公開50周年記念作が、2019年12月27日(金)より全国公開される、国民的人情喜劇「男はつらいよ」シリーズ。その舞台となっている東京・柴又が、再注目され静かに人気を集めています。そこで今回は、編集部がおすすめする柴又のお散歩コースを紹介。東京観光へ来たなら、この東京下町ロマンをぜひ味わっていってください。
画像: 「男はつらいよ」の世界観と下町ロマンを満喫。柴又のおすすめ観光コース

寅さんを愛する街、柴又

東京の北東部、江戸川のほとりに位置する葛飾柴又。「男はつらいよ」シリーズの舞台として知られ、監督の山田洋次さんらが物語に相応しい場所を探し求めていたとき、豊かな自然と時代を象徴する街並み、そこに住む義理人情に溢れた温かい人々の暮らしがある、葛飾柴又に惹かれたというエピソードがあります。現在も景観は大切に保たれており、2018(平成30)年2月13日には、都内で初めて国の重要文化的景観に選定されました。

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京成金町線柴又駅へは、東京駅から約40分、新宿駅から約50分ほどで到着できます。柴又駅の改札を抜けると、早速出迎えてくれるのが、「フーテンの寅」像。1999年に建てられたもので、旅立つ寅次郎が立ち止まって、故郷の柴又に視線を向けた様子を表しています。

画像2: 寅さんを愛する街、柴又

実は、銅像の左足を触ると縁起がいいと言われています。その訳とは、「葛飾柴又寅さん記念館」の入口上部にある看板を取り付けている寅さんのモニュメントを見るとわかります。右足の雪駄が地面に落ちているけれども、左足は落ちていないことから、「左足を触ると落ちない=縁起がいい」といつの間にか語られるようになったとか。

また、「フーテンの寅」像の奥には2017年に建てられた「見送るさくら像」も。柴又らしさを象徴する撮影スポットなので、昼以降は常に銅像の周りに人だかりができています。ゆっくりと撮影をしたいならば、まだ人が少ない午前中が狙い目です。

地元民に愛される「三河屋」で焼きそばを堪能

画像1: 地元民に愛される「三河屋」で焼きそばを堪能
画像2: 地元民に愛される「三河屋」で焼きそばを堪能

さて、柴又観光といえばグルメが欠かせません。まずは、柴又駅からすぐ目の前にある「三河屋」におじゃましました。看板メニューである焼きそばと今川焼きをテイクアウトするお客さんがひっきりなしに訪れる、地元民には馴染みのお店です。

画像3: 地元民に愛される「三河屋」で焼きそばを堪能

「いらっしゃい! 空いてるとこ座って〜!」と、元気なお母さんの声に釣られて店内へ。お母さんおすすめの肉入り焼きそば(400円)を注文しました。鉄板を覆い尽くすほどの大量の麺を豪快に調理。いつでも食欲をそそってくれる香ばしいソースの匂いで、お腹の音が鳴り響く……。

画像4: 地元民に愛される「三河屋」で焼きそばを堪能

隣の鉄板で作っているのは、今川焼き(110円)。種類は全部で7つ。あんこやクリームなどの定番はもちろん、変わり種のトマトチキンカレーも人気です。

画像5: 地元民に愛される「三河屋」で焼きそばを堪能

「おまたせ〜」と白い器に盛られた焼きそばが到着。中細で少し柔らかめな麺に、キャベツとコーン、そして大きな豚肉。甘めのソースが全体に絡んでいて、なんともおいしい。空腹だったこともあり、ペロッと完食。

三河屋
住所東京都葛飾区柴又4丁目9-5
電話03-3657-0056
営業10:00〜20:00
定休日木曜

※営業時間・定休日は変更となる場合があります。

画像6: 地元民に愛される「三河屋」で焼きそばを堪能

「フーテンの寅」像をバックに、真っ直ぐ進んでいくと、柴又帝釈天参道が見えてきます。江戸時代から続く古き良き街並みが広がっていて、両端にはお団子やせんべいなどのお店が並んでいます。

今では柴又の名物として親しまれている団子や煎餅ですが、そのはじまりは江戸時代までさかのぼります。当時、柴又周辺の農家では、年貢として納めた残りの米を製粉(上新粉)して保存していました。その粉を、練って蒸すとお団子、練って焼くとお煎餅になります。

団子や煎餅は、副食としたりお祭りなどの時に食されていましたが、江戸時代の後半になると、帝釈天の参拝に訪れる人が多くなり、お休み処で柴又名物として団子や煎餅が振る舞うようになり、定番となっていったようです。特に、春には江戸川土手で摘まれたヨモギを練りこんだ草団子が人気を博すようになりました。

