今回、久米島を案内してくださったのは『あたらしい沖縄旅行』『あたらしい離島旅行』などの著書で知られるライターのセソコマサユキさん。数々の離島を訪ねてきたセソコさんが久米島を歩くなかで見つけた魅力を、ぜひ感じてみてください。
写真・文:セソコマサユキ
「歩く」旅だからこそ、出会える景色を見つけに
沖縄で暮らすと「歩かなくなる」というのはよく聞く話だ。電車が少なく、外が暑いこともあって玄関を出たら車に乗り、目的についたら降りるという具合で、移住したぼくもそれを実感する日々を過ごしている。 ただ、離島へ旅をするとなると、話はまた別だ。振り返ってみても、離島を旅するときはよく歩く。交通手段が少ない、ということもあるだろうけど、ぼくは歩くからこそ出会える離島の景色が好きなのだ。
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沖縄本島から飛行機を使えば30分ほどでたどり着くことができる「久米島」。緑深く、離島としては珍しく水も豊かなため、以前から水耕栽培が盛んで「球美の島」(球美とは方言で「米」のこと)とも呼ばれ美しい島だ。ほかの離島と違わず青くきらめく海はその魅力のひとつで、「はての浜」といえば、いつかは行きたい絶景の地として記憶にとどめている人も多いのではないだろうか。ただ今回はそこからあえて視点をずらして、ぼくなりに別の魅力を見つけに行きたいと思っている。
海だけじゃない、豊かな自然を歩く
ラムサール条約登録地、宇江城岳(うえぐすくだけ)の渓流と湿地
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海のイメージだけを持って離島に行くと、思いがけず現れるジャングルのような深い自然に驚くことがある。西表島などは有名だが、じつはこの久米島そんな島のひとつ。島全体が県立自然公園に指定されているだけでなく、宇江城岳の渓流と湿地は、湿地の生態系を守るための国際条約「ラムサール条約」に登録されているほど、自然が豊か。
絶景スポット「だるま山園地」のそばには遊歩道があり、そこから山、そして渓流へと入って行くことができるのだ。ただ、深く分け入って行くと携帯電話の電波さえ届かない場所もあるそうで、安全のためにも久米島観光協会が運営する「ニブチの森散策プログラム」に参加して楽しんでほしい。日本で唯一の淡水性のヘビである「キクザトサワヘビ」や、「クメジマボタル」など希少な野生生物に出会えるかもしれない。
沖縄県最古の民家「上江洲家(うえずけ)」で地元の人との触れ合う
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上江洲家15代目の奥さま
自然に癒されたあとは、島の人との交流を楽しもう。「上江洲家」は国の重要文化材に指定されている1754年に建てられた沖縄県最古の民家。入場料を払うとそのなかに入ることができる。現在は15代目が管理していて、その奥さんが「店番」をしてるときは、成り立ちなどを気さくに話してくれる。風水を考慮して設計された家であること、だからシーサーがいないこと。畳が9畳なのは「10から欠けていると、人は補おうと努力する」という意味があること、男性、女性の入り口が別にあり、そのため「ひんぷん(門と母屋との間に設けられる目隠し)」がL字型をしていること、など。縁側に座って家を吹き抜ける風を感じながらのんびりと交わす会話が、また楽しい。
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上江洲家 | ||
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営業時間 | : | 9:00〜18:00 |
定休日 | : | 不定休 |
住所 | : | 沖縄県島尻郡久米島町西銘816 |
web | : | http://www.kanko-kumejima.com/archives/members/uezu-residence |
久米島の観光地、その周辺を歩く
沖縄そばの人気店「やん小(やんぐぁー)」
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久米島には「やん小(やんぐぁー)」という人気の沖縄そばの店がある。名物「味噌もやしそば」をいただいたら、その周辺を少し歩いてみる。道端に咲く色とりどりの花に目を止め、自分の暮らす街とはまた違った街の風景にカメラを向けるのが、なんともいえず楽しい。
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やん小名物の「味噌もやしそば」
やん小(やんぐぁー) | ||
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営業時間 | : | 12:00~15:00 |
定休日 | : | 水曜日 |
住所 | : | 久米島町字仲泊509 |
web | : | https://www.churashima.net/shima/kume/special/yan/ |
きっと島の人にとってはありふれているであろう風景のなかから、自分の好きな風景を切り出せたときに、ぼくはなんだか嬉しくなるのだ。やん小の周辺は久米島のなかではわりと「街」なのだけれど、それでも高い建物のない、コンクリート造りの商店が並び、静かに流れる時間が旅情を掻き立ててくれる。
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もうひとつオススメしたいのは、イーフビーチ周辺だ。イーフビーチといえば「日本の渚100選」にも選ばれている久米島を代表する、真っ白な砂浜。2kmにわたって続く美しい天然のビーチの周辺には小さな民宿や飲食店が立ち並んでいるのだが、その「寂れ感」がなんとも言えず良いのだ。
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歩いているからこそ出会える風景がそこにはあって、ぼくはそんな出会いを求めて、車を停められる場所を見つけては、ふらりふらりと時間の許す限り散策してみるのだ。日が暮れるころにはクタクタになっていることもあるけれど、その疲れは、どこか体に心地良い。
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セソコマサユキ
沖縄在住の編集者・ライター。雑誌編集を経て、手紙社で紙媒体の編集、イベントの企画・運営などを手がけたのち、2012年、独立を機に沖縄に移住。さまざまな媒体での編集、ライティング、撮影を通して独自の目線で沖縄の魅力を発信している。観光情報サイト「沖縄CLIP」編集長。著書に『あたらしい沖縄旅行』『あたらしい離島旅行』『あたらしい北海道旅行』(すべてWAVE出版刊)、『あたらしい移住のカタチ』(マイナビ出版)、企画・制作に『みんなの沖縄』(主婦の友社)がある。http://masayukisesoko.com
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※2019年8月9日に一部内容を更新しました。
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。