2003〜2004年に世界一周を旅し、2017年にも半年間で19カ国を訪れるなど、旅人としても知られるナオト・インティライミさん。旅にまつわる楽曲も多数発表されています。ナオトさんにとっての旅の魅力や、旅を“濃い“ものにする秘訣について、たくさん語っていただきました。
文:安楽由紀子
画像1: 世界一周の経験も。ナオト・インティライミはなぜ旅に出るのか

初めての一人旅で旅人マインドが植え付けられた

OnTrip JAL編集部(以下JAL):これまでの旅で印象に残っている旅先と、そこでのエピソードを教えてください。

ナオト・インティライミ(以下ナオト):印象深いのは、20歳のときに一人で行ったタイですね。これが初めてのバックパッカーとしての旅でした。旅人マインドの芽生えですよね。その前に、サッカーの仲間と3人でアメリカに行ったのが初めての海外だったのですが、「俺あっち行きたい、こっち行きたい」ってなるのはめちゃめちゃ仲がよくてもやっぱり気を使うな、今度は一人で行ってみようと思ったんです。お金持ちの友だちは小学校のころからハワイとかに行っていたけど、僕は19、20歳で初めてパスポートを持ったので、そういう意味では遅咲きパッカーなのかなと思います。

タイには1カ月弱いました。自由に行きたいところに行き、滞在したい街に好きなだけ滞在し、なんとなく立てていた計画もその日の気分で全部ゼロにして違う場所に行ったり、現地の人に歌を教えてもらって盛り上がったり、一緒にサッカーをして仲良くなってそのまま泊めてもらったり。何もかもが自由なことに衝撃を受けました。旅に出るまでは不安が多かったけれど、行ってみたら世界がずんずん広がっていく。あのときの快感は忘れられない。旅人のマインドが植え付けられた経験でした。

JAL:初めての一人旅でいきなり長期間、しかも現地の人と仲良くなれるとはさすがですね。

ナオト:サッカーと音楽をやっていたことがとってもラッキーだったと思います。世界共通のものだから、コミュニケーションツールとして両方ともものすごく大きい。

僕の人生を変えるものは人との出会い

画像1: 僕の人生を変えるものは人との出会い

JAL:旅ではいつも予定をきっちり立てずに自由に過ごされるんでしょうか。

ナオト:そうですね。めちゃくちゃ自由です。日本の社会では直感で生きていたら人に迷惑をかけることもあるので、なかなかそれだけでは生きられないけれど、旅では誰にも制限されない。朝起きて「よし北に行こう」「バスに40時間乗って違う街に行こう」と、直感で決めています。

JAL:観光名所を回りたいとはあまり思わないんですか?

ナオト:もちろん観光地には観光地であるがゆえの素晴らしさがあるので、有名なところは押さえたいと思いますけど、ただ、それだけに頼らない。たとえば、24歳のときに初めて一人で世界一周したときは1年半かけて28カ国を回ったんですが、28冊もガイドブックを持っていけないし、当時はネットもまだそんなに普及していなかったので、現地の人に情報を聞くところから始まりました。そこから楽しい。実際、いちばん有益で、深くて、濃い、新しい情報は現地の人が持っているということは間違いない。どんなガイドブックもサイトも現地の人の情報にはかなわない、というスタンスです。

画像2: 僕の人生を変えるものは人との出会い

JAL:現地の人や現地で出会った旅人とすぐ仲良くなれることが、ナオトさんの強みですね。

ナオト:一人旅は、自分からアクションを起こさないと何も起こらない。寂しい夜を過ごすのも、現地の家庭のパーティーに誘われてにぎやかな文化に触れながら‟濃い”夜を過ごすのも完全に自分次第。つまらない旅になったら自分のせい、おもしろい旅になったら自分のおかげという緊張感があるから、たまに恥ずかしいこともあるけど、でもやっぱり声をかけていこうと思う。

