飛行機をご利用の際、「共同運航」や「コードシェア」、「アライアンス」といった航空用語を耳にしたことがあるかもしれません。これらは航空会社同士の提携を示すキーワード。航空会社がさまざまな手段でタッグを組むことによって生まれる、お客さまの多彩なメリットをご紹介します。
画像: コードシェアは、友人関係。JALが世界のライバルたちと手を組む舞台裏

フジドリームエアラインズとJALは、2021年の夏を目処にコードシェア便を拡大します。この“コードシェア便”という航空用語を、しばしば耳にしたことはありませんか。これは2社以上の航空会社が協力して共同運航している便のことを指しますが、このような協業を表すキーワードは数多くあるのです。

フライトの選択肢が広がり、世界中のラウンジが利用できるコードシェア

青木「まずコードシェア(共同運航)とは、提携している航空会社間で、1便に複数社の便名を付けることを指します。お客さまにとっては、他社の運航便でもJALのマイレージを獲得していただけるといったメリットがあります」

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豊川「たとえば日本からダラスに行くために、JAL便なら1日1便あったのが、1日2便運航しているアメリカン航空とコードシェアをすることで合計3便に増えます。さらにそこから乗り継ぎ便もアメリカン航空とコードシェア便を展開することで、同社のネットワークを活用いただけるのです。またコードシェア便の航空会社が運用する海外空港ラウンジをご利用いただけたり、JALでは採用していない大型機にお乗りいただけたり、気分を変えてフライトをお楽しみいただける醍醐味もあります」

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このように解説するのが、路線統括本部国際提携部の豊川啓次郎と青木萌です。コードシェアの歴史をさかのぼると実は古くからあり、JALでは1960年代から始まっています。

豊川「もともとJAL単独で路線を広げていましたが、どうしても手を伸ばしにくい場所もあり、提携によってネットワークを広げるため、1960年代から始めました。当時は今でいうコードシェアと異なりますが、エールフランス航空との提携からスタートしたと聞いています」

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青木「また当時の提携は販売だけを目的としていたわけではなく、ノウハウを学ぶ狙いもありました。事業を始めて間もないため、一日の長がある世界の航空会社のサービスを取り入れたかったのです」

コードシェア便に求める、JALならではのクオリティ

おかげさまで日本国内ではJALの名前は知られていますが、海外ではその限りではありません。コードシェア便を運航することで、海外のお客さまがJALの名前に触れていただけるケースも増えるのです。

画像: コードシェア便に求める、JALならではのクオリティ

青木「JALをご存じない海外のお客さまにも乗っていただいてサービスをご体験いただき、さらに知名度向上にもつながるかもしれません」

一方、他社の便だとしても、JALの便名が付いているからには、安心・安全品質も高い水準が求められます。しっかりと調査したうえで、提携しています。こうして、コードシェア便を共同運航する航空会社は現在国内では3社、海外では36社に及びます。

提携航空会社は、手を携える友人であるとともに、よきライバル関係

豊川「コードシェア便には欧米エリアが多い一方、アフリカはまだまだです。ネットワークを広げるには、交渉が必要です。たとえば友達ではあっても親戚ではないとなると、貸してくれない本もあるわけです。自社のお客さまでいっぱいになっている路線はお互いシェアしたくない。その交渉をするのが私たちです」

コードシェア便として提携する航空会社は、いわば友人関係でもありライバル関係でもあります。手を携える一方で、運賃設定では競合するなど、航空業界は複雑な関係のなかで戦略的な舵取りが求められます。

画像: 提携航空会社は、手を携える友人であるとともに、よきライバル関係

豊川「たとえば自社のお客さまだけで満席になる国内便を、他社のお客さまに販売しにくいこともあります。各社でさまざまな状況があるなかで、コードシェアができたり、できなかったりする便が出てきます」

各社の事情や乗り継ぎのタイミング、所要時間なども踏まえて交渉を重ねます。お客さまの利便性を最大限に広げ、ストレスを最小限に抑えるため、コードシェア便の設定は常に見直し続ける必要があるのです。

JALが加入する世界規模の航空連合、ワンワールドアライアンス

JALがコードシェアを行う航空会社の多くは、ワンワールドアライアンスという航空連合に所属しています。これは世界規模の航空連合で、本会員14社、準会員1社、計15社の航空会社が加盟し、世界170の国と地域、1,000以上の空港にアクセスでき、通常であれば毎日1万便以上を有する一大ネットワークです。

画像: JALが加入する世界規模の航空連合、ワンワールドアライアンス

青木「ワンワールドへの加盟を検討する以前の90年代までは、JAL単体でやっていく方針でした。しかしグローバル化の加速に加えて、将来の人口減による日本発マーケットの成熟化を見据えると、アライアンスを活用した海外市場でのプレゼンス強化が必要だと気づかされたのです」

ワンワールドアライアンスへの加盟は2007年。大きなアライアンスは世界で3つあり、国際線を運航する航空会社の大半が加盟していますが、なかにはアライアンスに所属していない航空会社もあります。

青木「アライアンスは、加盟するとアライアンス外の航空会社と提携しづらくなってしまう可能性があるので、提携の自由度を維持する為に入らない航空会社もなかにはあるのです」

豊川「その点、ワンワールドには寛容性がありまして、アライアンス外の航空会社との提携も許可されています。たとえば、エミレーツ航空はどこのアライアンスにも所属していませんが、JALとコードシェア便を運航しています。またスカイチームというアライアンスに所属するエールフランスとは古くから提携していますし、当社のワンワールド加盟後も良好な関係を維持しています」

