熊本県中央部、雄大な阿蘇山の南麓に位置する南阿蘇地域。熊本市内から南阿蘇鉄道を使い、のどかな田園風景と連なる山々を眺めながら、自然の美しさと地域の温かさを感じさせる風景を楽しみます。自然と調和した地域に伝わる食文化、透明度の高い湧水地を巡り、無限の恵みを体感する阿蘇の魅力を味わう旅に出かけました。

伝統が息づく郷土料理「高森田楽」の魅力

南阿蘇鉄道の終着駅「高森駅」がある高森町には、阿蘇地方で特別な存在として親しまれている伝統的な郷土料理、「田楽」があります。日本各地で食べられる田楽ですが、ここでは特に「高森田楽」として親しまれており、その背景には独自の食材と歴史が深く関わっています。

肥沃な土壌を持つ農業地域であった阿蘇地域では、この地で栽培される里芋の一種「鶴の子芋」を串に刺して農作業の合間に野外で食べる、各家庭の食卓に並ぶなど、地域の食文化として日常に根付いていました。この風習を郷土料理として整え、最初にお店で提供するようになったのが「高森田楽保存会」です。

「鶴の子芋」は阿蘇山の火山灰を含む独特の土壌で育つ、熊本県の伝統野菜です。栽培地域が限られているため、流通量も少ない希少な品種です。この里芋はしっかりとした歯ごたえがあり、煮たり焼いたりしても崩れにくいのが特徴。細く伸びた独特の形状は、「鶴」という名前を彷彿とさせます。

「高森田楽保存会」は初代・本田耕亮が1960年に始めたお店の店名。
ここでは「高森田楽」をメインとし、阿蘇の郷土の味をセットにしたコースメニューが楽しめます。
田楽に使われる味噌は、代々本田家の女性たちによって受け継がれ、母から娘へと守り伝えられてきた秘伝の調合です。濃い色をした田楽味噌はその色とは裏腹に塩辛くなく、たっぷりと付けて食べるのがおすすめ。甘すぎず、柚子などの柑橘なども入らないシンプルな味なだけに、野菜に合わせておつまみに、ごはんのお供にとなんにでも合います。
囲炉裏の炭火じっくりと炙り、焼きあがっていくのを見ているだけでも楽しく、食事を通じて昔ながらの日本の風情を感じることができます。
高森田楽は、かつては「鶴の子芋」だけを使ったシンプルな料理でした。しかし、時を経て豆腐やこんにゃくが加わり、さらに「山女魚(やまめ)」の塩焼きが添えられるようになり、現在の形に変化していきました。これにより、地元の山の恵みを存分に味わえる、より魅力的な内容へと進化したのです。こうした進化が、田楽を目当てに遠方から訪れる人々を引き寄せるようになり、やがて高森の名物として広く知られるようになりました。

セットとなる料理も熊本ならでは。帯状のうどんに似た“だご(団子)”が入る郷土料理「だごじる」や、地とうきび(とうもろこし)を乾燥させて砕いた割とうきびをごはんに加える「とうきびごはん」、そして付け合せには阿蘇たかな漬。厚みのある油揚げは秘伝の味噌との相性抜群です。
シンプルながらも深い味わいがあり、地域の食文化と自然を丸ごと体感できる阿蘇田楽料理。郷土の味を丸ごと味わえるうれしい旅グルメでした。

高森田楽保存会

住所熊本県阿蘇郡高森町上色見2639
電話0967-62-0234
営業時間11:00~15:00
定休日火曜日、水曜日
URLhttps://dengaku-hozonkai.com/

南阿蘇の宝石「白川水源」 - 清らかな湧水が織りなす自然と文化の調和

南阿蘇エリアには、阿蘇山の地下水脈から湧き出でる複数の湧水地があります。おいしい水を求めて多くの人が訪れ、近年ではインバウンド観光客も多く訪問するスポットとなっています。
なかでも「白川水源」は湧泉までの整備が行き届いており、気軽に立ち寄れる観光地となっています。

白川水源は古くから清らかな水を生み出す湧水地として大切に守られてきました。3代肥後藩主細川綱利により造営された白川吉見神社の境内にあり、ここには水神が祀られています。そのことから藩政時代から水源が知られ、この地の資源として活用されていたことが推察できます。
昭和60年、環境省により全国100か所の湧水・河川が選定された「名水百選」に名を連ねたことにより、広く知られる湧き水となりました。これを機に周辺整備が行われ、水源へ訪れた人の休憩場所や土産物店「南阿蘇村物産館 自然庵」も建てられました。さらには2012年に南阿蘇鉄道「南阿蘇白川水源駅」が新たに開業し、それまでの最寄り駅であった「阿蘇白川駅」に比べ、格段にアクセスが良くなりました。

白川水源の湧き水は、毎分60トン。水底からボコボコと目にも見えるほどに湧き上がる豊富な水量で、自然の力を感じます。水温は一年中14℃に保たれており、暑い夏の日であれば、水を注いだボトルが一瞬で結露するほど冷たい水に感じます。そのまま飲料することもできるほどの清らかなこの水は、周辺一帯の田畑を潤すだけでなく、一級河川・白川に注ぎ出て熊本市内から遠く有明海まで続いていきます。これが南阿蘇が「水が生まれる里」と言われる理由のひとつです。

白川水源の水をさらにおいしく味わいたい人に、ぜひ立ち寄ってほしいのが「南阿蘇村物産館 自然庵」。白川水源を利用したさまざまな加工品があります。
特に湧水を使った水出しコーヒーは絶品。熊本市内にある「まる味屋珈琲店」が焙煎した特別なコーヒー豆を使用し、白川水源の清らかさを表現した一杯です。ミネラルをたっぷりと含み軟水である成分や水源のさわやかなイメージを勘案し、特別焙煎イタリアンローストブレンドを採用。旅の疲れた体にスッとしみ込むようなすっきりとした余韻、さらには大地からの恵みを感じられる味わいです。
周辺の水源地に合わせて焙煎したコーヒー豆も販売され、白川水源のコーヒー豆の他、お日様のような力強い味わい「竹崎水源珈琲」もあります。

南阿蘇の水源巡りは、ただ自然の美しさを楽しむだけでなく、人々の生活に根付いた水の大切さを感じる旅でもあります。澄んだ湧水が作り出す静寂の中で、心を洗うようなひとときを過ごすことができました。
改めて水の恵みの素晴らしさを実感し、清らかな水と心を通わす特別な時間になりました。

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