そこで本記事では、小松ならではの伝統産業を実際に体験できるスポットをご紹介。観光地をめぐるだけではない、実際に見て触れて生み出す楽しさがここに。石川県の郷土文化を満喫できる体験へご案内します。
加賀藩の興業政策が、今もなお続く産業を生み出した
小松の今をひもとくルーツは江戸時代初期にさかのぼります。石川県の礎を築いた、“加賀百万石”で知られる前田家の三代目当主、かつ加賀藩の二代目藩主を務めた前田利常が、産業の保護や育成のために殖産興業政策を実施。やがて小松城下に優れた職人が集まり、ものづくりをなりわいとして街が発展していったのです。
卓越したクラフトマンシップは脈々と受け継がれ、日本を代表する企業を数多く生み出しました。たとえば都市名を冠した建設機械メーカー「コマツ」は同業界で世界第2位。その協力企業によって機械産業を中心とした産業クラスターが形成されています。
また、加賀友禅や加賀絹で知られるように、伝統を受け継ぐ繊維産業についても高機能繊維など高い技術力を有する企業が多くあり、さらに九谷焼や小松瓦などの伝統産業も盛んになりました。
小松では、今もなおその伝統が守られ続けています。さらに、その伝統を知り、体験する場があることで、訪れる人々を魅了しているのです。
ここからは、そんな同エリアでぜひ訪れたい体験スポットを厳選して紹介。世界でひとつだけのオリジナルの器を作れたり、この土地に根付く大衆文化を嗜んだり。小松ならではの新鮮な体験に出合えるでしょう。
「九谷セラミック・ラボラトリー」で九谷焼の器づくり&絵付け体験
江戸時代前期、現在の石川県加賀市にあった江沼郡九谷村で始まった九谷焼。日本を代表する陶磁器であり、通称「九谷五彩」と呼ばれる色鮮やかな上絵付けが特徴です。一方、開窯からわずか100年足らずで突如廃窯し、その後約100年の空白期間を経て復興したというミステリアスな歴史も人気のひとつ。
この“再興九谷”の地である小松市若杉で、受け継がれた“美”と“技”を体感し、“石文化“の可能性を探求する工房として2019年に開業した複合型文化施設が「九谷セラミック・ラボラトリー」です。
世界的建築家の隈研吾氏が設計した建物は、周囲の田園風景との調和が美しい空間。小松は九谷焼に欠かせない「花坂陶石」の産地であり、施設内に設けられた製土工場では、全国でも希少な陶石からの土作りが見学できます。
ほかにギャラリー、レンタル創作工房、体験工房などがあり、ギャラリーでは九谷焼の製造工程を学べる常設展示を行ったり、新進気鋭の作家たちによる作品を期間限定で展示したりしています。若手作家の育成を目的に作られたレンタル創作工房では、新しい九谷焼の文化が紡がれていく様子が見学できます。
そして、ひとりから利用可能な体験工房では、ろくろ体験や手びねりでの成形体験、絵付け体験など多彩なメニューを一部予約制で用意。専門のスタッフによる指導もあるので、だれでも安心して参加し、九谷焼の魅力を深掘りできます。
九谷セラミック・ラボラトリー
住所 | : | 石川県小松市若杉町ア91 |
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電話 | : | 0761-48-4235 |
営業時間 | : | 10:00~17:00(最終入館16:30) |
定休⽇ | : | 水曜、年末年始 |
web | : | https://cerabo-kutani.com/ |
「金箔の館」で金箔はり体験
金箔といえば金沢が有名ですが、そのルーツも加賀藩にあり。初めて作られたのは、加賀藩藩祖の前田利家が、豊臣秀吉より朝鮮の役の命を受けた際だといわれています。その後加賀で金箔づくりが盛んになった理由は、静電気を起こしやすく乾燥を嫌う金箔の製造に、暖流の影響や多雨で湿度の高い石川県の気候が適していたから。
そして前述した通り、ものづくりへの高い志と技術をもつ職人が多かった点も見逃せません。また、漆塗りで有名な輪島や仏壇で知られる七尾など、金箔を大量に消費する産業が近くで栄えていたことも、加賀が金箔のまちになった理由です。
