最近、雑誌やインターネットなどで「SDGs(The Sustainable Development Goals)」というワードを見かけることはないでしょうか?
これは、2015年の『国連サミット』で採択された、世界中の人々が取り組むべき目標であり、SDGsのSは「Sustainable(サステイナブル)=持続可能」という意味。
私たちが暮らす地球の自然環境を保全し、次世代へとつなげていく。そんな持続可能な社会の実現ために、たとえ小さなことでも一人ひとりが環境についてあらためて理解を深め、「いまできることは何か」を再確認する動きが、世界中で高まっています。

そして、オーストラリアには、こうした環境に配慮した取り組みを積極的に行っている「サステイナブルな宿」が、たくさんあります。
じつは、オーストラリアは、自然環境や歴史文化を維持・保全しながら観光を促進するエコツーリズムの認証制度を世界で初めて導入した国。環境を壊さずに、旅を楽しむ仕組みづくりは、世界トップレベル。
そこで今回は、そんな環境に配慮した「サステイナブルな宿」をご紹介。環境にやさしい宿に泊まりながら、自分たちを取り巻く環境について思いを馳せる……。そんな、ちょっとエシカル(倫理的=環境保全や社会貢献)な旅は、いつもとは違う特別な旅になるはずです。
文:平野美紀 編集:佐々木鋼平(CINRA. inc,)

19世紀の歴史遺産が、最先端のエコロジーホテルに変身

Alto Hotel on Bourke(アルト ホテル オン バーク)

メルボルン中心部にあり、歴史遺産にも登録されている19世紀の建物を利用したアルト ホテル オン バーク。ネオバロック調のエレガントな外観とコンテンポラリーでシンプル&シックなインテリアが心地よいホテルです。

画像: 歴史的な19世紀の建物をそのまま利用した外観 © Alto Hotel on Bourke

歴史的な19世紀の建物をそのまま利用した外観 © Alto Hotel on Bourke

見た目や雰囲気は、小粋なヨーロッパのプチホテルといった感じなのですが、環境に配慮した宿として、いち早く、さまざまな取り組みを行ってきたホテルでもあります。

画像: ゲストがきままに寛げる読書スペース © Alto Hotel on Bourke

ゲストがきままに寛げる読書スペース © Alto Hotel on Bourke

2004年に工事を行う際、客室のほぼすべてに当たる97%の窓ガラスを2重にし、壁面の断熱材を2倍にして、冷暖房にかかる電気量を削減。

さらに、ホテルでは珍しく雨水タンクを設置して、トイレの排水などに利用するほか、あえて100%再生可能エネルギーでつくられた電力を購入し、99%の照明をエコ電球に切り替えるなど、継続的に環境保全に努めてきました。

画像: シンプルで心地よいベッドルーム © Alto Hotel on Bourke

シンプルで心地よいベッドルーム © Alto Hotel on Bourke

その結果、メルボルンで初の「カーボンニュートラルホテル(温室効果ガスの排出量が基準値以下と認定されたホテル)」に認定されるなど、オープン当初から環境保全に貢献する「サステイナブルな宿」として、さまざまな賞を受賞し、高い評価を得ています。

また、環境に配慮したホテルを認定する国際機関EarthCheck(アースチェック)の評価によると、世界の一般的なホテルの平均に比べ、消費電力は6分の1以下、水道使用量とゴミ排出量は3分の1以下と、極めて環境負荷の少ないホテルとなっています。

画像: 屋上で養蜂しながらハチミツを採取し、朝食に提供 © Alto Hotel on Bourke

屋上で養蜂しながらハチミツを採取し、朝食に提供 © Alto Hotel on Bourke

ですが、滞在時における不便さはゼロ!じつはこっそり、エアコンが24時間稼働していなかったり、シャワーの水量が出すぎないよう微調節されていたりするのですが、ほとんど気づくことなく、快適に過ごすことができます。

アルト・ホテルは、都会の快適さを追求しながら、しっかりと環境に配慮し、ゲストにも環境にもやさしいエコフレンドリーなホテルなのです。

Alto Hotel on Bourke
Webhttp://www.altohotel.com.au/
住所636 Bourke Street, Melbourne, VIC 3000 Australia

世界遺産のそばにある、アンティーク風リサイクルロッジ

Old Leura Dairy(オールド・ルーラ・デイリー)

