せせらぎ通りで見つける、金沢らしい文化と暮らし
せせらぎ通りは、鞍月用水に沿って続く、落ち着いた街並みが魅力。ゆっくり歩けば、この街の日常や感性に自然と出会えます。
まずは、緑に囲まれた印象的な建物が目を引く「ひらみぱん」でモーニング。


フランスの街角を思わせるブーランジェリーで、モーニングやランチが人気です。
パンのおいしさを活かしたクロックマダムやキッシュなど、ボリュームのあるプレートメニューも評判。料理の主役であり、名脇役でもあるパンの魅力を存分に味わえる一皿です。

さらに、料理だけでなく空間や過ごす時間までが丁寧にデザインされているのも魅力。特別な朝を過ごしたい人たちで、早い時間から店内はにぎわいます。



お腹を満たした後は、せせらぎ通りを散策します。
にぎわう観光地とは異なる、穏やかな時間が流れるこのエリア。初日と同様、“知っていたつもりになっていた金沢”の魅力を、一つ一つ立ち止まって見て、感じていきます。
九谷焼の魅力は、器だけにとどまりません。
その美しさを暮らしの中で楽しめる場所が、せせらぎ通り沿いにある「松の湯」です。
「松の湯」は、長年地域で親しまれてきた銭湯をリノベーションし、2022年に復活オープンした施設。レトロな面影を残しながら快適に整えられた空間で、ゆっくり湯に浸かれるのはもちろん、サウナを楽しむ“サ活”スポットとしても人気を集めています。

浴室には、九谷焼タイルが広がります。男湯は銭湯の定番・富士山をモチーフにした力強さ、女湯には明るく華やかな曼荼羅模様が。それぞれ異なる趣で描かれた壁面は、湯船に浸かりながら眺めたくなる美しさです。




さらに、館内の随所にあしらわれたタイルにも、一枚一枚に細やかな意匠が施され、空間をさりげなく彩っています。

松の湯を後にして、向かったのは聖霊病院聖堂です。
ここは、石川県指定文化財にも指定されている、1931(昭和6)年に修道院の聖堂として建てられた建物です。
設計はスイス人建築家マックス・ヒンデル。
ロマネスク様式を基調とするカトリック修道会の教会でありながら、日本の伝統技術やこの街ならではの意匠を取り入れているのは、全国的にも珍しいです。

幾重にも続くアーチが奥の祭壇へと視線を導き、左右対称に整えられた空間が厳かな雰囲気を醸し出しています。

アーチの縁には、加賀藩で格式の高さを表す色とされた群青があしらわれ、空間に気品を添えています。さらに、アーチを支える柱には艶やかな黒漆と金箔。歴史に育まれた伝統工芸や美意識が、西洋建築と見事に調和していました。



椅子席に加え、畳敷きになっているのも特徴的です。柔らかな光を取り込むステンドグラスも美しく、穏やかな雰囲気をより一層引き立てていました。

ひらみぱん
| 住所 | : | 石川県金沢市長町1-6-11 |
|---|---|---|
| 営業時間 | : | 8:00~18:00 |
| 定休日 | : | 月曜日 |
| WEB | : | https://hiramipan.co.jp/ |
松の湯
| 住所 | : | 石川県金沢市長町1-5-56 |
|---|---|---|
| 営業時間 | : | 11:00~23:00 |
| 定休日 | : | 水曜日 |
| WEB | : | https://msento.com/ |
聖霊病院聖堂
| 住所 | : | 石川県金沢市長町1-5-30 |
|---|---|---|
| WEB | : | https://www.kanazawa-seirei.org/company.html |
旅の締めくくりは、金沢を代表する伝統工芸へ「津田水引折型」

旅のさいごに訪れたのは、「加賀水引 津田水引折型」。
水引と聞くと、ご祝儀袋を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。私もその一人でした。
ところが、ここで知ったのは、それだけではない水引の世界です。

水引とは、和紙をこより状にして糊で固めた紐のこと。

しかし、津田水引折型では、和紙で包む、水引で結ぶ、そして表書きをしたためることまでを含めて、一つの贈り物として考えます。
〔包むところからが水引の文化〕。そう知った瞬間、これまでのイメージが大きく変わりました。
「えっ、包むところからが水引の文化なんだ。」
贈る品物を美しく包み、水引を結び、相手に合わせた言葉を書き添える。そこには、単に物を渡すのではなく、「相手を思う気持ちを形にする」という日本ならではのセンスが息づいていました。
さらに驚いたのは、水引細工にも一つ一つ意味が込められていること。
鶴や松竹梅など、それぞれの形には願いや縁起が込められ、贈る相手や場面に合わせて選ばれてきたそうです。

こうした立体的な水引細工は、津田水引折型の初代・津田左右吉が考案したもの。金沢では、贈り物を津田水引折型へ持ち込み、和紙で包み、水引を結び、表書きを添えて、大切な人へ届ける文化が受け継がれてきました。
さらに、津田左右吉は、それまで平たく結ぶことが主流だった水引を立体的な工芸へと発展させました。その表現は全国へ広がり、縁起物を形作る水引細工が日本中で見られるようになるきっかけになったといいます。
現在も津田家ではその技術と美意識が受け継がれ、一つ一つ丁寧に仕上げられています。繊細な曲線や均整の取れた立体感は、思わず見入ってしまいます。
受け継がれてきた技の奥深さを間近で感じることができました。

加賀水引について学んでみると、この旅でも何度も目にしていたことに気付きました。
知らないうちに、その世界に触れていたのですね。


品物だけでなく、「贈る気持ち」まで包む。
そんなこの町らしい心遣いに触れられたことが、この旅の最後を締めくくる、何より印象深い体験になりました。
加賀水引 津田水引折型
| 住所 | : | 石川県金沢市野町1-1-36 |
|---|---|---|
| 営業時間 | : | 月~金10:00~18:00、土10:00~12:00 |
| 定休日 | : | 日曜日、祝日 |
| 水引制作体験も可能 | : | 平日10:00~15:00、2名以上(9名を超える場合は要相談)。詳しくはウェブサイト参照 |
| WEB | : | https://kagamizuhiki.com/ |
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