そんな金箔文化を楽しめる施設が、「加賀 伝統工芸村 ゆのくにの森」内にある「金箔の館」。施設は13万坪もの敷地に広がる伝統工芸のテーマパークとなっていて、北陸最古の温泉郷といわれる粟津温泉エリアにあります。
「金箔の館」は建物からして豪華絢爛。なかでも「黄金の間」はきらびやかで、天井・壁・襖・欄間が純金箔、畳は金糸で装飾され部屋全体が輝いています。ほかにも、金箔をあしらったグルメやコスメ、お土産などのアイテムも販売され、まさに金箔尽くし。
ここで高い人気を誇るのが、金箔はり体験。小物をトレーお盆、手鏡などから選び、金箔面に竹串で手書きしたり、金箔を型取って貼り付けたりする作業です。
1万分の1mmという薄い金箔をのせる細かい作業ですが、美に集中する時間はほかにはないクリエイティブな体験。旅の思い出を残す記念品にも最適です。また「加賀 伝統工芸村 ゆのくにの森」には全11の館に50種以上の伝統工芸体験が用意されているので、あわせて覗いてみては。
加賀 伝統工芸村 ゆのくにの森
住所 | : | 石川県小松市粟津温泉ナ-3-3 |
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電話 | : | 0761-65-3456 |
営業時間 | : | 9:00~16:30 |
定休⽇ | : | 木曜(その他臨時休業有) |
web | : | https://www.yunokuni.jp/mori/ |
「こまつ曳山交流館みよっさ」で歌舞伎役者なりきり体験
小松の伝統的な町衆文化を語るうえで欠かせないのが、「曳山(ひきやま)」です。
前田利常公が隠居城として小松に住み発展した小松のまちでは、「絹織物」が特に盛んに。その商人たちの心意気によって、明和3年(1766)に小松の春季祭礼「お旅まつり」で曳山が出されるようになり、「曳山子供歌舞伎」が始まりました。利常公入城から約100年後のことです。
「曳山子供歌舞伎」は主に女子児童によって歌舞伎が演じられることも全国的に珍しい特徴です。その稽古は4月ごろから始まり、子どもの役者は厳しい指導を受けながら、わずか2カ月余りで難しいセリフや振り付けを習得。本番では大人顔負けの名演技で観客を沸かせます。
お旅まつりで演じられる「曳山子供歌舞伎」は、近江長浜、武蔵秩父とともに全国でも有数の子供歌舞伎として有名。日本三大子供歌舞伎のひとつといわれています。
この町衆文化の魅力に触れられる施設が、JR小松駅から徒歩5分ほどの場所にある「こまつ曳山交流館みよっさ」。「みよっさ」とは、「~してみようよ」と呼び掛けのときに使う小松の方言であり、また展示されている曳山や伝統芸能の発表を「みよう」というふたつの意味が込められています。
小松の重厚な蔵をイメージした館内には、絢爛豪華な曳山2基を展示。そのほか「曳山子供歌舞伎」や「お旅まつり」に関する資料や映像を取りそろえたライブラリーコーナー、曳山資料の展示などが並びます。
そしてぜひ利用したいのが、歌舞伎風の衣裳やメイク、和楽器演奏などのさまざまな体験メニュー。訪れる際は事前に確認と予約をして、小松の歌舞伎役者になりきりましょう。
こまつ曳山交流館みよっさ
住所 | : | 石川県小松市八日市町72-3 |
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電話 | : | 0761-23-3413 |
営業時間 | : | 10:00~17:00 |
入館料 | : | 無料 |
定休⽇ | : | 12月〜3月の水曜(祝日の場合は翌日)、12月30日〜1月1日 |
web | : | https://www.city.komatsu.lg.jp/soshiki/miyossa/index.html |
体験が旅を思い出深くしてくれる
訪れた土地の歴史や文化を体験することで、知らない魅力に一歩近づき、旅の記憶も思い出深いものになるはず。ぜひ思いおもいの体験で、石川の郷土文化を深掘りする旅を楽しんでください。
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