ロック&ブルースへの愛を漂わせつつ、独自の感性や印象的な歌声によって新感覚な音を奏でる男女2人組ユニット、GLIM SPANKY(グリムスパンキー)。「愚か者たち」「怒りをくれよ」など映画の主題歌としても話題になったヒットソングはもちろん、まるで世界を旅するような、色とりどりの景色が思い浮かぶ楽曲の数々が私たちを魅了します。そんな彼らにとって、旅とはどんな存在なのでしょうか。アーティストとして、旅人としての素顔にふれていきます。
取材・文:中山秀明 撮影:山本恭平
画像1: 旅とは、刺激とインプット。GLIM SPANKYが旅を通して見てきたもの

海外に行くと必ず曲が生まれる

海外旅行が好きで、プライベートでもさまざまな国を訪れている、ボーカル&ギターの松尾レミさん。そして海外ツアーに行くたびに新たな刺激を受けていると語る、ギターの亀本寛貴さん。まずは、印象に残っている国や都市のことを聞いてみました。

「一番はLAです。ただ、ヨーロッパ、北欧、アジアとたくさんの国に行っていて、それぞれ印象深いですね。プライベートの旅は服(衣装)探しが目的だったりするんですけど、行くと必ず曲ができるんです。どんなインスピレーションが浮かぶかはそのとき次第ですが、パリやドイツからの帰国後に作った曲は、街や駅の風景が詞の表現の一部になりました。なので、その国でしか見られない光景に目を向けるということを大切にしています」(松尾さん)

「僕はこの前ライブで行った香港ですね。言葉の壁があるからこそ、場所より人のほうが記憶に残っていて。現地のスタッフさんが印象的でした。あと、ライブハウス自体も独特で。そこ自体がカルチャー発信地みたいな存在で、アートで彩られていたり、バースペースが併設されていたり。日本にもありそうでない空間が面白かったです」(亀本さん)

画像: 海外に行くと必ず曲が生まれる

機内での過ごし方と、旅のマストグッズ

例えば、アメリカへ飛行機で移動するのに10時間ほどかかりますが、お二人は移動中の機内ではどのように過ごすことが多いのでしょうか。

「目的地によっては長時間の移動になるので、映画一択ですね。日本で未公開の作品も観られるから、帰国後に優越感が持てるじゃないですか(笑)日本語訳がなくてもガンガン観ます」(亀本さん)

「私は、完璧に機内セットを作り込んでいきます。リラックスできるように、いろんな種類のお茶やマスク用のアロマとかを用意して。というのも、古着屋巡りとかでスケジュールをぎっしり組んで何キロも歩くことが多いので、現地に着く前にしっかり休んでおくことが大事なんです」(松尾さん)

旅用のグッズの中には、ボーカリストらしいアイテムも。

「のど飴は、旅先で好きな味のものが手に入るかわからないので、事前に用意します。ガムも。あとは、乾燥に備えて濡れマスクは持参。ホットアイマスクや、ヘアオイルも大事ですね。スリッパもリラックスするために欠かせません。言い出したらきりがない」(松尾さん)

「松尾さん、旅のしおりみたいだね。僕は、荷物は極力少なくしたいので、あまり持っていきません。ルーティーンを保つためのものぐらいで、筋トレグッズとかは持っていくかな。あと唯一、これは普段から欠かせないけど、リップクリームだけはマスト。これさえあればなんとかなります」(亀本さん)

スクリーンの中の世界がリアルに存在するLA

ここからは、アルバム「LOOKING FOR THE MAGIC」の制作で訪れたLAの話。そのいきさつから聞きました。

画像: スクリーンの中の世界がリアルに存在するLA

「LAの前に、ハワイへ行ったんです。いつか武道館でライブができたらみんなでハワイへ行こうという、事務所の社長との約束が実現して。それで私と亀(亀本さんのこと)はハワイからさらにLAに飛んで、日本の友人2人と合流して4人でLAを満喫しました」(松尾さん)

レコーディングでLAを訪れることになるのは、その4カ月後の2018年9月。下見を兼ねて行ったということでしょうか?

「ハワイからであればわりとすぐ行けるという、距離的な部分のほうが大きいです。ただ、このとき事前にLAへ行ったことが、レコーディングの決定打になったのは間違いないですね」(亀本さん)

「大学生ぐらいから、LAの『サルベーションマウンテン』という場所で撮影したいという目標を持っていて。それを確かめるべく、現地に行ってみたら『やっぱりここは最高!』って思ったんです。しかも、尊敬するスタジオミュージシャンがLAにいたこともあって、撮影もレコーディングもここでという話になりました」(松尾さん)

「サルベーションマウンテン」は、「LOOKING FOR THE MAGIC」のジャケットのロケ地になっている、砂漠の丘に描かれた巨大なアート。ほかにも、LAには絵になるスポットがたくさんあるのだとか。

画像: LOOKING FOR THE MAGIC(初回限定盤ジャケット)

LOOKING FOR THE MAGIC(初回限定盤ジャケット)

「ハリウッドがあるLAは、映画の聖地でもあるわけです。スクリーンの中で観ていた世界がリアルにそこにあって。『サルベーションマウンテン』に向かう途中の、砂漠の道沿いのトレーラーハウスに住む人々とか。衝撃的でもあり、改めて感動しましたね」(亀本さん)