シドニーの西部に広がる人気の観光地、世界遺産ブルーマウンテンズ。雄大な大自然が広がるこのエリアの小さな町ルーラに、オールド・ルーラ・デイリーはあります。

画像: 4人まで宿泊できるロッジ「ミルキング・シェッド」© Old Leura Dairy

4人まで宿泊できるロッジ「ミルキング・シェッド」© Old Leura Dairy

広大な敷地に建てられた6棟の一戸建てロッジは、田舎のファームハウスで使われていたようなアンティーク風の家具や道具がさりげなく置かれ、どこか懐かしく、温かい気持ちさせてくれます。

オールド・ルーラ・デイリーでは、建物や家具などの基本的なものすべてに、リサイクル素材が使われています。 その再利用率はなんと約80%!打ち捨てられていた廃材や家具、錆びた門やドアなどを蘇らせて使用し、手づくりの温かみを持った空間をつくりあげています。

画像: アンティーク調がかわいいロッジ「モー・マナー」のバスルーム © Old Leura Dairy

アンティーク調がかわいいロッジ「モー・マナー」のバスルーム © Old Leura Dairy

用意されているアメニティも手づくり石鹸やリサイクル紙のトイレットペーパーなど、環境に負担をかけないエコロジーなものばかり。
雨水の利用はもちろん、生ゴミをコンポストで再生させるなどの日々の小さな取り組みのほか、断熱材を強化して太陽熱を最大限利用する「パッシブ・ソーラー・デザイン」になった棟もあり、二酸化炭素排出削減に大きく貢献しています。

画像: パッシブ・ソーラー・デザインになっているロッジ「ストローベールハウス」© Old Leura Dairy

パッシブ・ソーラー・デザインになっているロッジ「ストローベールハウス」© Old Leura Dairy

敷地内は、固有種の植物を中心に、季節の花や果実が成る植物を植え、鳥や動物、昆虫たちが集まる楽園になっています。有害な除草剤や殺虫剤は一切使用せず、植物、生き物、環境を体系的にとらえ、それぞれの大切さが実感できるようにデザインされているのだそうです。

画像: カップルにぴったりの小さなサイズのロッジ「ザ・スタジオ」© Old Leura Dairy

カップルにぴったりの小さなサイズのロッジ「ザ・スタジオ」© Old Leura Dairy

「環境にやさしい」と「快適さ」の調和をモットーとするオールド・ルーラ・デイリー。ゲストはもちろん、環境にもそこに生息する生き物たちにもやさしいエコロッジなのです。

Old Leura Dairy
Webhttps://www.oldleuradairy.com.au/
住所61 Kings Road (corner of Eastview Avenue),
Leura NSW 2780 Australia

シドニーの夜景が美しい動物園に泊まり、ナイトツアーを満喫

Roar and Snore(ロアー アンド スノアー)

タロンガ動物園は、1916年に開園した歴史ある動物園。現在は、ニューサウスウェールズ州政府がサポートするNPOとして運営されています。

名前の「タロンガ」は、オーストラリアにもともと住んでいた民族・アボリジニの言葉で「美しい眺め」。その名のとおり、世界三大美港に数えられるシドニー湾の素晴らしい眺めが一望できる、絶好のロケーション!

画像: シドニー湾が一望できる絶好のロケーションに設置されたテント型宿泊施設 © Taronga Zoo

シドニー湾が一望できる絶好のロケーションに設置されたテント型宿泊施設 © Taronga Zoo

そんな動物園に泊まって、動物たちの生態を間近で観察できると地元ファミリーに人気なのが、ユニークな宿泊体験プログラム「ロアー&スノアー」です。

このプログラムは、園内に設営されたテント型宿泊施設に泊まり、経験豊かな飼育係と夜の動物園を歩きながら、動物の生態と環境について、理解を深めてもらおうというもの。

画像: 準備や設営不要で快適に滞在できる常設テント © Taronga Zoo

準備や設営不要で快適に滞在できる常設テント © Taronga Zoo

夜の動物園では、昼間ではなかなか見ることができない夜行性動物の活発な行動も見ることができます。こうした夜間の動物観察が重要なのは、コアラやカンガルーをはじめ、オーストラリア固有の野生動物のほとんどが夜行性だからなのです。

画像: コアラが夜間に活発に行動する様子が見られるかも? © Destination NSW

コアラが夜間に活発に行動する様子が見られるかも? © Destination NSW

身近な野生動物の生態を知ることは、自然環境を保全するためにとても大切。森や湿地帯などの自然が健全でなければ、動物は暮らしていけませんし、ゆくゆくは私たち人間にとっても悪影響を及ぼすことにつながります。

