もちろん観光産業に関わる人たちも例外ではありません。旅行者の受け入れを制限し、閉館や閉園を余儀なくされている状況ですが、そんな中でも「またいつか旅をしてほしい」という思いで、観光や旅行の素晴らしさを発信し続けている観光地もあります。
そんな世界各国の取り組みを紹介していきましょう。(2020年6月15日現在の情報です。随時更新していきます)
※記事のサムネイル画像は、スイス観光局の公式Youtubeチャンネルより引用しています。
https://www.youtube.com/user/myswitzerland/
“Dream Now, Travel Later” スイス観光局からのメッセージ
ヨーロッパの観光立国のひとつであるスイスでも、新型コロナウイルスの感染者は2万人を超えています(4月6日現在)。入国制限が続き観光産業が打撃を受ける中で、スイス政府観光局は「Dream now, travel later (いつか旅に出る日を夢見よう)」というメッセージ動画を発表しました。
「stay safe. stay home. Just for awhile. But let us inspire you. To welcome you back soon. (命を守るために、今は家にいましょう。でも、近いうちにみなさんとお会いできるように、この国の魅力を感じていてください)」というシンプルなメッセージとともに、美しいスイスの情景や旅する人々の笑顔に溢れた映像が編集されています。
このウイルスを封じ込めることができたなら、また旅に出られます。そのためにも、今は家に留まりましょう。“Dream Now, Travel later”。またいつか旅に出よう、と呼びかけてくれる温かいメッセージですね。
「自宅で楽しむギリシャ」のプロジェクト
同じくヨーロッパの観光立国であるギリシャも「#Greecefromhome」という動画を公開しています。
「It's time to stay at home and hit the pause button. But that doesn’t mean we have to stop connecting, being inspired and learning – maybe more now than ever before.(今は家に留まり、ストップボタンを押す時。でも、それは、つながったり、インスパイアされたり、学んだりすることをやめるわけではありません。むしろ、そうしたことを今こそやるべきなのです)」というメッセージとともに、自宅でギリシャの魅力を体験できるコンテンツなどの情報発信を行っています。
そして、YouTubeで「#greecefromhome」と検索すると、ギリシャ在住のクリエーターや一般人などが今のギリシャの様子や魅力を動画にして公開し、その数は日に日に増えています。さらに、観光局の公式ブログでは、ギリシャ料理のレシピやギリシャの魅力を味わえる映画の情報を記事にしています。いずれも日本語対応はされていませんが、翻訳ソフトなどでチェックしたり、ギリシャの皆さんの想いを感じたりするだけでも前向きな気分になれますね。
#greecefromhomeの動画
ギリシャ政府観光局ブログ記事
今こそアロハの精神を。ハワイ州観光局の呼びかけ
私たちが大好きなハワイも新型コロナウイルスによって観光産業が深刻な状況に陥っています。それでも前向きにアロハスピリットでこの困難を乗り越えようとハワイ州政府観光局がメッセージ動画を配信しています。
動画の説明文には日本語でこんなメッセージが。
「アロハ」の意味は、挨拶だけではありません。愛。絆。この世界に必要なことばかりです。今はハワイにお迎えすることができませんがきっと、また逢える日が来ます。その時を信じて、分かち合いましょう。「アロハ」の気持ちを。
さらに公式サイトでは『在宅応援「おうちでハワイ」プログラム』と題し、「バーチャルハワイ」「癒しのハワイ」「学ぶハワイ」「音楽でハワイ」「映画でハワイ」「読み物ハワイ」の6つのカテゴリーのコンテンツがネットで楽しめるようになっています。
春休みやゴールデンウィークにハワイ観光を計画されていた方も多いと思います。外出制限が解けて、ハワイの太陽を体いっぱいに浴びる日のために、サイトを訪問して、アロハの精神でハワイを応援したいですね。
世界の観光地をオンラインで楽しむ試み
美術館や商業施設なども、休館・休園せざるを得ない状況です。そこで、自宅でアートやエンタテインメントを楽しめるコンテンツを紹介しましょう。
厳しい外出制限が続くニューヨーク。ミュージカルや演劇、コメディなど、ライブエンタテインメントの中心地であるブロードウェイも残念ながらすべての劇場を閉鎖しています。そんな中、エンタテインメント界のトップスターたちが集結し、歌や劇を披露する「リビングルーム・コンサート」と名付けられたショートパフォーマンスを毎日公開する取り組みがスタートしました。
