連載
ハワイに魅せられたライターがすすめるオアフのMUST GO!とMUST EAT!
ハワイ渡航歴100回のライターがマウイ島の楽園ラハイナを案内
文・写真:今井栄一
「ビッグアイランド」ハワイ島の西に広がるリゾート、コナ
ハワイ諸島で一番大きな島だから、通称「ビッグアイランド」。ハワイ島は、ひとつの島のなかに10の気候帯が存在するといわれる、多様性に富んだ島です。島の東の港町ヒロは、通称「1年に270日雨が降る町」。町の背後には熱帯雨林が広がり、美しい滝がいくつも流れ落ちます。そのヒロから見上げるハワイ最高峰マウナケアは、頂上付近では雪が舞い冬には積雪して白く輝きます。マウナケアとはハワイ語で「白い山」という意味。一方、島の西側のコナ(コナ・コーストとも呼ばれる)は、晴れの多いエリアで、心地いいリゾートホテルが海沿いにいくつもあります。コナは、ワイキキのようなビル群ではありませんが、世界的なホテルやラグジュアリーなリゾート、ゴルフコースが点在する、まさに「バケーションスポット」です。今回は、コナのリゾートホテルに滞在してぜひ訪れたい、オススメスポットを5つご紹介しましょう。
海辺に広がる古代ハワイの世界
Pu’uhonua O Honaunau National Historical Park(プウホヌア・オ・ホナウナウ国立歴史公園)
美しいこの場所の名前は、「プウホヌア オ ホナウナウ国立歴史公園」。ハワイ諸島にはすばらしい国立公園がいくつもあるのですが、ハワイ島サウスコナの海辺にあるこの国立公園は、アメリカの旅行ガイドブックに「ため息が出るほど美しい」と紹介されています(異議なし。その通りだと思います)。巨大なヘイアウ(古代ハワイの神殿跡)や、さまざまな歴史的遺産がこの一帯にはあります。それらをベースにした、じつに美しい海辺の歴史公園です。
そしてここは「強いマナのある場所」といわれます。「マナ(Mana)」とは、ハワイ語で、「(万物の)魂」とか「精神」「根源」「力」といった意味を内包した言葉で、ハワイ文化においてとても重要とされるもの。日本における「八百万(やおよろず)の神々」のように、ハワイには「樹木にも石にも花にも、すべてのものにマナがある」という考え方があります。
その昔この場所は、なにか罪を犯した者や問題を抱えている人が「逃げ込んできた場所=心と肉体の避難所」だったと伝えられています。ここへ来て、ある一定の時間を過ごすことで、心身ともにリセットされ、ふたたび元の世界へと戻ることができたそうです。そう、ここは古代ハワイにおける「ヒーリングプレイス」。癒しの場所でした。
いまも特別な力がこの土地にあるのかどうか、わかりません。でもぼくは、この海辺へ行くといつでも心が落ち着き、ほっとします。なるべく長くいたいなぁと必ず思います。朝早く、あるいは夕方がオススメです。園内の小さな海辺には、いつも数頭のホヌ(ウミガメ)がのんびり昼寝をしています。
「恥ずかしがり屋の山」のふもとに広がる最高級リゾート
Four Seasons Resort Hualala’i(フォーシーズンズ リゾート フアラライ)
ハワイ州で3番目に高い山、フアラライ。フアラライとはハワイ語で「恥ずかしがり屋」という意味ですが、ハワイ島のノースコナに滞在していると、そう名づけられた理由がよくわかります。というのも、ほぼ毎日、お昼前後からこの山の上空には雲が集まり出し、やがて山頂付近がすっぽり雲に覆われてしまうのです。「いつもほとんど顔を隠している恥ずかしがり屋の山」ということで、「フアラライ」と名づけられたんですね。
ハワイ島ノースコナの最高級リゾート「Four Seasons Resort Hualalai(フォー シーズンズ リゾート フアラライ)」は、その名の通り、フアラライの山のふもとにあります。この最高級リゾートのハイライトのひとつが、史上最高のゴルファーと讃えられるジャック・ニクラウスがデザインしたゴルフコースです。ゴルフをしない人でも、ぶらっと眺めに行く価値があります。ゴルフ好きな人なら、ぜひ一度滞在してプレイを楽しんでください。フアラライの山頂がくっきりと現れ、朝陽がグリーンに光と影の帯を織りなす早朝は、まさにマジックアワーです。
海へと開いた17番ホールの少し手前の場所に、古代のフィッシュポンドを再生した場所があります。フィッシュポンドとは海辺の「いけす」です。ハワイには各地に、先住民の遺跡や、聖地と呼ばれる場所、かつての生活の跡などが数多く残されています。近年ハワイでは、各地で、古代のフィッシュポンドを復活、再生させようというムーブメントが起きています。1970年代前半にハワイ全土にわき起こった「ハワイアン・ルネサンス(ハワイ先住民の文化復興運動)」が、いままた、大きなうねりとなっています。
そもそもハワイは、「2つの言語が公用語となっている」という、アメリカでも珍しい州です。そう、ハワイ語と、英語。空港など公共エリアでは、パブリックアナウンスで必ず最初にハワイ語が語られ、次に英語がアナウンスされます(それが法律で定められているのです)。公立学校では、ハワイ語はもちろん、フラやハワイ音楽など、古来の伝統文化を学ぶカリキュラムがきちんとあります。そのような「ハワイ古来の文化や伝統を大切にしよう」という人々の強い意志が、古代フィッシュポンドの復活、再生のエンジンになっているのです。
