JAL社員と大学生が共に漁師の世界に弟子入りし、一次生産の現場におけるリアルな課題を探り、解決プランを模索する。これは、「青空留学」というJALの新たな取り組みです。都会と一次生産の現場を繋ぎ“都市と地方をかきまぜる”ことを通じて多様な価値観や生きる実感に触れ、リアルな課題解決に繋げることを目的としています。2021年から1年間、全国各地に赴いた留学生たちは、はたして何を学び、生み出すことができたのでしょうか。

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一次産業の豊富な情報やネットワークを有するポケットマルシェと、地域事業に取り組むJALがタッグを組んで始めた「青空留学」は、大学生が地方の一次生産の現場に身を投じ、現場のリアルな課題を発掘し、解決プランまで導くことをゴールに設定しています。2022年3月23日に開催した最終報告会では、各チームによるプレゼンが行われました。

にかほ市の有名漁師のもとに弟子入り。YouTube動画で拡散を狙った秋田チーム

画像1: にかほ市の有名漁師のもとに弟子入り。YouTube動画で拡散を狙った秋田チーム

「えっこと愉快な仲間たち」と題された資料を用いた秋田チーム。弟子入り先の漁師・佐藤栄治郎氏(写真中央手前)は、“えっこさん”の愛称で親しまれ、TikTokのフォロワーを20万人以上持つインフルエンサーです。

画像2: にかほ市の有名漁師のもとに弟子入り。YouTube動画で拡散を狙った秋田チーム

西村健氏(大阪大学外国語学部)「人材不足や魚の価値が低いという課題に対し、漁師を魅力的に紹介するアイデアを考えました。そこで『底引き網漁師えっこ』というYouTube配信を開始。漁師の生活に密着したリアルな内容で『密着!!底引き網漁師の一日』は再生数1,600回を数える反響でした」

YouTube「底引き網漁師えっこ」

画像3: にかほ市の有名漁師のもとに弟子入り。YouTube動画で拡散を狙った秋田チーム

栗林志樹氏(東京大学経済学部)「ただ、反省点もありました。素材の収集や編集のリソースが予想以上に求められたことです」

ネットを使ったプロモーション施策のみならず、実際のイベントも企画しました。

画像4: にかほ市の有名漁師のもとに弟子入り。YouTube動画で拡散を狙った秋田チーム

三輪祥子(日本航空デジタル推進部)「体験イベントとして、『漁師飯を食べる会』を開催します。滞在体験の共有を通して、地域をリアルに感じていただき、交流を深め、地域に踏み込むキッカケを作りたいと考えています」

漁師体験ツアーを企画し、地域の活性化を目指す

動画をステップ1、交流イベントをステップ2と位置付けた秋田チームは、ステップ3として「生きるを学ぶ漁師体験ツアー」という旅行企画を検討しています。

画像1: 漁師体験ツアーを企画し、地域の活性化を目指す

神田千亜紀(日本航空客室乗員部)「漁業体験や生産者さんとの交流に加え、釣った魚を召し上がっていただく夕食をメインイベントに位置付けています。ただあくまで“楽しんでいただく”ことが目的の旅行ですから、漁に出られない場合の代替プランも現在調整中です」

一次産業のリアルな実情から、ビジネス化に至る一連のプロセスに触れたことは、学生にとって大きな刺激になったようです。

画像2: 漁師体験ツアーを企画し、地域の活性化を目指す

栗林氏「自分自身を知ることができた機会だったと感じています。えっこさんが教えてくれたのが、『大切なのは何の仕事をするかだけではなく、誰と仕事をするか』ということ。この言葉にハッとさせられました。自分にとって、秋田はただの地方ではなくなりました」

画像3: 漁師体験ツアーを企画し、地域の活性化を目指す

「えっこさんに恩返しがしたい」という、秋田チームは、口々にえっこさんとの思い出を語ります。学びとともに、留学生の人生を変える大きな出会いを得られたようです。

人の輪を広げ、商品開発にこぎ着けた山口チーム

山口チームは、ワタリガニ漁と底引き網漁を行う漁師・久保田宏司氏のもとに飛び込みました。

画像1: 人の輪を広げ、商品開発にこぎ着けた山口チーム

高木安奈氏(慶應大学法学部)「山陽小野田に漁師が増えることは嬉しいものの、現実的には難しいという課題がありました。というのも、漁師になっても生活の保証がないというのです。そこに問題点が凝縮されていると考えました。不漁といった環境変化に加え、魚の市場価値の低さから、担い手不足が深刻化している現状もあります」

そこで、山口チームは人の輪を広げることを最初のステップに位置付けました。まず手始めに生産者や地域、自治体などにアプローチ。

画像2: 人の輪を広げ、商品開発にこぎ着けた山口チーム

坂田萌(日本航空西日本支社高松支店)「楽しく留学をしていて、気づいたら人の輪が広がり、副市長さんにもつながりを持てました。それらの縁で、商品開発を行うことができたんです。地元の方々も人が溢れていた昔の様子を取り戻したいという思いがあり、一丸となって取り組むことができました」

そうして地元の有名店「浜のてんぷら屋」とコラボレーションして山口チームが開発したのが「はぶ天」です。すり身のなかに山陽小野田産のほうれん草など、地元の食材が練り込まれており、おやつとしてもお酒のおつまみとしてもオススメです。オンラインで何でも手に入る現代ですが、地元の方々に地元の魅力を知っていただくことを大切にし、あえて山陽小野田にある「浜のてんぷら屋」の実店舗のみの販売にこだわりました。

新たなアプローチを重ねながら、視野を広げる

楠瀬礼氏(東京大学工学部)「今年度はあくまでも一歩目だと考えています。今後、色んな方々を巻き込みながら、新たな施策を講じていきたいです。5月に東京で行われる物産展への出展や、廃校になる小学校の活用を考えたり、現地大学生との連携も模索していきたいですね」