柴又の草団子といえば、創業150年の「髙木屋老舗」

画像1: 柴又の草団子といえば、創業150年の「髙木屋老舗」
画像2: 柴又の草団子といえば、創業150年の「髙木屋老舗」

創業150年のお団子屋「髙木屋老舗」も、歴史あるお店のひとつ。「男はつらいよ」の楽屋として使われていた場所で、店内の壁に飾られている、撮影当時の貴重な写真や記念品を見ることができます。「今日は寒いでしょ? 温かいお茶も一緒にどうぞ。ゆっくりしていってね」なんてお母さんの言葉がうれしくて、つい長居したくなる雰囲気。

画像3: 柴又の草団子といえば、創業150年の「髙木屋老舗」
画像4: 柴又の草団子といえば、創業150年の「髙木屋老舗」

渥美清さんも休憩中に「髙木屋老舗」のお団子を食べていたのかな、などと想像しながら、店先の椅子に座って、名物の草団子(食べ歩き用1本170円 ※喫茶利用の場合5粒400円)をいただきます。こだわりは、水分量が高いコシヒカリの米粉と生のよもぎを練り混ぜたお餅。もちもちとした食感のなかに、よもぎ本来が持つさわやかな香りが口いっぱいに広がります。北海道産の小豆を使った甘さ控えめの粒あんとも相性抜群。店内にはテーブル席もあるので、ゆっくりとくつろいでもいいでしょう。

髙木屋老舗
住所東京都葛飾区柴又7丁目7-4
電話03-3657-3136
営業お土産:7:00〜17:30
喫茶9:00〜17:00(L.O.16:30)

昔ながらの手焼きせんべいを味わえる「立花屋煎餅店」

画像1: 昔ながらの手焼きせんべいを味わえる「立花屋煎餅店」
画像2: 昔ながらの手焼きせんべいを味わえる「立花屋煎餅店」

続いて、草団子に並ぶ柴又の名物であるせんべいを味わいに、創業120年の「立花屋煎餅店」へ。一枚一枚手焼きで作る、昔ながらの手法を用いており、店頭でその様子を見ることができます。真っ白く平べったいせんべいが網の上で焼かれていき、ぷっくりと膨れて、いい焼き色が。丁寧に焼くことで香ばしく深い味わいになるそうです。

画像3: 昔ながらの手焼きせんべいを味わえる「立花屋煎餅店」
画像4: 昔ながらの手焼きせんべいを味わえる「立花屋煎餅店」

15種類以上あるせんべいのなかから、冬季限定だという醤油味のかた焼きせんべい(130円)を。ふつう焼きと比べて、焼き時間が5倍かかるほどに分厚く、夏は生地が伸びてしまうので、冬しか作っていない限定品。「せっかく来たなら、ふつう焼きも食べてってよ。おいしいから特別サービスさ」と太っ腹なオーナーさんの粋なサプライズも。ガリガリボリボリとした食感に、少し濃いめの醤油味で、お酒との相性もよさそう。

立花屋煎餅店
住所東京都葛飾区柴又7丁目7-6
電話03-3657-0928
営業9:30〜17:00
定休日不定休

焼きたてフワフワの寅焼き「い志い」

画像1: 焼きたてフワフワの寅焼き「い志い」

そろそろ柴又帝釈天参道も終盤。最後は創業157年の「い志い」へ。もともと呉服屋として創業し、常連さんへのおもてなしとして出していた茶菓子や漬物が評判となり、戦後にお茶屋さんとして再スタート。柴又帝釈天参道のなかで最古の木造店舗でもあり、江戸の商家建築を今に伝える貴重な建築物としても知られています。

画像2: 焼きたてフワフワの寅焼き「い志い」

店頭には、50種類以上の漬物が並んでいて、ご厚意に甘えてこれもあれもと試食させていただきました。なかでも人気なのが「みそ生姜」(650円)。「白いご飯にのせてもいいし、肉と一緒に炒めてもおいしいですよ」とスタッフさんのひと言に、ついつい財布の紐も緩みます。

画像3: 焼きたてフワフワの寅焼き「い志い」
画像4: 焼きたてフワフワの寅焼き「い志い」

タイミングがいいときは、名物の「寅焼き」作りを見ることもできます。鉄板のうえに、生地をそろり。手際よく裏返される生地は、遠目から見ているだけでもわかるフワフワ感。味のバリエーションは、大納言小豆のあんこやアイス、生クリーム、季節のフルーツ入りなど数種類あります。

画像5: 焼きたてフワフワの寅焼き「い志い」

「はいはい、温かいうちに食べな〜!」とお母さん。おいしいものを食べてもらいたいという、愛情溢れる店員さんの笑顔にこちらもつられてほっこり。寅焼きは1日に1〜2回しか焼いておらず、時間もその日によってバラバラなので、運がよければ出来立てを食べることができますよ。

画像6: 焼きたてフワフワの寅焼き「い志い」

早速、焼印が入った「寅焼き」をひと口。生地は驚くほど柔らかくて、やさしい甘い卵の風味と甘すぎず、さっぱりとしたあんこがちょうどいいバランス。他には、くずもちや米米ロール、芋ようかんなどの人気商品もあるので、併せてチェックしたいところ。