演劇ニュースのWEBサイト「Broadway World」で公開されるオンラインライブの参加メンバーは、2019年12月より上映中のミュージカル『ジャグド・リトル・ピル』(アラニス・モリセットのメガヒットアルバムをもとにした作品)の女優、キャサリン・ガラガーや、『ディア・エヴァン・ハンセン』(第71回トニー賞でミュージカル作品賞を含む最多6部門を受賞した名作ミュージカル)のアンドリュー・バース・フェルドマンなど、ブロードウェイの現役役者が参加する豪華なラインアップ。むしろ普段は観ることが出来ないできない特別なエンタテインメント体験ができます。
LIVING ROOM CONCERTSはこちらのメディアからチェックできます。
ニューヨーク観光の魅力と言えばオペラ鑑賞もそのひとつ。しかし、MET(メトロポリタン歌劇場)も現在休館中。すべての上演を中止しています。そんな中、3月16日からMETがライブ配信サービスを始めました。毎晩、19:30(日本時間8:30)より、過去のオペラ公演が無料で配信されています。作品は配信開始から23時間視聴可能で、毎日“その日だけの”演目が公開されるので見逃せません。ウェブサイトの他に、iPhoneとAndroid対応のアプリでも観覧が可能になっています。
オーストラリアからは各種デジタルコンテンツが発信中
今年オーストラリア・シドニー観光の目玉であった「シドニー・ ビエンナーレ2020」。開催22回目となる今回は、先住民のウィラドゥリ語の「NIRIN(ニリン)」をタイトルに冠して、現代社会と先住民との関係や文化・交流・社会的課題などをテーマにした作品や情報発信を行っています。
3月14日に開催にこぎ着けたものの、新型コロナウイルスの影響で一般公開を一時中止しているところです。そこで主催者は作品をオンラインで体験できるようさまざまな試みを開始。グラフィック、音声、映像など作品やメッセージの内容に合わせてInstagram、Spotify、YouTubeなどのツールを駆使して発表し続けています。Google Arts & Cultureでの作品公開も検討しているとのこと。シドニー・オーストラリア観光を計画していた方はぜひチェックしてみてください。
※オンラインの取り組みの最新情報はこちらで
ニューサウスウェールズ州(州都:シドニー)の政府観光局が制作した動画では、シドニーはもちろん州内の見どころが多数紹介されています。海や動物園など自然のイメージが強いこのエリアの、美しい姿をご覧ください。
また、州内の各施設も積極的に情報発信を行っています。
世界遺産であるシドニー・オペラハウスは、記事や動画、ポッドキャストなど、さまざまなコンテンツを発信中。
Sydney Opera House
Taronga Zoo Sydney(タロンガ動物園)では、「Taronga TV」という動画コンテンツを配信しています。
Taronga TV
アザラシや鳥たちによるショーを楽しんだり、園内に設置されたストリーミングカメラによってゾウやトラの今の様子を眺めたりと、動物たちの生きいきとした姿からは元気をもらえそうです。
世界のアートをバーチャル体験できるGoogle Arts&Culture
2016年に大幅にリニューアルされ話題となった、Googleが提供するバーチャルミュージアムアプリ「Google Arts&Culture」(webブラウザ上でも楽しめます)。世界各地の美術館や博物館が所蔵する作品や文献、文化遺産などを検索したり、それらのディテールに富んだ表現を鑑賞したりすることができます。
MoMAや大英博物館などの超人気施設から新進気鋭のアートギャラリーまで、2,000以上の施設と6,000人以上のアーティスト、600万点を超える写真、動画、文献、その他の芸術、文化、歴史的文書を楽しむことができるのです。
有名な作品の超高解像度画像や、ストリートビュー トロリーで美術館などの館内を撮影した360°画像で、バーチャルツアーなど現場にいるよりもリッチなアート体験ができるのも魅力です。またいつか旅行できる日のために、行きたい美術館、見たい作品をリストアップしておきましょう。
Google Arts&Culture
ハリー・ポッターの豪華出演陣による小説朗読ムービーが公開
『ハリー・ポッター』の作者であるイギリスの作家J・K・ローリングが、コロナウイルス感染拡大の影響でSTAYHOMEせざるを得ないファンたちに向けて、「Harry Potter At Home(ハリー・ポッター・アット・ホーム)」を立ち上げました。