タロンガ動物園は、単に動物を飼育展示しているだけではありません。交通事故やペットに危害を加えられた野生動物を治療し、再び野生へと帰すなど、野生動物保護や固有種の調査にも力を注いでいます。

画像: オペラハウスが眺められる展望台で食前酒を楽しむ © Taronga Zoo

オペラハウスが眺められる展望台で食前酒を楽しむ © Taronga Zoo

また、身の回りの自然と地球環境の保護のために、太陽エネルギーの活用やゴミ削減、植林など、さまざまな活動を行っています。

ロアー&スノアーは、環境保全に真剣に取り組む動物園で動物たちとふれあいながら、環境について学べる1泊2日の自然体験型プログラムなのです。

Roar and Snore at Taronga Zoo
Webhttps://taronga.org.au/sydney-zoo/accommodation/roar-and-snore
住所Bradleys Head Rd, Mosman NSW 2088 Australia

世界でもっとも美しいドライブコースの大自然を4日間かけて体験

Twelve Apostles Lodge Walk(トウェルヴ・アポストルズ・ロッジ・ウォーク)

メルボルンから車で2〜3時間で行くことができる人気の観光地グレート・オーシャン・ロード。

「世界でもっとも美しいドライブロード」として知られ、起伏に富んだ美しい海岸線が続くスポットですが、その緑豊かな森のなかに、トウェルヴ・アポストルズ・ロッジはひっそりと佇んでいます。

画像: ロッジは木材を使い周囲に溶け込むデザイン © Australian Walking Company

ロッジは木材を使い周囲に溶け込むデザイン © Australian Walking Company

トウェルヴ・アポストルズ・ロッジは、この地区で人気のグレート・オーシャン・ウォークと呼ばれるウォーキングコースの一部(約44km)を経験豊かなガイドと共に4日間かけて踏破するアクティブな体験プログラムとセットになった宿泊施設です。

木材をふんだんに使ったロッジは、周囲の自然に溶け込むデザイン。各棟は、太陽エネルギーを最大限に活かす「パッシブ・ソーラー・デザイン」になっており、電力と水の消費を極力減らせるように設計されています。

画像: 広々としたベッドルーム © Australian Walking Company

広々としたベッドルーム © Australian Walking Company

また、ロッジで使う水は、雨水や湧き水を使用。毎日必ずでる排水は、一度浄化してから自然へと戻したり、生ゴミと共にコンポストで堆肥化したりするなど、日々の小さな取り組みをコツコツと続けています。

ウォーキングでは、森を抜けながら、美しい海岸線を眺められる絶景コースを歩きます。地元の自然を熟知したガイドが植物や動物など、生態系について解説しながら歩いていきますので、興味深くて疲れも忘れてしまうほど。

画像: 美しい海を眺めながらウォーキング © Australian Walking Company

美しい海を眺めながらウォーキング © Australian Walking Company

大自然のなかを歩いて満喫した後は、地元の食材たっぷりのおいしい食事と快適なベッドで心地よい眠りにつく――

画像: 歩き疲れた後は、フット・スパでリラックス  © Australian Walking Company

歩き疲れた後は、フット・スパでリラックス  © Australian Walking Company

トウェルヴ・アポストルズ・ロッジ・ウォークは、絶景と大自然、そして地元の食材をとことん楽しみながら環境について理解を深められる、とっておきの体験プログラムなのです(ウォーキングに最適な気候の9月~5月のみ実施)。

Twelve Apostles Lodge Walk(トウェルヴ・アポストルズ・ロッジ・ウォーク)
Webhttps://www.australianwalkingcompany.com.au/twelve-apostles-lodge-walk/
住所70 Stafford Rd, Johanna VIC 3238 Australia

いかがでしたでしょうか? いずれもバカンスや旅、宿泊という概念を覆すような、ユニークな施設ばかり。建物や内装もおしゃれで清潔感があるだけでなく、体験プログラムやアクティビティーとセットになった施設も多いため、初心者でも気軽に参加可能です。

異国の地で、自然を身近に感じられる「サステイナブルな宿」で、自分の生き方と見つめ合う。忘れられない体験になるのは間違いないでしょう。

平野美紀

オーストラリア在住21年。トラベルジャーナリストとして、各種メディアへの執筆やラジオ / テレビ出演等で情報を発信しながら、メディアコーディネーター業もこなす。主な得意分野は、旅行、環境、野生動物、グルメ、スポーツなど。豪野生動物関連資格保有。
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