JAL:旅から与えられるのを待っているだけでなく、自分から得ようとすることが大事なんですね。

ナオト:もちろん、ただ行くだけでもそれなりに楽しいですよ。異国でも国内でも旅は非日常の世界が待っているので、そこに行くだけで楽しい。ただ、プラスアルファの跳ね方は、現地の人や旅人と関わったときに大きくなる。極端な言い方かもしれないけど、遺跡は僕の人生を変えてくれないんです。遺跡を見て言葉にならないほどの感動はするけど、人生を左右するような心の革命を起こしてくれるのは、僕にとってはやはり旅で出会う“人”だと思っています。

旅を通して知った、共に過ごす瞬間の大切さ

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JAL:数々の旅が音楽活動にもインスピレーションを与えていると思いますが、旅から影響を受けた作品や、その作品にまつわるエピソードを教えてください。

ナオト:それは山ほどありますね。具体的な旅ソングもあれば、恋愛ソングや人生ソングではあるけど旅で得た教訓や人生観が織り込まれているという曲も多い。

たとえば「Catch the moment」(2013年のアルバム『Nice catch the moment!』収録)という曲は、「シェイシェイ カムサハムニダ」から始まって世界のさまざまな言語の「ありがとう」を並べて、サビで「Shalalalala~♪ Hello! Nice to meet you. Good-bye. See you again.」と歌うのですが、これはまさに僕が旅で経験した一瞬の出会いと別れを描いています。

画像: 旅を通して知った、共に過ごす瞬間の大切さ

ナオト:外国に行くと街でただすれ違っただけでも、パッと目が合って「Hey, what's up?」と言葉を交わしたり、言葉を交わさなくても目で挨拶したりする。ほんの2、3秒のことですが、そこに出会いと別れが凝縮されている。ほかにも、アフリカの奥地の村で子どもたちと仲良くなって数時間一緒に過ごしただけでも情がわいて、別れるときはすごく寂しい。「またね」と言うけれども、もう二度と会えないだろうということを僕は知っている。

こういった体験を込めたのが、「今のキミを忘れない」(2011年発表のシングル)という曲。「今キミを 今のキミを いつまでも忘れないから」という歌詞があるので恋愛ソングや卒業ソングとして捉えられていますが、「今“の”キミ」というところに、共に過ごしている瞬間を大切にしたいという、旅で感じた思いを込めています。

旅だけでなく日常においても、本当に近い人ですら「またね」の「また」が来ない可能性がある、もう二度と会えなくなる可能性をお互い秘めている。その人と会うのは最後だと思ったら、一緒にいる時間はどれだけ貴重か。その場を楽しみ感謝すること、その人をリスペクトすることを忘れずに接したい。伝えたい思いはいつでも伝えておきたいと思っています。

長崎で見ず知らずの高校生と一緒にサッカー

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JAL:2018年の47都道府県ツアー、2019年の全国ホールツアーなど、国内でもたくさんの場所を訪れていらっしゃいます。印象的だった場所とエピソードはありますか。

ナオト:僕はライブ前にふらっと街をランニングしたり公園でサッカーしたりするんですが、数年前、長崎の港に近い芝生の広場で、高校生たちの仲間に入れてもらって30分くらい一緒にサッカーしたんです。

そのとき「ナオト・インティライミさんに似てるって言われませんか」と言われて、「よく言われるんだけど、その人、誰?芸人さんなの?」なんて話をしたんです。そうこうしているうちに、ライブ30分前になって……かなりギリギリで、「ありがとう、またやろうね」とその場を去ろうとしたら、大きな声で「あのーっ」と呼び止められたんですよ。「今日、お姉ちゃんライブに行くって言ってましたー」って。恥ずかしかったですね。高校生のほうが大人だったという(笑)。

そういうのも旅なんです、僕にとっては。日常みたいなことにも実は旅がある。その人がどういうスタンスで街を歩き、知らない土地や知らない人とどう関わるか。それが旅なんだと思います。

