「どこに行ってもコーラのことを考えてしまうんです。いろいろな味わいがつくれることはクラフトコーラならでは。つまりオリジナリティが出しやすいんですね。だからここまでブームが広がったのだと思います」
こう語るのは、伊良(いよし)コーラを主宰するコーラ小林さんです。下落合で生まれ育った大のコーラ好きは、広告代理店勤務から一念発起。漢方薬をつくる職人だった祖父の影響もあり、クラフトコーラづくりを生業にすることに。フードトラックから始まり、現在は大手コンビニエンスストアにも陳列されるほどになりました。近年のクラフトコーラブームの火付け役ともいうべき、第一人者です。
「『日本を、飲む。』と題して、各地のストーリー性のある食材をコーラにする企画をしたり、各地のパートナーと一緒にお店を開く計画を進めたりしています。クラフトビールが全国各地で生まれているように、実は旅とコーラにも高い親和性があるのです。海外に招かれて振る舞うこともありますし、そこで新たなインスピレーションを得ることもありますよ」
偶然の出会いと絆が生んだ「台湾のマーガオコーラ」
その代表的なレシピが「台湾のマーガオコーラ」だといいます。マーガオとは伝説のスパイスとも呼ばれており、台湾の山奥で手摘みされる希少なもの。花山椒にも似た痺れと、柑橘のような香りが特徴です。
「旅のみならず、台湾にはイベント出店でも行きます。マーガオと出会ったのもそのときです。台湾料理で水餃子などに入れる珍しいスパイスで、もともと名前だけは知っていて、取引先に行ったときに、カレン産のマーガオが売られていたんです。台湾の大地震のときにはカレン産のマーガオを使ったコーラをつくって、利益を全額寄付しました」
漢方薬をルーツに持つ小林さんのクラフトコーラづくりにとって、中華圏の食材は切っても切れないもの。それでは材料とレシピをご紹介します。ご家庭でも簡単につくれるよう、小林さんがアレンジしてくれました。
【用意するもの(4~5杯分)】
・水 100ml
・レモン 1/4個
・ライム 1/4個
・キビ糖 100g
・カラメル 小さじ1/2
(以下スパイスミックス)
・マーガオ 6~7粒
・ホールシナモン 半分
・クローブ 2粒
・カルダモン 1粒
【つくり方】
まずレモン、ライムは皮ごとスライスしておきます。皮ごと入れるのがポイント。これにより柑橘の風味が際立ちます。
マーガオ、ホールシナモン、クローブ、カルダモンをすり鉢などに入れ、潰してよく混ぜ合わせ、スパイスミックスをつくります。すり鉢がない場合は、スプーンの裏などで潰しましょう。
ソースパンなどの小鍋に100mlの水とキビ糖100gを入れ、スパイスミックスを投入。弱火で加熱しながら、軽くかき混ぜます。素材が水に馴染んだらスライスしたレモンとライムを入れます。
煮立ったら火を止めて、カラメルを小さじ1/2入れて混ぜます。これでもおいしくいただけますが、粗熱を取り、冷蔵庫で一晩置くとしっかり味が馴染みます。
クラフトコーラはシロップ1:炭酸3の割合で割ります。たっぷりの氷とともに召し上がれ。
レモンとライムがコーラのオーソドックスな中に爽やかな柑橘の香りをもたらし、ピリリと感じる山椒にも似た痺れる雰囲気が圧倒的なオリジナリティを感じさせます。少しのスパイスであら不思議。オリエンタルをまとったコーラをお楽しみください。
フレッシュな柑橘がたまらない「モロッコのマンダリンオレンジコーラ」
「台湾のみならず、世界各地を訪れました。中でも印象に残っているのが、モロッコで飲んだオレンジジュースのフレッシュさ。カサブランカでは4階建て程度の小さなホテルに泊まったのですが、屋上の朝食で飲んだ味が忘れられません。モロッコには独自のスパイス文化もあります。それらもレシピに取り入れました」
主役はマンダリンオレンジのフレッシュな風味です。煮立ててつくるシロップですが、香りの強い皮も一緒に入れることで、鮮やかなオレンジの風味が生かせるといいます。
【用意するもの(4~5杯分)】
・水 100ml
・マンダリンオレンジ 1/2個
・キビ糖 100g
・カラメル 小さじ1/2
(以下スパイスミックス)
・ドライジンジャー 小さじ1/2
・ホールシナモン 半分
・クローブ 2粒
・カルダモン 1粒
・ナツメグパウダー 少々
・パプリカパウダー 少々
【つくり方】
こちらも同じように、オレンジを皮ごとスライスします。ホールシナモンとクローブ、カルダモン、ドライジンジャーを顆粒状に潰します。最後にパプリカパウダーとナツメグパウダーを一振りし、スパイスミックスが完成です。
基本のつくり方はマーガオコーラと変わりません。ソースパンなどの小鍋に100mlの水にキビ糖100gを入れ、スパイスミックスも投入。弱火で加熱したら、軽くかき混ぜましょう。馴染んだらスライスしたオレンジを入れます。
煮立ったら火を止めて、カラメルを小さじ1/2入れて、粗熱を取り、冷蔵庫で一晩置いて完成です。
