広島の世界遺産・厳島神社を抱く神の島、宮島。瀬戸内海に浮かぶ赤い鳥居に代表される寺社建築は、日本三景の一つとしても知られ、多くの観光客で賑わう人気スポットです。しかし、宮島の魅力はそれだけではありません。グルメやショッピングなど、ぜひ立ち寄りたいおすすめのスポットがたくさんあります。今回、そんな宮島を案内してくださったのは、広島在住のフリーライター・イソナガアキコさん。地元ライターだからこそ知る隠れ家カフェや、人気のお店を賢く楽しむ裏ワザをご紹介します。
写真・文:イソナガアキコ

厳島神社の御砂を混ぜて焼く「お砂焼き」に込められた想い

山根対厳堂「ギャラリー耀」

宮島御砂焼という広島の工芸品をご存知でしょうか? 宮島にある厳島神社本殿下の砂を土に練り込み制作した陶器のことで、その素朴な風合いから日常使いの器や茶器が多くつくられています。そんな御砂焼にアーティスティックな新風を吹き込んでいるのが、大正元年創業の山根対厳堂の三代目、山根興哉さんです。

画像: 山根対厳堂三代目 山根興哉さん

山根対厳堂三代目 山根興哉さん

「背景に人々の想いや歴史が感じられる作品をつくりたい」と試行錯誤を重ねた末、誕生した『消えずの火灰釉キャンドルホルダー』は、いまや広島県を代表する伝統工芸品の一つ。宮島弥山山頂にある大聖院「不消霊火堂」で1,200年以上燃え続けている「消えずの火」と、それを守る大聖院座主の言葉にインスピレーションを得てつくったといいます。

「守り続ける人々のおかげで1,200年燃え続けている消えずの火のように、どんな人も誰かに見守られているのだということを伝えたかった」と話す興哉さん。その優しく、穏やかな人柄がどの作品からも感じ取ることができます。

画像: 『消えずの火灰釉キャンドルホルダー』

『消えずの火灰釉キャンドルホルダー』

『消えずの火灰釉キャンドルホルダー』は2015年ひろしまグッドデザイン賞を受賞。JR宮島口駅から徒歩3分ほどの場所にある「ギャラリー耀(よう)」で購入できます。

山根対厳堂「ギャラリー耀」
定休日水曜日・不定休
営業時間11:00~17:30
webmiyajimayaki.jp/
住所広島県廿日市市宮島口1丁目2-6

創業明治34年。宮島名物「あなごめし」発祥の老舗を訪れる

あなごめし うえの、他人吉

美食家をうならせる駅弁として全国的にも有名な「あなごめし」。明治30年に開業した宮島口駅(旧宮島駅)の駅弁として、「あなごめし うえの」初代店主が近海でよく獲れるあなごのお弁当をつくり、販売したのがはじまりといいます。

画像: 漆椀いっぱいに穴子がしきつめられた「あなごめし」

漆椀いっぱいに穴子がしきつめられた「あなごめし」

「冷めても美味しい」と評判の駅弁を買い求めるファンも多いのですが、せっかく広島まで来たら「あなごめし うえの」の食堂で味わいたいもの。ただし、食堂の席は予約ができず、お昼時になると行列ができるため、ちょっと遅めの朝ごはんのつもりで10時の開店直後に行くことをおすすめします。比較的スムーズに入れることが多いようですよ。

「あなごめし うえの」のあなごめしの美味しさの秘訣はふっくらと焼きあがった穴子と、穴子の骨からじっくりとった出汁で炊いたご飯。あなごめしが盛られた漆椀の大きさに少し驚くかもしれませんが、食べはじめるとあまりの美味しさに箸がどんどん進んで、あれよという間に完食してしまうことでしょう。

画像: 蒸すことも煮ることもせず、じっくりとタレで焼きこむ穴子がうまさの秘訣

蒸すことも煮ることもせず、じっくりとタレで焼きこむ穴子がうまさの秘訣

また、うえののあなごめしを並ばず、ゆっくり召し上がりたいという方に耳寄りな情報があります。じつは「あなごめし うえの」の2階に姉妹店の「他人吉(たにきち)」があり、こちらは予約すれば畳の個室で食事をゆっくり楽しむことができます。

画像: 店内はすべて畳の個室(画像提供:他人吉)

店内はすべて畳の個室(画像提供:他人吉)

ただし「あなごめし うえの」のメニューとは異なり、「他人吉」で食べられるのは、酢物、穴子の白焼き、赤だし、アイスクリームがついた「他人吉穴子飯御前」(月曜と木曜の昼限定)になります。ほかにも、穴子尽くしのコース料理(金・土・日曜日の昼・夕限定)や、穴子料理によく合う地酒やワインなどのドリンク類も豊富なので、ディナーでの利用もおすすめですよ。

画像: 「他人吉穴子飯御前」(画像提供:他人吉)

「他人吉穴子飯御前」(画像提供:他人吉)

あなごめし うえの
定休日無休(水曜日は弁当の販売のみ)
営業時間弁当09:00~19:00 食堂10:00〜19:00
webwww.anagomeshi.com
住所広島県廿日市市宮島口1-5-11
他人吉
定休日火曜日、水曜日
営業時間11:00~15:00 17:00~22:00 ※夕食は金曜日、土曜日、日曜日のみ営業
webwww.anagomeshi.com
住所広島県廿日市市宮島口1-5-11

築100年以上の酒蔵を改装した、知る人ぞ知る古本カフェ

みやじまぐちの想い出shop epilo

「あなごめし うえの」と同じ敷地内にある蔵に、知る人ぞ知る古本カフェ「みやじまぐちの想い出shop epilo(エピロ)」があります。地元ではすでにファンも多いお店ですが、外に目立つ看板はなく「あなごめし うえの」を訪れたお客さんが「こんな所にお店が?」とびっくりして訪れることもしばしば。