「印象に残っている都市にも挙げましたが、LAは気持ち的に一番自由になれる街なんです。私が憧れていた60年代後半のカルチャーが色濃く残っていますし。この要素はロンドンにもあって、もちろんロンドンも大好きなんです。でもそれ以上にナチュラルに、ヒッピーカルチャーが生活の中に溶け込んでいることを、LAの砂漠の街に行って感じました」(松尾さん)

LAのおすすめスポットの中には、初めて行ったときに気に入って、再訪した際に通い詰めたお店もあるとか。

「泊まっていたホテルの隣にあった、『Swingers』というアメリカンダイナーです。特に松尾さんがはまってました。料理はハンバーガーにチョップドサラダ、ブリトー、タコスなど。TEX-MEXもあるようなLAでは普通のレストランなんですけど、やっぱり量は多かったです」(亀本さん)

「このお店は最高です。私のお気に入りはパンケーキ! 日本のスイーツ的なパンケーキではなく、ベーコンとバターと、というまさにアメリカンなもので、これがすごくおいしいんです。レコーディングの後にどうしても食べたくなって、抜け出して食べに行きました」(松尾さん)

人生も旅も失敗はつきもの

旅にはときに、ヒヤっとする場面があることも。LAで体験した失敗談も教えてくれました。

「実は5月のとき、人生初の二日酔いになりました(笑)。最終日の前日に、LAに住んでいる元レーベル長がBBQパーティーを開催してくれたんです。ビバリーヒルズの高級マンションのフロアを貸し切りにして、夕方から翌朝まで飲んで踊って。翌日は、自分の身に何が起きているのかわからなくて…遅刻しました(苦笑)旅の時間を無駄にしないためにも、飲みすぎには注意ですね…」(松尾さん)

画像: 人生も旅も失敗はつきもの

「僕は僕で、実はハワイのアラモアナ・ショッピングセンターで携帯をなくしてたんです(笑)。皆で探し回ったのに、どうしても見つからなくて…。というのもあり、僕だけ先に帰らせてもらったので、松尾さんとはバラバラに帰国したんです。しかも、この旅を通して日焼けしすぎて、“アーティストイメージが崩れる”って松尾さんに怒られたよね(笑)次からはちゃんと日焼け止めを持って行こうかな」(亀本さん)

いろいろな思い出が残る、LA旅となったようです。

創作のためのインプットを短期間で得られるのが、旅

最後に、GLIM SPANKYにとって旅はどういう存在なのか、そして次に行ってみたい国について聞きました。

「創作のためのインプットを短期間で得られるのが、旅です。インスピレーションの幅をより広げてくれるものでもありますね。行ったことがない国でいえば、ラテン文化圏ならポルトガルとアルゼンチンが気になります。あとは東欧のチェコ、ハンガリー、オーストリア。これらの国は、カラフルな民族衣装や伝統的な雑貨に興味があるんです」(松尾さん)

「僕にとっては音楽をやる上で新鮮な刺激を与えてくれるのが旅です。一方で非日常と日常というか、日本での活動との違いを教えてくれる存在でもありますね。気になる国はコロンビア。最近観た映画の影響なんですけど、南米に行ってみたいです」(亀本さん)

ユニットとしては今年、ニューアルバムの制作と、それに伴うライブツアーを開催したいと意気込む2人。改めて海外レコーディングへの意欲も見せており、松尾さんはベルリンの小さなスタジオで録ってみたいとも言います。

アルバムとしては前作となる「LOOKING FOR THE MAGIC」から約2年。よりスケールアップした、2人の音楽が到着するのを楽しみに待ちましょう。

画像: 創作のためのインプットを短期間で得られるのが、旅

GLIM SPANKY(グリムスパンキー)

ハスキーで圧倒的存在感を持つボーカル&ギターの松尾レミと、ブルージーで感情豊かなギターが特徴の亀本寛貴によるロックユニット。ロックやブルースを基調にしつつも現代に通ずる唯一無二のサウンドを鳴らし、ファン層は老若男女幅広い。佐野元春、松任谷由実、野宮真貴など日本の音楽界のレジェンドたちに愛され、また業界を超えて文化人や俳優などからも支持を集める希有な存在。最新作は2019年11月20日リリースのシングル「ストーリーの先に」。
http://www.glimspanky.com/

■取材スポット情報

Little Darling Coffee Roasters

本記事の取材場所に選んだのは、南青山一丁目のLittle Darling Coffee Roasters(リトルダーリン コーヒーロースターズ)。都会の真ん中に突如現れる緑豊かな複合施設、「SHARE GREEN MINAMI AOYAMA」の中にあるコーヒーロースターカフェです。

Little Darling Coffee Roasters(リトルダーリン コーヒーロースターズ)
住所東京都港区南青山1-12-32 SHARE GREEN MINAMI AOYAMA
営業時間平日8:00~20:00/休日10:00~19:00
定休日不定休
電話03-6438-9844
webhttp://www.littledarlingcoffeeroasters.com/

インタビューの一覧はこちら

画像2: 旅とは、刺激とインプット。GLIM SPANKYが旅を通して見てきたもの

PEOPLE(インタビュー連載)

OnTrip JAL 編集部スタッフが、いま話を聞きたいあの人にインタビュー。旅行にまつわるストーリーをお届けします。

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

This article is a sponsored article by
''.