商品開発にまでこぎ着け、手応えを感じられた山口チームのメンバーは、得られたものも大きかったようです。

画像1: 新たなアプローチを重ねながら、視野を広げる

高木氏「地域創生に漠然とした憧れがありました。地元である福島県いわき市に戻って何かしたいという思いがあったんです。この留学を通して、地域の一員になれたという実感が得られたことは大きな財産です。地域の問題を、自分ごととして捉えられ、将来に向けた大きな経験値が蓄えられました」

画像2: 新たなアプローチを重ねながら、視野を広げる

楠瀬氏「地道なことの積み重ねが地域おこしなのだと、強く感じます。私は大学で建築を学んでいるのですが、建築分野は住宅から都市開発まで幅広いんです。自分に合ったスケールの目標を見つけることが大切だと感じました」

坂田「私の実家は淡路島で畜産農家をしていて、日本の地域や一次生産の現場はどこも同じという印象がありました。しかし実際には、地域ごとに雰囲気も課題もまったく違う。そして、課題を探るためにはコミュニケーションが大切だと感じました。また、ひとりよりもチームで取り組む方が、多方から地域や生産現場を見ることができ、より多くのアイディアが生まれるのだというのは大きな気づきでした」

画像3: 新たなアプローチを重ねながら、視野を広げる

留学生の存在自体が、地域を“かき混ぜる”要素になれた山口チーム。また地域事業の難しさ、チームワークの大切さを感じられたようです。

川魚の概念を越える感動を。熊本チームが取り組んだオンライン販売

熊本チームは、ヤマメやニジマスの養殖を手掛けているかわべ養魚場とダッグを組みました。

画像1: 川魚の概念を越える感動を。熊本チームが取り組んだオンライン販売

鍋谷帆花氏(青山学院大学コミュニティ人間科学部)「とても丁寧な仕事をしていて、生産者の魚に対する愛情を強く感じました。福岡で著名人に愛されたイタリア料理店で経験を積んだ専務さんは加工品へのこだわりも強いんです。購入者の方々への感謝もありました。しかし、餌代の高騰、コロナ禍で出荷量が減少しているほか、人手不足が課題でした。また、川魚のイメージへの理解不足という悩みも抱えていました」

そこで、川魚の魅力を訴求することを思いついた熊本チームは、「川魚の概念を超える感動を」というコンセプトで商品開発を開始。しかしコロナウィルス感染状況の影響で、現地に行くことができなくなりました。

画像2: 川魚の概念を越える感動を。熊本チームが取り組んだオンライン販売

持留悠(JALカード)「リモートでプロジェクトを進めました。パンフレットなどで商品の存在を知ってもらい、味わっていただき、動画などで理解を深めてもらうという流れを、お客さまに体験としてご提供し、実際に訪れてもらおうと考えたのです」

まず手始めに、ポケットマルシェでかわべ養魚場のヤマメやニジマスをオンライン販売。いずれも丁寧に骨を抜いてあるなど、手軽に召し上がっていただける品々の詰め合わせセットです。

画像3: 川魚の概念を越える感動を。熊本チームが取り組んだオンライン販売

持留「さらに販売数を伸ばすために、情報の拡散が課題だと強く感じています」

熊本チームは現在、かわべ養魚場が販売する商品の中から「カルデラ鱒の北イタリア風ソテー」をJALショッピングで販売するため手続き中。6月以降に販売開始予定です。熊本チームは、新たなセット商品考案の醍醐味とともに商品販売の難しさも学ぶことができたと振り返ります。

鈴木麗永氏(金沢工業大学経営情報学科)「値段だけでは価値を計れないということを感じました。自分の考える適正な価値と、他人が受け取る価値は違うということです。生産者の顔を知ることで、これまで縁がなかった地域と関わりを持つ動機になるとわかりました」

訪れることで得られる、本当の課題感と愛着

持留「実際に行くと、現状や課題がわかります。離れた場所でいくら知恵を絞っても、やはり机上の空論です。また、かわべ養魚場に対する強い愛着が生まれました。私の地元は熊本ですが、実家よりかわべ養魚場に愛着を強く抱くようになりました(笑)」

画像: 訪れることで得られる、本当の課題感と愛着

上入佐慶太(JALエンジニアリング)「留学生の皆さんは、毎晩のように会議を重ねていました。この経験はきっと宝になると思います」

この先も継続し、“学び”が続く青空留学のプロジェクト

本田俊介氏(日本航空執行役員地域事業本部長)「みなさんの発表を聞いて、課題を持ちながらも何かを掴んだという自信を感じました。地域課題や生産者の方々と触れ合うことで、自分の心の中に眠っていた『真にやりたいこと』に気づいたのでしょうか。この取り組みの良さはそこにあると思います」

青空留学1期の取り組みは、この最終報告会をもっていったん区切りを迎えますが、各プロジェクトは現在も継続中です。なぜなら、地域の課題解決のアプローチは、継続的に行うことが重要だからです。そこに関わり続ける7名の大学生とJAL社員は、各地域との接点を保ちながら、この先も新たな学びがあることでしょう。

画像: この先も継続し、“学び”が続く青空留学のプロジェクト

また、今回の青空留学における留学先はすべて漁業に関するものでしたが、農業や畜産など、課題を抱える生産者や地域は数多くあります。「都市と地方をかきまぜる」をコンセプトに、青空留学を始めとするさまざまな可能性は、この先も広がりそうです。

画像3: JAL新事業「青空留学」で学生たちが導き出した、地方創生のための“具体策”

JALの舞台裏

A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。

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