一番の特徴はオレンジの香りと存在感。あわせてスパイスの複層的な風味も楽しめます。中東のスーク(市場)に漂う独特なスパイスの香りを彷彿とさせます。とはいえマンダリンオレンジの甘やかな香りが身上で、優しい印象の仕上がりです。
ピリ辛で爽やか!「沖縄のシークヮーサーコーラ」
海外のみならず、国内にも魅力的な食材があります。中でもチョイスしたのが、沖縄の食材。ソーキそばなどによく入れる辛いテーブル調味料・コーレーグースをイメージしているのだとか。
「沖縄は大好きな場所です。実は学生時代、西表島で魚の研究をしていました。西表島は山も清流も海もある、手つかずの沖縄らしい自然が残る場所です。そこに漂う清涼感をイメージしたコーラです。さらに沖縄のエッセンスとして、島胡椒(ヒハーツ)を入れました。沖縄の公設市場などで購入できますよ」
【用意するもの(4~5杯分)】
・水 100ml
・シークヮーサー 2個
・キビ糖 100g
・カラメル 小さじ1/2
(以下スパイスミックス)
・島胡椒 1本
・鷹の爪 1/2本
・沖縄の塩 ひとつまみ
・ホールシナモン 半分
・クローブ 2粒
・カルダモン 1粒
【つくり方】
先述の2レシピ同様、シークヮーサーを皮ごとスライス。島胡椒、鷹の爪、ホールシナモン、クローブ、カルダモンを顆粒状に潰します。
ソースパンなどの小鍋に100mlの水と100gのキビ糖を入れ、スパイスミックスを投入。あわせて沖縄の塩をひとつまみ入れます。弱火で加熱しながら、軽くかき混ぜます。馴染んだらスライスしたシークヮーサーを入れます。
煮立ったら火を止めて、カラメルを小さじ1/2入れて粗熱を取り、冷蔵庫で一晩置いて完成です。
シークヮーサーの清々しく爽やかな香りが口の中いっぱいに充満します。ほどよい塩気があり、後からピリッと喉に刺激を感じます。塩気も辛みも甘さを邪魔しない範囲なので、大人のみならずお子さまも楽しめそうです。
旅先の数だけレシピがある?クラフトコーラの世界へようこそ
「クラフトコーラづくりにはフォーマットがあるものの、正解がないんです。だからいろいろ試しやすい。静岡のお茶や山葵とか、奥飛騨の山椒なんかもよく合いますよ。簡単なのでご家庭で試してみてください。最近は小学生の自由研究のテーマとしても人気です。親子でコミュニケーションを取りながら、オリジナルレシピを考えてみてはいかがでしょうか」
ちなみに今回ご紹介したレシピのスパイスは、すべて国内市販品でも大丈夫です。以上、アレンジレシピをご紹介しましたが、基本のコーラづくりの材料は以下の通りです。ちなみに今回のレシピでは無添加のキビ糖を使っていますが、実はグラニュー糖の方が味わいの違いがハッキリするのだとか。
【基本のコーラづくりのために用意するもの(4~5杯分)】
・水 100ml
・キビ糖 100g
・カラメル 小さじ1/2
・レモン 1/4
・ライム 1/4
(以下スパイスミックス)
・ホールシナモン 半分
・クローブ 2粒
・カルダモン 1粒
つくり方はご紹介したレシピと同様で、スパイスをすり潰してスパイスミックスにし、水とともに混ぜ合わせながら煮ます。レモンとライムを入れて、沸騰したらカラメルを入れ、粗熱を取って冷蔵庫で一晩冷やすだけです。
ちなみに小林さんがこれまでに考案したクラフトコーラのレシピは、数百に及ぶのだとか。スパイスやフルーツの数だけレシピがあると考えてよさそうです。カレーのように応用が利くテーマといえそうですが、辛みがなく、簡単に楽しめ、保存も利きます。かなり長期間持つそうですが、スパイス感を楽しむためには1カ月以内に飲みきるのがオススメだそう。
旅はさまざまな出会いに満ち溢れています。中でも思い出に残るのが、食にまつわるもの。台湾の漢方の問屋街、タイのウィークエンドマーケット、トルコの旧市街にあるスークなど、その土地ごとの食文化を色濃く反映した果物や薬草、スパイスの香りは、きっとオリジナリティ溢れるクラフトコーラになるはず。旅の記憶を呼び覚ますあなただけの一杯に仕上げてみませんか?
コーラ小林さん
1989年・東京生まれ。伊良(いよし)コーラ代表。和漢方職人「伊東良太郎」を祖父に持つ。北海道大学農学部、東京大学大学院生命科学研究科卒業後、大手企業に勤務しながら、大好きなコーラづくりの探求を進め、2018年7月に世界初のクラフトコーラ専門メーカー・専門店「伊良コーラ(いよしコーラ)」を立ち上げる。
伊良コーラ総本店下落合
住所 | : | 東京都新宿区高田馬場3-44-2 |
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営業日 | : | 土・日曜、祝日 |
営業時間 | : | 13:00~17:00 |
web | : | 伊良コーラ 公式サイト |
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