JAL:ナオトさんの旅には、毎回おもしろいエピソードがありそうですね。

ナオト:先ほども言ったように、僕にとって人生を変えるものは場所やものではなく、人との関わりで生まれたもの。そういうのが色濃く残るんだと思います。このエピソードも一生忘れないでしょうね。

昔から変わらない旅の必需品は……

JAL:旅に行くときに必ず持っていくものはありますか。

ナオト:旅を重ねるうちに無駄なものがだいぶ削ぎ落とされていきましたし、時代とともに変わっているところもあります。たとえば昔だったらラジオを必ず持っていっていました。音楽や音は、今、自分がどこにいるのか教えてくれる大切な情報源。ジャジーな音楽が聞こえてきたらニューオリンズにいる、早朝コーランが聞こえたらアラブにいると実感する。だけど今はラジオもパソコンやスマホで聞けるようになったので、持っていかなくなりました。

そんな進歩があってもいまだに持っていくものは、レジャーシート。バックパックって奥のほうに入れたものはなかなか取れない。だから、めんどくさがらずに宿についたら一回全部出すんです。そのときにレジャーシートがあると荷物が汚れずに広げられるから便利。ニッチな使い道ですけど。

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JAL:ギターも必ず持っていきますか。

ナオト:持っていきますね、やっぱり。ポーンって、メロディやアレンジ、歌詞のアイデアが出たときに、コードを当てたい。頭で鳴っているものをすぐに具現化したい。そのために持っていくことが多いんですが、持っているといろんなところで「弾いてくれよ」と声をかけられるので、仲良くなるきっかけグッズとしての役割も大きいんです。

JAL:頭に浮かんだメロディは録音するのでしょうか。

ナオト:すぐに録音します。これもレコーダーをずっと持ち続けてたけど、3年前に手にしたスマートフォンは録音もできる。どんどん荷物が減っていきますね。

中東の国を歩いて旅してわかったこと

JAL:ナオトさんにとっての「旅」の魅力とは?

ナオト:2つあります。「ステレオタイプをぶっ壊せ」と「心の革命が起きやすい機会」。

「ステレオタイプをぶっ壊せ」というのは、旅によって固定観念がどんどん塗り替えられていく経験がいくつもあったからです。僕にとっては中東の国々が最たるもので、トルコ、シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル、エジプトなどを実際に陸路で歩いてみて、それまで持っていたイメージが大きく変わりました。日本ではテロなんかの情報が多いからそういうイメージを持っている人もいるかもしれないけど、実際には心優しかったり陽気だったりする人がたくさんいる。でも、その実情に触れずにいる人が多いと思うと、ステレオタイプを疑い、自分からアクションを起こして質の高い情報を受け取りにいくことの大切さを感じます。

「心の革命が起きやすい機会」について。ふだん人が「変わろう」と思ったり「挑戦しよう」と思ったりしても、なかなか腰が重いものだと思うんです。年を重ねるとなおさら。僕もそうでした。
たとえば、5、6年前、エチオピアに行ったのですが、それまで僕は携帯電話にものすごい依存して生きていた。でも、現地の携帯電話を持たない人々と一緒に生活することで、そんなものがなくても人生満足度はこんなに高いと知り、いかに自分が下を向いて生きてきたかを思い知らされました。情報に支配されるのではなく、自分からコントロールして扱うことが大切。あの旅がなければそのことに気づかなかったかもしれない。それが「心の革命が起きる」ということです。

画像: 中東の国を歩いて旅してわかったこと

JAL:ネットに情報があふれている時代ですが、やはり自分で体験するとまったく違うのだと、今のお話を聞いて思いました。

ナオト:いろんなことがオンライン化されて便利になってきたけど、やっぱり旅の直接的なふれあい、ぶつかりあいはさすがにオンライン化できないなと、僕も今、話していて思いました。

