【恵比寿】国内ネパール料理店の草分け「クンビラ」
最初に訪れたのは、1978年に長野県・上田市で創業し、東京・広尾への2号店出店を経て、1994年に現在の恵比寿に移転した「クンビラ」。日本におけるネパリレストランの草分けとして知られる名店で、外観からしてエキゾチックな雰囲気が漂います。
地下1階の地上6階建てという設えも特徴で、この空間は登頂をイメージしたもの。というのも、ネパールといえば世界最高峰のエベレストを盟主とするヒマラヤ山脈を望む国であり、その世界観を表現しているのです。
各階のダイニングを現地の村々に見立て、5階は山頂手前にあるベースキャンプのフロア。併設されたテラスにはバーベキューの設備が用意され、その料理を車座になって味わえる、座敷の空間になっています。
そして、山頂をイメージした最上階は予約専用の個室。中央には円卓が用意され、壁には店名ともなっているクンビラ神を祀った祭壇や、曼陀羅をモチーフとした絵などが飾られています。なお「クンビラ」というのはヒマラヤ山脈を形成する山のひとつであり、また、日本の金比羅様はクンビラ神の分身ともいわれています。
その他のフロアにも随所に現地の調度品やレリーフなどが飾られ、非日常感は満点。まるで旅をしているかのような感覚に浸れることでしょう。
そして、さらに気持ちを盛り上げてくれるのがご馳走の数々。ネパールは海抜の高低差が大きいため、地域によって食文化は多様であるものの、宗教的な関係でベジタリアンが多く、肉はチキンが中心です。
また、周辺国同様にスパイスを多用しますが、辛さは控えめです。例えばインドでは「ギー」というバターオイルが主要な食用油ですが、ネパールでは植物性の油を使うため、同じようなカレーでも比較的あっさり。定番の家庭料理といえば「ダル(豆)バート(米飯)」という定食で、パン類よりも米を主食としている点も特徴です。
そのうえで同店がモットーに掲げているのが、体にやさしい料理。無添加の食材と自家製にこだわった味付けで、ヘルシーなメニューを提供しています。
代表的な一皿が、「モモコ」というネパール式の小籠包。もっちりとした自家製生地の中にスパイスで炒めた豚と鶏の合挽き肉が入っていて、何も付けずに食べてもジューシーで絶品です。お好みで、トマトとヨーグルトにスパイスをブレンドしたカレー風味のソースを付けて味わいましょう。
ほかにも数多くのネパール料理があるなか、同店名物として親しまれているのが「ヒマラヤ鍋」です。こちらは、現地の伝統的な丸鶏の煮込み料理を独自アレンジしたオリジナルの鍋。天然のウコンと、香り高くコク深いヒマラヤ岩塩で丸鶏を約2日間煮込み、季節野菜とともに盛り付け客席で仕上げていきます。
この日は豆苗、キャベツ、かぼちゃ、ほうれん草、ニラ、トマト、ひらたけ、玉ネギなどが盛りだくさん。マロニーのような見た目の、「フィン」という片栗粉で作られた麺も入っているほか、シメは雑炊で楽しむこともできます。丸鶏の骨などは、お店のスタッフさんが取り分けてくれるのもうれしいポイント。
ベースはウコンに塩とシンプルながら、あしらわれる薬膳と食材のうまみによって、食べてみると味は実にふくよか。アジュワンシードをはじめとする数種のハーブとスパイスによる魅惑的な香り、ニンニクと生姜を混ぜたバターや丸鶏のコラーゲンによるまろやかなテクスチャーは、虜になる人が多いというのもうなずけるおいしさです。小ネギ、パクチー、ヒマラヤ岩塩、高山チリソースをお好みでトッピングして楽しみましょう。
料理だけでなくお店の雰囲気でも現地のカルチャーを感じられるクンビラで、イマジネーショントリップを楽しんではいかがでしょう。
クンビラ
住所 | : | 東京都渋谷区恵比寿南1-9-11 |
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電話 | : | 03-3719-6115 |
営業時間 | : | ランチ11:30~(L.O. 14:30)、ディナー17:00~(L.O. 22:30)、土日祝ランチ11:30~(L.O. 14:30)、ティータイム15:00~17:00、ディナー17:00~(L.O. 22:30) ※2021年3月現在、時短営業中。詳しくは店舗へお問い合わせください。 |
定休⽇ | : | 年末年始 |
web | : | http://www.khumbila.com/ |
