日常を忘れて贅沢な時間を。本場ヨーロッパで観るオペラの醍醐味

INTERVIEW

田尾下 哲

Tetsu Taoshita

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「観客もオペラの世界の一部に」。田尾下哲が語る

日常を忘れて贅沢な時間を。本場ヨーロッパで観るオペラの醍醐味

2018.06.19

オペラ初心者には、観劇以外の楽しみも充実したニューヨークがおすすめ

JAL:田尾下さんは世界中の劇場に足を運んでいらっしゃいますが、なかでも思い入れのある劇場はどこでしょうか?

田尾下:やはりスイスのチューリッヒ歌劇場ですね。私が共同演出家として、初めて海外での公演に参加したときの劇場です。

チューリッヒ歌劇場

チューリッヒ歌劇場

JAL:1834年につくられた、歴史ある劇場ですね。

田尾下:チューリッヒ歌劇場は、座席数がそんなに多くないんです。だからお客さまとの距離がすごく近いし、音響もきれいに全体に行き渡る。歴史のある劇場ですし、世界でもっとも多く意欲的な新制作の舞台を生み出している劇場でもあります。商業的な観点を抜きにして、純粋にオペラを上演するのにもっともふさわしいサイズにつくられたんだと思います。
すぐ隣に大きな湖、チューリッヒ湖があるのもいいですね。稽古の途中、気分転換に湖畔でひとり考えごとをしたこともありました。また、一般のお客さまには見えない部分なのですが、劇場の楽屋裏には歴代の名だたる出演者のサイン入りブロマイドがずらりと貼ってあって、それはそれは壮観なんです。眺めていると、オペラの演出家からいちファンに戻ってしまいますね(笑)。

JAL:オペラ初心者におすすめの劇場といえばどこでしょうか?

田尾下:ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でしょうか。夜遅くまで地下鉄が走っているので便利ですし、街なかの言語も観光客にとって比較的わかりやすい英語で、ヨーロッパと比べると日本人にも不安が少ないです。1階ではCDやDVDなどのグッズを販売しているショップが充実していたり、出演者の写真が飾られていたりと見るものがたくさんあるので、いくら早く会場に着いても時間を持て余すことなく楽しめると思います。

レッドカーペットの階段が美しい、メトロポリタン歌劇場のロビー

レッドカーペットの階段が美しい、メトロポリタン歌劇場のロビー

田尾下:またニューヨークには、オペラ以外にも楽しめるものがたくさんありますよね。個人的に好きなエリアは、マンハッタン最北端のインウッドというところです。インウッドヒルパークという大きな公園があるのですが、そこにはうっそうとした原生林が生い茂っていて、ハドソン川も見える。すぐ近くの都会の喧騒からは想像もつかないような大自然の景色が広がっているのが素敵です。

正装をしていけば、観客でもオペラの世界の構成員になれる。非日常を満喫しよう

JAL:「海外でのオペラ観劇は敷居が高そう」と思われている方も多いと思いますが、そういった方に向けてのアドバイスがあればお願いします。
田尾下:自戒を込めていえば、やはり開演時間よりもできるだけ前に劇場に足を運び、非日常の空間と時間をじっくり楽しんでいただきたいです。スマホの電源は切って現実から離れて、ふだん頑張っている自分へのご褒美としてオペラを楽しむのもいいのではないでしょうか。

JAL:ドレスコードについては、どのように気をつければよいでしょうか?

田尾下:安価な席もあるので、ジーンズなどのラフな服装で楽しんでいる方もいますよ。でも「この服でよかったかな」「浮いていないかな」などと心配することなく集中してオペラを楽しむためには、やはりそれなりの正装をしていくのがおすすめです。

正装をしていくと、お客さまであってもオペラの世界の構成員になれる。「今日は悲劇を観に行くからこの服を着よう」とか、おしゃれをするところからぜひ楽しんでいただき、オペラという非日常の世界に参加してほしいです。『ゴッドファーザー』や『プリティ・ウーマン』などの映画でも描かれてきた世界に参加できると考えると、すごく特別な体験ですよね。

石畳の道を馬車が走るヨーロッパの街。のんびり歩いて劇場に向かい、贅沢な時間を楽しんで

JAL:言葉がわからないからと心配する必要はなく、雰囲気を含めて楽しめる要素がたくさんあるのですね。

田尾下:そのとおりです。より深く楽しみたい人は、物語のあらすじや登場人物の相関図など、最低限のことを下調べしていくのもおすすめです。最近では海外の劇場でも、日本語はまだ少ないですが、英語の字幕は必ず出ています。さらにオペラが楽しくなってきたら、観に行く演目を映像で予習してみて、それと違う当日の演出や歌い方、指揮者のテンポなどを楽しむのもいいですね。オペラはつねに一期一会。その時代、そのキャスティング、その劇場でしか見られない一度きりの公演を、ぜひ存分に味わってほしいです。
JAL:特に、オペラの文化を育んできた海外での観劇は、やはり特別なものですか。

田尾下:そうですね。ヨーロッパの街ではいまだに石畳の風景が残っていたり、そこを馬車が走っていたりする。この道をあの作曲家が、あの歌手が歩いたんだな――そう考えながら劇場へと向かうだけで、観劇の体験もさらに特別なものになると思います。上演前だけでなく終演後も、劇場近くのバーなどで観客が感想を語り合っていたり、ときには出演者が顔を出したりします。

風情あるイタリア・ローマの路地の風景

風情あるイタリア・ローマの路地の風景

田尾下:いまではライブビューイングやDVDで海外公演の映像も気軽に観られますし、ミラノ・スカラ座など海外の歌劇団の来日公演も行われるようになりました。それでもやはり、海外でオペラを観るというのは特別な体験です。ゆったりとした贅沢な時間を、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか?

田尾下哲

1972年生まれ。ドイツ人演出家ミヒャエル・ハンペに師事し、2000年から演出家として活動を開始。03年より新国立劇場に所属し、オペラ・チーフ演出スタッフとして約70以上のプロダクションに参加。アンドレアス・ホモキ、ジョナサン・ミラー、グリーシャ・アサガロフなど世界の第一線で活躍する演出家と協働した。2009年、第20回五島記念文化賞オペラ新人賞受賞。同年6月、チューリヒ歌劇場『カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師』で共同演出家・振付家としてヨーロッパデビュー。これまでの演出作品に、日生劇場『カプレーティ家とモンテッキ家』、新日本フィル『ペレアスとメリザンド』、二期会創立60周年記念公演『カヴァレリア/パリアッチ』、あいちトリエンナーレ『蝶々夫人』、神奈川県民ホール開館40周年記念オペラ『金閣寺』など多数。近年はオペラの演出に留まらず、ミュージカルやストレイトプレイ、映像作品など多彩な作品に携わる。

田尾下哲

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