あわせて、小説『ハリー・ポッター』シリーズの第1巻から第7巻までの朗読ムービーを使用する権利が解禁。彼女のtwitterでは、教師や親たちに向けて「子どものために役立ててほしい」という旨のメッセージが発信されています。
中でも注目を集めているのは、『ハリー・ポッターと賢者の石』の各章をイギリスの著名人が朗読するムービーです。
初回は、主人公を演じたダニエル・ラドクリフが担当しています。その後も、ファンタスティック・ビースト主演のエディ・レッドメインやベッカムなどが参加予定。おうち時間を楽しみながら、同時に英語の勉強にもなりそうです。
ドイツ観光局からのメッセージ「Dream Now – Visit Later」
ドイツの観光局は、「いつか夢は、現実になる」という想いを込めたムービーを公開しました。「外出自粛が続いても、想像力を働かせればどこへでも行ける」というメッセージとともに、スケッチ画が実写に移り変わっていく美しい作品です。
ドイツ観光局は、日本の公式Twitterアカウントでも積極的に情報を発信しています。現在はバーチャルツアーコンテンツを続々と投稿中です。
ドイツ観光局 (@GermanyTravelJP) | Twitter
https://twitter.com/GermanyTravelJP
中でも注目は「世界一美しい牛乳屋さん」の3D映像。こちらはドレスデンに実在するギネス認定の店舗で、まるで宮殿のような装飾は思わず見とれてしまうほどの美しさ。高精細な3Dコンテンツに夢中になるうちに、旅をしているような気分を味わうことができます。
日本国内の観光地からも自宅で楽しめるコンテンツを発信
日本でも多くの施設が閉園や閉館を余儀なくされる中、また訪れることを楽しみにしているファンのために粋な計らいをしてくれているスポットがあります。そのいくつかを紹介しましょう。
上野動物園は公式Twitterで癒しのパンダ動画を公開
こちらも一時休園中の上野動物園。その公式Twitter(@UenoZooGardens)が話題となっています。同Twitterではこれまでも、日々動物たちの写真や動画を投稿していたのですが、休園中も積極的に動物たちの様子を公開しています。特に人気なのが、パンダの様子を紹介する「#デイパン」。毎日のように愛らしいパンダの日常を楽しむことができ、癒やされます。また会いに行きたいなと思わせる素敵な投稿を、ぜひ楽しんでください。
上野動物園公式Twitter
秋田犬もYouTubeで癒しをお届け
OnTrip JALでも取材・ご紹介した秋田県の観光施設「秋田犬の里」。こちらも現在臨時休館中で、かわいい秋田犬に会えない日々が続きます。そこでYouTubeの公式チャンネルで「きょうの秋田犬」と題し、所属する秋田犬たちの日々の様子を動画で公開しています。スタッフさんたちと遊び、元気にご飯を食べているシンプルな動画に癒やされること間違いありません。
秋田犬ふれあい隊in秋田犬の里「きょうの秋田犬」
秋田犬の里公式サイト
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「Stay Home, Feel Kyoto」京都から世界へ向けたメッセージ
京都市観光協会は、「自宅に居ながら京都の魅力を感じ、癒しや活力を得てほしい」という想いを込めた「Stay Home, Feel Kyotoキャンペーン」を開始しました。世界中の京都ファンの方へ向けて、日本語と英語の両方の言語で情報を発信しています。
現在、公開されているコンテンツは「おうちで坐禅 ~手ほどき編~by妙心寺退蔵院」「京都の各業界の方々から世界の京都ファンに向けたメッセージ」「ビデオ通話用背景」「KYOTOの予習」「京都が誇る料理人による 家庭で楽しむ日本の料理」の、全部で5つ。
「ビデオ通話用背景」は、オンライン会議や飲み会が増えた時世にあわせて用意された、興味がそそられるコンテンツ。背景画像に京都の美しい景色を設定したら、参加者との話のネタになりそうです。(配布期間:5月31日まで)
またいつか旅する日を夢見て
新型コロナウイルス禍は、まだまだ終息の見通しが立たない状況が続いています。先の見えない不安を抱えながら自宅で過ごしている時に、旅行や観光の楽しさや感動を思い出すことは一時のリフレッシュになるのではないでしょうか。編集部では、こうした各地の観光地の取り組みを随時紹介していきたいと思っています。
今は旅行ができなくても、またいつか旅をする時のために、引き続き旅の素晴らしさや魅力をできるだけポジティブに発信していきます。
Dream Now,Travel Later!
#旅を夢見て #STAYHOME
※本記事は、2020年4月21日に投稿したものをベースとして、2020年6月15日時点の最新情報に更新しています
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。