遠くに行けない間も、楽しみをつないでいく

JAL:2020年はデビュー10周年のアニバーサリーイヤーですが、新型コロナウイルスの影響で10周年のさまざまな企画を「まるっと」2021年に延期することを発表されました。そんな中でも、オンラインでのライブを生配信するなど、ファンの気持ちに寄り添った活動をされています。今の心境やこれからの活動への気持ちをお聞かせください。

ナオト:ライブができなくなり、最初はやはり絶望的な思いを抱く日々でした。SNSに強いアーティストの方がいち早くどんどん発信していくなかで、自分は直接的コミュニケーションで切り開いてきた、かなりのアナログサイドだったので、すごく焦ったんです。今、自分にはできることがないような、取り残されたような気持ちでしたね。

ただその焦りはどこからくるのかと考えたときに、他人と比べているから焦ってるだけで、比べなければもっとじっくりでいいということに気づいた。歌詞に「誰かと比べる必要なんてない キミはキミのままでいいんだよ」なんて偉そうに書いたのに、「自分が比べてる」ということに気づいたら、自分の持ち味や役割をまっとうしていけばいいと思い始めることができて、とりあえずやれることからやっていこうというマインドになりました。
そこでまずはファンクラブに対して生配信、またTikTokを始めて毎日のように投稿して、今ではすっかりティックトッカーです(笑)。

ナオト:毎年ライブを行っている7月10日(ナオトの日)には試行錯誤を経て有料ライブを生配信しました。せっかく生配信なんだから生配信でしかできないことをやらないと意味がないと思ったことが功を奏したというか、こうでもなかったら絶対にやってないような、考えつきもしないようなライブになりました。

業界全体が試行錯誤している状態だと思いますが、僕は今回の生配信で“従来のライブの代わり”ではない、新しい形でのコンテンツをつくれたという感覚があります。初めてのことだらけで僕もスタッフもたいへんでしたけど、コロナ禍でこの形を提示できたことは嬉しいですね。

画像: 遠くに行けない間も、楽しみをつないでいく

JAL:‪10月7日‬にはEP「オモワクドオリ」が発売されますね。‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬

ナオト:初めてのEPです。新曲が6曲収録されておりバラエティ豊か。「ナオト・インティライミと言えばこれだよね」と思っていただけるインティライミ節もあれば、LAでクリエイターと一緒につくった今までにない“新ティライミ”もいる。キッズも一緒に歌える歌もあります。かつ「オモワクドオリ」というリード曲は、今のナオト・インティライミの音はこれだぞと提示できている曲になっています。「いつかきっと」で止まっているインティライミファンにもぜひ聞いてほしいですね(笑)。

JAL:最後に読者に向けて、メッセージをお願いいたします。

ナオト:海外旅行が好きな方にとっては今のコロナ禍は本当に苦境で、僕も含めて歯がゆい思いをしていると思います。でもそれを逆手に取って国内を旅したり、あるいはもっと狭い範囲でも、近所でも非日常的なものを感じたりすることも旅と呼べると思うので、そういったところに自ら身を置きに行くことも大事。そういう感覚って、こうでもなければきっと持てなかったと思う。そういったことで、旅の楽しみをつないでいきましょう!‬

画像2: 世界一周の経験も。ナオト・インティライミはなぜ旅に出るのか

ナオト・インティライミ

8月15日三重県生まれ、千葉県育ち。世界66カ国を一人で渡り歩き、各地でLIVEを行い、世界の音楽と文化を体感。「インティ ライミ」とは南米インカの言葉で『太陽の祭り』を意味する。
2010年にメジャーデビュー。2012年にはNHK紅白歌合戦に初出場。2018年末には約3年ぶりのドーム公演もナゴヤドームにて開催。2019年9月からは全国25ヵ所31公演のホールツアーを開催し大成功のうちに収める。同年9月には世界三大レーベルの「ユニバーサルミュージック ラテン」より世界リリースを果たした。2020年1月に約3年ぶりに役者活動としてTBSドラマ「病室で念仏を唱えないでください」に出演を果たした。
2020年10月には初のEP「オモワクドオリ」が発売される。

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