朝陽を浴びて輝く美しいフィッシュポンド、その水面に、恥ずかしがり屋の山の稜線が浮かび上がります。
コナ観光には外せない、美しいコーヒーベルト
Kona Coffee Belt and Coffee Shack(コナ コーヒー ベルトと「コーヒー シャック」)
コナの海辺から、フアラライの山の中腹へと上がると、旧道が走っています。州道180号線。のんびりドライブが楽しい田舎道です。海側の11号線ができるまでは、この180号線がコナの幹線道路でした。いまこの道は、「Kona Heritage Drive」と呼ばれ、アメリカの主要ガイドブックでは「ハワイで最も美しいドライブコースのひとつ」として紹介されています。
180号線沿いにはコーヒー農園と、農園直営のコーヒー豆販売所がいくつもあり、窓を開けて走っていると、豆をローストする独特の香りが漂ってきます。日本の「UCC」や「ドトールコーヒー」のコーヒー農園&直営所があるのもこの周辺です。ホルアロア、ケアウホウ、ホナロ、ケアラケクアといった村が続くこのあたりは「コナ コーヒー ベルト」と呼ばれています。世界のコーヒー好きな旅行者は南仏でワイナリー巡りをするように、コーヒーベルトをドライブしながら、コーヒー農園や直営所をのんびり巡るのです。
朝、この辺りは天気がいいのですが、午後になるとフアラライ山頂に雲が集まり、必ず曇ってきます(恥ずかしがり屋の山です)。そして必ずと言っていいほど夜には雨が降ります。そんなしっとりした気候が、おいしいコーヒーを育てます。ミネラルをたっぷり含んだ火山性の土と、ハワイの太陽、そしてフアラライの霧と風と雨が、おいしいコナ・コーヒーを生んでいます。
そんなコーヒーベルトにある老舗カフェ「The Coffee Shack」。外の席に座ると、「ハワイで最も美しい海」と言われるケアラケクア湾の青い海原をのぞみながらおいしいコナコーヒーを味わうことができます。もちろん、食事も美味しいです。店の前には小さなコーヒー農園が広がっていて、ちょっと歩けば間近にコーヒーの実を見ることもできます。
カフェ併設の歴史ある映画館「アロハ シアター」
Aloha Theatre(アロハ シアター)
コナはドライブが楽しいエリアです。旧道の180号線から、幹線道路の11号線を南下していくとコーヒー農園とその直営所が次々と現れ、やがて「てしま食堂」や「マナゴ ホテル」といった日系移民が営む老舗店、老舗ホテルが見えてきます。
「アロハ シアター」は、カイナリウという町にあります。映画『ホノカア・ボーイ』の舞台となったホノカアシアターと並び、いまもきちんと使われている、古き美しい映画館です。このシアターの1階はもともとカフェになっていて、おいしいコナコーヒーと朝ごはんを食べらましたが、何度かのオーナーチェンジを経て、現在は残念ながら閉店しているようです(地元の方に聞いたところ「そのうちまたオープンするわ!」とのこと)。
たとえカフェ、レストランが営業していなくとも、この美しくユニークな建物を見に行く価値はあると思いますし、実際いまも、大勢の観光客が建物の前で記念撮影を行い、instagramに掲載するための1枚(あるいは数枚)を撮影しています。
夕暮れに染まる絶景のカイルア・コナでサンセットを眺める
Kailua-Kona(カイルア・コナ)
19世紀、カイルアコナは、ハワイ王室に最も愛されていた静養地だったそうです。いまではハワイ島最大のリゾートエリアであるコナの中心となる港町。界隈には大小さまざまなホテルやリゾートがあるため、カイルアコナの町中にはたくさんのレストランや土産物屋が並びます。とはいえ、オアフ島のワイキキと比べれば、ずっと小さく、静かな港町です。マウイ島の中心地ラハイナと、どこか少しだけ雰囲気が似ているのは、どちらも島の西側にあるからかもしれません。
夕方になると、港の桟橋付近にはローカルや旅行者が三々五々集まってきて、みんなでのんびり夕陽ウォッチング。そんなのんびりした時間も素敵です。
夕暮れどきのカイルア・コナの町は、美しいオレンジ色に染まります。海沿いの小さな港町、並んだ椰子の木々、すべてが夕陽を浴びてオレンジ色に染まっていきます。
今井栄一
フリーランスライター&エディター。旅や人をテーマに国内外を旅し執筆、撮影、編集ほか、FMラジオの番組作りなども。著書に『雨と虹と、旅々ハワイ』『Hawaii Travelhints 100』『世界の美しい書店』『104歳になって、わかったこと』ほか、訳書に『ビート・ジェネレーション〜ジャック・ケルアックと歩くニューヨーク』『アレン・ギンズバーグと歩くサンフランシスコ』『1972年のザ・ローリング・ストーンズ』ほか。
※2019年7月26日に一部内容を更新しました。
ハワイ諸島最大の島「ビッグ・アイランド」へ
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