※撮影時のみマスクを外しています
南丹には、心と身体に効く「自然の薬」が溢れている
南丹市は、「芦生の森」の原生林や、かやぶきの里、日吉ダムなど美しい日本の原風景が残る地域。森林空間を観光や教育など多目的に活用する「森林サービス産業」という観点からも期待が寄せられています。
現在、京都府と南丹市がタッグを組み、官民連携で企業向けのウェルネスツアーを企画開発中。「ワーケーション」にも似ていますが、他の地域にはない、このエリアならではの特色と言えるテーマがあります。それが「養生」、つまり季節や風土に即した生活を送り心身のバランスを整えることです。
「入り口」と「出口」を明確にし、効果を実感できるツアーに
南丹市日吉町にある明治国際医療大学の伊藤和憲先生がアドバイスや監修を行い、「地の旬のものをいただく」「寒い時期に薪割りで身体を動かす」などそれぞれ「養生」の考えを取り入れたコンテンツを用意。その中から企業がツアーを組み立て、福利厚生や研修の一環として社員に参加してもらい、社内での団結力や生産性向上につなげるというのが最終目標です。
ツアーでは最初に伊藤先生によるオリエンテーションを行い、ヘルスケアアプリを活用して心身の状態を測定、理想とする目標点を設定します。ツアー最後にも心身状態をチェックし、足りない部分があれば鍼灸で施術するなどのケアをします。
企画に携わった京都府南丹市・農林商工部の國府幸明さんは、入り口と出口を明確にすることが重要だと語ります。「体験前後の状態を数値化することで効果を見るのが大事。また、1回で終わりではなく、社員の健康増進をサポートするパートナーとして企業と連携できれば」と継続的な活動を目指します。
自分たちで火を熾し、わんぱくバーベキューランチ
モニターツアーに参加したJALふるさとアンバサダーは、京都府担当の原田さん、香川県担当の坂田さん、大阪府担当の竹林さんの3名で、偶然にも同期入社だそう。
1日目に訪れたのは、丹波高原の天若湖畔にありキャンプ場やバーベキュー場、ドッグランなどを備えたアウトドア施設「府民の森 ひよし」です。
「RYO CAMP SERVICE」所属の宇野貴子さんの手ほどきで、バーベキューをします。地元産の木を使って火を熾すところから始め、焚き火で塊肉を焼いたり、ダッチオーブンで煮込み料理を作ったり。「炭は火持ちが断然違うので高くても国産を」など宇野さんの豆知識を聞きながら、3人は持ち前のチームワークを発揮してテキパキと共同作業。
直径25cmほどの巨大バーガーや薪焼きローストビーフなどがテーブルに並ぶと「海外のホームパーティーみたい」と大はしゃぎ。自然と話も弾みます。
直火でのコーヒー焙煎。薪割りでストレス解消!
食後のコーヒー焙煎体験では、坂田さんがハンドロースターを揺すり続けるもなかなか豆が色付かず、薪火でワイルドに焙煎してようやく完成。手回しミルで挽いた豆をドリップして味わいながら、「ええなあ、優雅」「何日でも滞在できそう」「大人ならではのわんぱくな体験だね」と、3名ともに非日常を楽しんでいる様子でした。
全員が楽しみにしていたという薪割りでは、斧を使わず木を割ることのできる薪割り機を使用しました。力いっぱいハンマーを振り下ろすと、スパーンと薪が割れて気分爽快。リフレッシュにもつながったようです。
地のものをいただき、里山の命の恵みに感謝
夕食は、宿泊場所でもある「ひよしフォレストリゾート 山の家」でのぼたん鍋。この周辺の猪は山の幸に恵まれているため、臭みがなく脂の甘い肉質に育つのだとか。
3人とも「もう満腹」と言いつつ、地元の生畑(きはた)産コシヒカリの締めご飯までしっかりいただいていました。自然の恵みでお腹が満たされて、心までホカホカです。
焚き火にあたりながら星空観察。流れ星も発見!