【池袋】ベトナム屈指の人気店唯一の支店「Pho Thin TOKYO」
もう1軒は、ベトナム料理を代表するフォーの専門店を紹介します。フォーは日本人にとってもおなじみですが、ベトナムでも国民食のひとつ。
その発祥はハノイなどの北部だといわれ専門店も数多く点在するなか、現地屈指の行列店として世界的に有名なレストランが「フォー ティン」です。そして、その名店に唯一のれん分けを許されたのが、日本にある「Pho Thin TOKYO(フォー ティン トーキョー)」。
出店の背景には「Pho Thin TOKYO」店主の情熱がありました。出張でハノイを訪れた際に食べた「フォー ティン」の味に感動。何度も通い詰めた末、創業者のティンさんに真剣なプレゼンを試みて交渉に成功したのです。
ベトナム国内はもちろん、さまざまな国からの出店オファーを断ってきた門外不出の味。それが日本へ渡ることとなり、2019年3月に池袋への出店が実現しました。ハノイでしか食べられなかった味を、東京でも味わうことができるのです。
「Pho Thin TOKYO」はサンシャインシティ周辺の、地下1階にあります。階段下の券売機でチケットを購入すれば、その先は小洒落たダイニング。ナチュラルウッドとミントグリーンのインテリアを暖色の明かりが照らす、居心地のいい空間となっています。
麺メニューは現地と同様、牛肉のフォーのみ。日本でフォーといえば鶏ベースのあっさりとした「フォー ガー」ですが、どちらかといえば現地の主流は牛肉の「フォー ボー」。この牛肉のフォーに絞って追求したおいしさこそ、「フォー ティン」が唯一無二と言われる理由でもあるのです。
味を決めるのは、牛骨や豚骨などさまざまな素材を8時間以上煮込むスープ。そこに、ベトナムの魚醤「ヌクマム」と塩、砂糖をブレンドしたタレを合わせます。さらに、ラードとニンニクで炒めた牛モモ肉と、切り方を変えて異なる食感を演出した大量のネギがどっさり。これこそが、世界中にファンがいる「フォー ティン」の一杯です。
丼を覆うように盛り付けられる具材は、麺やスープが見えなくなるほど。おそらく、初めてこのフォーを食べる人はまずルックスから驚かされることでしょう。そしてひと口ほおばれば、これまでのフォーの概念が変わるほど衝撃的なおいしさに出会えるはず。
どっしりとした力強さがありながら、決して牛や豚の骨だけではないまろやかで円熟感のあるスープの味。やわらかすぎず、硬すぎない絶妙食感の牛モモ肉。シャキシャキと、爽やかなアクセントを醸し出すネギ。チュルンッとしたタッチの米麺も調和して、止まらないおいしさです。
付属トッピングのライムを搾ったり、卓上にある秘伝のチリソースを入れたり、味の変化を楽しめるのも本家「フォー ティン」ゆずり。パクチーは抜きにできるだけでなく、逆に追加料金でパクチーやネギ、牛肉を増量することもできます。生卵トッピングもできるので、好みの一杯を楽しみましょう。
本場の味とは、まさにこのこと。「Pho Thin TOKYO」でなら、ひと口食べた瞬間にハノイにいるような気分になれるはずです。
最新情報として、「Pho Thin TOKYO」は国内2号店となる「Pho Thin TOKYO 新宿店」が3月14日にオープンします。世界中のガイドブックで紹介されるおいしさは、もちろん本国とも池袋とも同様。新店にも足を運んでみては。
Pho Thin TOKYO(フォー ティン トーキョー)
住所 | : | 東京都豊島区東池袋1-12-14 ハヤカワビル B1 |
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電話 | : | 03-5927-1115 |
営業時間 | : | 11:00〜21:00 |
web | : | https://phothin.co.jp/ |
ネパールにベトナムと、東南アジアのグルメを味わえる2軒を紹介しました。どちらも欧米に比べれば距離が近く、それでいて独自のおいしさが満載の楽園。渡航できるようになったら、真っ先に旅したい国になるはずです。それまでは味覚や視覚、嗅覚で海外旅行を楽しんではいかがでしょう。
文・写真:中山秀明
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