画像: 広島で活躍する作家の作品や伝統工芸品の熊野筆が並ぶ

広島で活躍する作家の作品や伝統工芸品の熊野筆が並ぶ

2階はカフェスペースになっており、所狭しと並ぶ古本は貸出もしています。「私たちは古本図書館って呼んでいるんですよ」と教えてくれたのは店長の松島さん。ここでは古本を読みながら美味しいドリップコーヒーやケーキをいただくことができるほか、ワンドリンクオーダーすれば「あなごめし うえの」のお弁当を持ち込み、食べることもできますよ。

画像: 古本図書館&カフェスペース

古本図書館&カフェスペース

みやじまぐちの想い出shop epilo
定休日不定休
営業時間平日10:00~18:00、土日祝日10:00~19:00
webepilo.net
住所広島県廿日市市宮島口1-5-11

広島在住の作家とコラボしたオリジナル商品が大人気

zakkaひぐらし

宮島のメインストリートである表参道沿いに建つ癒しのお宿「蔵宿いろは」の1階に、宮島のお土産にぴったりの雑貨を揃えたお店「zakkaひぐらし」があります。店内には、大鳥居や鹿をモチーフにした手ぬぐいなどの日常使いの雑貨から、陶器や鉄器の置物まで、デザイン性の高い商品が丁寧に飾られています。オリジナル商品も多くあり、そのほとんどを、店長の上田さんと広島近郊の作家たちで企画・制作しているそうです。

画像: 宮島の鹿をモチーフにしたオリジナル手ぬぐい

宮島の鹿をモチーフにしたオリジナル手ぬぐい

特に人気を集めているのが広島県内の陶器工房とともにつくった、鳥居や鹿をモチーフにした箸置き。そのデザイン性の高さから、箸置きとしてだけでなく小さなオブジェとして購入される方も多く、仕入れてもすぐ完売してしまうそう。一つひとつ手づくりしているため生産が追いつかないほどだそうですが、運がよければ巡り会えるかもしれません。

画像: オブジェにもなる鹿の箸置き

オブジェにもなる鹿の箸置き

zakkaひぐらし
定休日無休
営業時間10:00〜17:00
webwww.iroha.to
住所広島県廿日市市宮島町589-4

営業時間はたった3時間。非日常を味わう極上の隠れ家カフェ

天心閣

宮島のメインストリートである表参道から一筋裏にある町屋通りを抜け、さらに階段を上った見晴らしの良い高台に、隠れ家という言葉がぴったりのカフェ「天心閣」があります。かつて貴族の別荘として使われていたという端正な佇まいはそのままに、フランスのアンティーク家具が飾られた温かみのある空間が広がっています。営業時間は14時から17時までのたったの3時間。にもかかわらず、癒しの一杯を求めて、遠方から多くのお客さんが訪れます。

画像: 貴族の別荘を改築してつくられたという趣のあるカフェ

貴族の別荘を改築してつくられたという趣のあるカフェ

メニューは自家焙煎の豆で淹れるドリップコーヒーをはじめ、エスプレッソや紅茶、ジュースなどのドリンクと、自家製ケーキが3種類。広島レモンでつくったレモンケーキは香味がほんのり鼻をくすぐり、芳醇できりりとした香りのドリップコーヒーによく合います。庭に出れば眼下に瀬戸内海と厳島神社、同じ目線に五重塔と千畳閣を眺めることができる贅沢なロケーション。表参道や厳島神社の賑やかさとは対照的に、ここではゆったりと静かな宮島の姿を堪能できることでしょう。

画像: 自家製の広島レモンケーキ

自家製の広島レモンケーキ

天心閣
定休日水、木曜日
営業時間14:00~17:00(L.O.16:30)
webitsuki-miyajima.com
住所広島県廿日市市宮島町413

宮島の街並みと瀬戸内海を見渡せる絶景カフェ

牡蠣祝

広島で有名なご当地グルメといえば牡蠣料理。宮島には『ミシュランガイド広島2013特別版』に掲載された牡蠣料理専門店「牡蠣屋」がありますが、今回ご紹介するお店は、その牡蠣屋のコンセプトショップ「牡蠣祝」です。ここの魅力はなんといってもそのロケーション。海側の開放的な窓から見えるのは穏やかな瀬戸内海と宮島ののどかな街並み、そして美しい朱色の五重塔に迫力の千畳閣。宮島の見どころを一望できるかのような景色を楽しめます。

画像: 美しい五重塔や宮島の街並み

美しい五重塔や宮島の街並み

そんな絶景を眺めながらいただくのは、最高クラスの広島産牡蠣を使っている牡蠣のオイル漬けと地元広島のワイナリー産であるワイン「TOMOÉ」。チーズを彷彿とさせる濃厚な牡蠣とフレッシュな酸味と華やかな香りの白ワインの相性は抜群です。牡蠣のオイル漬けは白髪ネギを添えていただくのが牡蠣屋流なのだとか。お洒落な盛り付けに気分も上がります。

画像: 牡蠣には白ワインが一番よく合うそう

牡蠣には白ワインが一番よく合うそう

牡蠣祝
営業時間12:00〜16:00
webwww.kakiwai.jp
住所広島県廿日市市宮島町422

イソナガアキコ

広島県廿日市在住のライター。瀬戸内を共有する7県の魅力を発信するWebメディア「瀬戸内Finder」(せとうち観光推進機構)の公式ライターとして活動中。そのほか、「宮島口」にスポットをあてたフリーペーパー『みやじまぐちそぞろあるき』の取材&ライティングも担当した。

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