夕食の後は、宿の前にある広場で焚き火&星空観察。伊藤先生によると、炎の揺れる様子を見るだけで「1/fゆらぎ効果」と言われるリラックス効果があるのだそう。
この日は月明かりが眩しく星はぽつぽつと光る程度でしたが、竹林さんは流れ星を発見! 「願い事をする間もなく消えちゃいました」と残念そうでしたが、見ることができただけでもラッキーです。
六角形の可愛いコテージで夜も話がつきない
宿泊するプレミアムコテージはメインの施設から少し離れた位置にあり、目の前には小川が流れ、聴こえてくるのは自然の音だけです。「コテージに泊まるのって久しぶり」「朝日が見られそうだね」とハンモックやソファでくつろぎながらの女子会となりました。
同じ部屋で過ごしていると、自然と仕事の時とは違う話題に。お互いのことをより深く知る機会になったようです。
自然の知恵は仕事にも役立つ。森の中でのウォーキング
翌朝は「体験の森散策路」の約3kmの林道ウォーキングです。案内役は、芦生の森ネイチャーガイドも務める前田敦子さん。落ち葉の絨毯をザクザクと進み、コケや食べられるキノコを観察しながら奥へ。
こすると柑橘系の香りがするクロモジの葉に、竹林さんは「ファーストクラスでお客さまにお出しするクロモジ楊枝の木ってこんな風に生えているんですね」と感心。
ゴール地点では、ご褒美のお昼寝タイムを。斜面にシートを敷いて寝転び、川のせせらぎを子守歌に、3人ともすぐに寝入ってしまいました。
地元の木を使った箸作りに、時間を忘れて没頭
日吉ダム近くの「アマンズガーデン」でランチタイム。新鮮野菜たっぷりのサラダやウニクリームのグラタンなどを満喫した後は、箸作り体験です。
講師は、伝統的な指物の技法により木の家具や雑貨を製作する「大澤木工房」の大澤知倫さん。なんと今回取り組むのは木を削るところから磨きまでの本気の箸作りです。地元のトチの木を使い、木目の向きを見極めながらカンナでひたすら削ります。
職人根性(?)を見せ、難しい八角形に挑戦したのは坂田さん。趣味で柔術を習っているそうで、「スポーツと同じように、体の力を入れるポイントがわかると削るのがラク」とすぐにコツを掴んでスピーディーに削り進めていました。
集中すること約3時間。大澤さんも「売り物になりそう」と称賛するほどクオリティの高いマイ箸ができあがり、達成感のある2日目は終了しました。
豊かな山々の中にある地元の暮らしを、地上400mから
最終日は、廃校した小学校を利活用した施設「森の学舎五ヶ荘」でのドローン体験です。運営者である「UNIXIA」代表の久野光平さんと、小林亮太さんに操縦方法を教わりながら、校庭でドローンを離陸。3人とも操作の一つひとつに大騒ぎしながら、高さ400mまでの上昇に成功。
太陽の光に照らされた山や川のある街並みに、「ドローンカメラでしか見ることができない景色を自分で操縦して見られる楽しさは格別ですね」と原田さんは感動した表情。
プログラムの仕上げは、鍼灸ケアと伊藤先生のお話
美山の湯葉屋直営のカフェ「Beans cafe.miyama」で、美容に効きそうな湯葉づくしのヘルシーランチ。その後は、「MIYAMA森の湯治場」での鍼灸体験と伊藤さんの講話を受けます。
日頃パソコン作業の多い3人は肩回り中心に施術を受けスッキリ。「自分の身体の声にしっかりと耳を傾け、向き合い、個人に合った方法で整えていくことが大切です」という伊藤さんのお話に真剣な面持ちで頷いていました。
リフレッシュだけでなく、仕事に役立つ学びを得たウェルネスツアー
モニターツアーを終えた3人は同期同士ということもあり、この3日間でさらに絆が深まったようです。「客室乗務員はチーム戦。機内にとどまらず、いろいろな場面で、今回の経験が生きると思います」と原田さん。
またウォーキングが一番楽しかったという竹林さんは、「クロモジの話など、生活にもつながるような自然の知識を得られました。私は国際線の乗務がメインなので、日本の文化を知ることがお客さまとのコミュニケーションにも役立ちそうです」とのこと。
箸作りに熱中した坂田さんは、高松でも地域活性化の体験ツアーなどを企画しているそう。「香川にも優れた技術者や職人さんがいらっしゃるので、そういった方々にフォーカスを当て、今回体験したことを香川バージョンとして応用したいと思いました」と早くも次の展開を描いています。
3人とも現在は地域での活動がメインですが、南丹市での経験は、地上でも空の上でも活かせることでしょう。
このウェルネスツアーはまだ実証実験段階ですが、もうすぐ本格的に企業への提供が可能になる見込みです。また団体でなくても、複数名集まればツアー受け入れにも応じる予定。下記窓口で相談を受け付けています。
京都府・南丹市 ウェルネスツアー相談窓口
京都府政策企画部地域政策室
電話 | : | 075-414-4528 |
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京都府南丹市農林商工部商工課
電話 | : | 0771-68-1008 |
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