い志い
住所東京都葛飾区柴又7丁目6-20
電話03-3657-1749
営業8:30〜17:00

世界も認める日本庭園を眺めながら抹茶を嗜む「山本亭」

画像1: 世界も認める日本庭園を眺めながら抹茶を嗜む「山本亭」
画像2: 世界も認める日本庭園を眺めながら抹茶を嗜む「山本亭」
画像3: 世界も認める日本庭園を眺めながら抹茶を嗜む「山本亭」

柴又の人情に触れて、心もお腹もいっぱいになったところで、次の目的地へ。向かうは、「山本亭」。大正末期に建築した書院造り風の古風な日本建築を母体に、増改築のタイミングで洋風なアレンジをプラス。その結果、他では見ることができない、近代和風建築と純和風庭園の調和が美しい邸宅となりました。入場料はひとり100円。

画像4: 世界も認める日本庭園を眺めながら抹茶を嗜む「山本亭」

「山本亭」の醍醐味は、美しく整えられた書院庭園でしょう。こちらはアメリカの日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズガーデニング」が実施したランキング調査(2018年)で、全国900カ所以上の庭園のなかから4位にランクインしていて、海外からの観光客も多いのだとか。

画像5: 世界も認める日本庭園を眺めながら抹茶を嗜む「山本亭」

照明や窓ガラス、ステンドグラスなどは当時のまま。とくに窓ガラスは職人さんが激減してしまったため、製造が難しい貴重なものです。

画像6: 世界も認める日本庭園を眺めながら抹茶を嗜む「山本亭」
画像: 抹茶と練り切りのセット(600円)

抹茶と練り切りのセット(600円)

また、喫茶メニューを注文することができ、キレイな陽の光が差し込む和室で、庭園を見ながら、京都から取り寄せた抹茶と「高木屋老舗」の練り切りを楽しむこともできます。開館したての午前中は人がまばらで、とても静か。庭園からはサラサラと水の音が聞こえ、陽の光は暖か。昔ながらの日本にタイムスリップしたような特別な空間でした。

山本亭
住所東京都葛飾区柴又7丁目19-32
電話03-3657-8577
営業9:00〜17:00
定休日第3火曜日(ただし第3火曜日が祝日・休日の場合は、直後の平日)、
12月第3火・水・木曜
webhttp://www.katsushika-kanko.com/yamamoto/

「男はつらいよ」の全てがわかる。「葛飾柴又 寅さん記念館」

画像1: 葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

さて、それでは柴又の旅、最後の目的地「葛飾柴又 寅さん記念館」に向かいます。「山本亭」の長屋門を抜けて、歩くこと2分。目印は、「フーテンの寅」像の左足の秘密であると言われている寅さんの看板です。ここでは、「男はつらいよ」のセットや小道具、貴重な資料などを展示しており、「男はつらいよ」の世界観にどっぷりと浸ることができます。

画像2: 葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

画像3: 葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

こちらは、実際に撮影で使用した、寅さんの実家「くるまや」のセット。テーブルのお箸や灰皿、レジなど細かいところまで丁寧に再現されており、上を見上げると、カメラマンさんが仕事の真っ最中。こうやって撮影は行われていたんだなと、しみじみ。

画像4: 葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

画像5: 葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

次は、タコ社長の「朝日印刷所」を再現したコーナー。タコ社長や社員との名場面や本物の活版印刷機が展示されています。どことなくインクのような匂いも漂っていました。

画像6: 葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

画像7: 葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

葛飾柴又寅さん記念館ⓒ松竹(株)

そして、寅さんが生きた昭和30年代の帝釈天参道の街並みを遠近法を用いて再現した「わたくし生まれも育ちも葛飾柴又です」コーナー。ミニチュアサイズの模型は、腰を曲げて、じっくりと見入ってしまうほどの細かさ。また、商人の掛け声や街の喧騒などの音が聞こえる楽しい仕組みもありました。

見所満載の「葛飾柴又 寅さん記念館」。隣には山田洋次監督の映画づくりへの想いを堪能できる「山田洋次ミュージアム」もあるので、ゆっくりと時間をかけて見て回るのも楽しいでしょう。

葛飾柴又 寅さん記念館
住所東京都葛飾区柴又6丁目22-1
電話03-3657-3455
営業9:00〜17:00
定休日第3火曜日(ただし第3火曜日が祝日・休日の場合は、直後の平日)、
12月第3火・水・木曜
webhttp://www.katsushika-kanko.com/tora/

柴又駅から帝釈天参道を抜けて、寅さん記念館に来るまでの数時間だけで、柴又の歴史と人情を感じることができた今回のお散歩。「男はつらいよ」ファンはもちろん、まだ観たことがない人にとっても楽しめるスポットがたくさんありました。一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

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