高品質で安心・安全。ワンワールドアライアンスならではの信頼性

自由な提携に一定の制約が生じる可能性のあるアライアンスですが、補ってあまりある大きな利点があります。

画像: 高品質で安心・安全。ワンワールドアライアンスならではの信頼性

豊川「2社間の提携はそれぞれの枠組みを決める必要がありますが、アライアンスには共通のサービス基準があるため、多くの航空会社と一斉に提携することができます。JALをお選びいただくお客さまの選択肢が一挙に広がり、どのフライトでも高品質なサービスを受けていただけるのです」

そのため、ワンワールドアライアンスに加入するためにはサービスや安全性が高いレベルにある必要があります。

青木「裏を返せば、ワンワールドに加盟している航空会社は品質が保証されているという証しでもあるのです」

仲間から一歩踏み込んで、親戚へ。ジョイントビジネスという枠組み

さて、アライアンスから一歩踏み込んで、ジョイントビジネス(共同事業)という航空会社同士の結びつきがあります。JALではアメリカン航空、ブリティッシュエアウェイズ、フィンエアー、イベリア航空、マレーシア航空と実施しているほか、ハワイアン航空や中国東方航空、カンタス航空との共同事業についても検討中です。

画像: 仲間から一歩踏み込んで、親戚へ。ジョイントビジネスという枠組み

豊川「アライアンスを組んでもコードシェアをしていても、まだ“お友達”なんです。結局は、収益の高い自社便であることが望ましいことに変わりありません。アライアンスという枠組みが成熟したなか、ジョイントビジネスは新たな協業の枠組みとして世界的なトレンドになっており、JALも積極的に取り組んでいます」

共同事業を通じて実現されるお客さまの利便のひとつに、ご利用便の選択肢の拡大があります。

豊川「たとえば成田から欧米への便の多くは、お客さまのご利用が多い午前中の出発便です。しかし、日本の地方からご移動されるお客さまなどは、午後発の方がご都合がいいケースもあるわけです。そこで共同事業を行う航空会社2社が相談して、どちらかが午前、もう一方が午後に出すというように分担することができます。通常のコードシェアでは販売手数料を提供するのですが、共同事業では対象路線の売り上げをひとつの財布に入れて分配します。つまり共同事業の路線のどの便を売っても同じ収入になるわけです」

独占禁止法に抵触するため、価格や運航スケジュールを航空会社間で話し合うことはありません。しかし、ジョイントビジネスの枠組で協業することでお客さまにメリットが大きくなる場合、独占禁止法の適用除外が検討されることがあります。

より深い協力関係が実現する、サービスレベルの底上げ

あたかもひとつの会社のように2社の便を運航するジョイントビジネスは、お客さまの利便性を最大化することができる仕組みです。ジョイントビジネスならではの深い結びつきが可能にする、サービスの底上げというメリットもあります。

豊川「日本の航空会社の永遠の命題は、機内食における和食のご提供です。JALをご利用されるお客さまが、提携する航空会社のサービスで気にされることが多い部分でもあります。そのため、ジョイントビジネスを進める結びつきの深い航空会社とは、お互いのお客さまにより満足していただくため、相互のメニューを監修しあうといった取り組みも行っています」

ジョイントビジネスの枠組では、しばしば『Your customer is our customer, Our customer is your customer』というキーワードが聞かれます。相互のお客さまの隔てがなくなるという意味です。通常、サービスの底上げは他社との差別化が目的のひとつですが、他社と連携してサービスレベルを高める動機にもつながります。

画像1: より深い協力関係が実現する、サービスレベルの底上げ

青木「日本のおもてなしやサービスは世界的に見ても高いレベルにあります。そこで数年に一度、JALの客室乗務員が世界の航空会社の乗務員を招いて、おもてなし講座を行うといった取り組みもしています」

親戚づきあいを始めた航空会社がお互いの家族を招いての料理を教えあう……というとイメージが近いかもしれません。

画像2: より深い協力関係が実現する、サービスレベルの底上げ

豊川「海外の航空会社でも違和感なくおもてなしを提供するための課題はまだまだあります。たとえば洋食のコースだと最初にスープをご提供しますが、和食のみそ汁を最初にお出しすると違和感がありますよね。共同事業は航空会社間で文化の差異を互いに理解し、より高品質なサービスを提供する新たな手段ともいえるわけです」

路線を絶やさない。コロナ禍でジョイントビジネスの取組みを強化

従来はネットワーク拡大を目的のひとつとして、コードシェアやアライアンス、共同事業など、多角的に協業を進めてきた航空業界ですが、世界的なコロナウイルスの感染が続くなかで、ジョイントビジネスの重要な役割が注目されています。

豊川「ジョイントビジネスは、ネットワークの拡大が注目されがちですが、コロナ禍で各社が大規模な減便や路線縮小を強いられるなか、ネットワークの維持・回復に向けた連携が大事なテーマとなっております」

青木「航空会社同士が手を取り合い、お客さまにご不便が掛からないようにフライトをご提供し続けましょう、という考えなんです」

ジョイントビジネスは選択肢を“増やす”のみならず、“絶やさない”手立てにもなるのです。世界の混乱が収まらないなか、それでも飛行機を利用しなくてはならないお客さまはいらっしゃいます。航空会社同士が協力しあうことによって、「いざというとき、世界中どこにでも行ける」という選択肢をご提供し続けられるのです。

画像: 路線を絶やさない。コロナ禍でジョイントビジネスの取組みを強化

このように、航空会社同士の協力関係のあり方はさまざまです。いずれも、お客さまのメリットを増やすもの。いつか国際線をご利用の際には、JALが提携する航空会社の便も、ぜひご利用ください。

JALの舞台裏

A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。

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