行うことが大切です。海外での紛失・盗難は、時間差で影響が出ることも。後処理をきちんと行うことで、安心を未来につなぎましょう。
保険の申請

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まずは、加入している海外旅行保険やクレジットカード付帯保険が利用できる場合、早めに申請手続きを始めます。現地警察で取得したポリスレポート、大使館や領事館で発行された書類、支払いの明細や渡航情報など、必要書類をそろえて保険会社に提出しましょう。保険会社によって必要書類は異なるため、帰国後すぐに連絡し、指示を受けるのがスムーズです。時間が経つと詳細を思い出しにくくなるため、旅の記録や状況メモはそのまま保管しておくと安心です。
セキュリティ情報を見直し、再発防止を
財布・カード・スマホの紛失や盗難があった場合は、情報セキュリティの見直しも重要です。帰国後に行いたいチェックは以下のとおりです。
- パスワード・暗証番号の変更
- 決済アプリや銀行アプリのログイン履歴確認
- スマホやパソコンのセキュリティ設定更新
- クラウドサービスやメールの不正アクセス有無の確認
とくにスマホを紛失した場合、アプリに残された情報が悪用される可能性があります。“念のため”が自分自身を守る一歩と考え、関連サービスの安全性を確認しておきましょう。
また、次回の旅行に向けて、カードや現金の分散管理、防犯グッズの確認、パスポートの控えの保存場所など、手痛い経験を活かして旅の備えをアップデートしておくと再発防止に繋がります。
旅のトラブルは誰にでも起こりうるもの。備えこそが、楽しい時間につながります

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盗難や紛失は、誰にとっても他人事ではありません。旅先では、見知らぬ環境や高揚した気分のなかで、思いもよらない瞬間にトラブルが起きることがあります。大切なのは、出発前にできる小さな準備と、旅先での少しの注意、そして万が一のときに落ち着いて行動するための知識です。持ち物を分散させる、情報を控えておく、保険やサポート窓口を把握しておく──そういった積み重ねが、安心して旅を楽しむ結果につながります。
旅は、未知の風景や文化、出会いを楽しむ時間。必要な備えがあるからこそ、そのひとつひとつを心から味わえるはず。安心の準備を整えながら、また次の旅先へ。心に残る豊かな体験が、きっとあなたを待っています。
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