日常を忘れて贅沢な時間を。本場ヨーロッパで観るオペラの醍醐味

INTERVIEW

田尾下 哲

Tetsu Taoshita

  • 国内

14

「観客もオペラの世界の一部に」。田尾下哲が語る

日常を忘れて贅沢な時間を。本場ヨーロッパで観るオペラの醍醐味

2018.06.19

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オペラの本場、ヨーロッパでの観劇は特別なものといわれます。オペラの歴史をつくり上げてきた劇場だけが持つ特別な風格、100年以上前の風景を現在も留める街並み、熱狂的な観衆たち。日本では体験できない、本場ならではの魅力がそこにはあります。

今回はそんな海外での観劇の醍醐味や楽しみ方を、演出家として国内外で数々のオペラ作品を手がけてきた田尾下哲さんにレクチャーしていただきます。「観客もまたオペラの世界を構成する一部」と語る田尾下さんのお話を聞いていると、海外での旅体験を何倍にもドラマティックにしてくれる観劇への憧れが、ふつふつと湧き上がってきます。

文:大石始 写真:玉村敬太

「愛や命の大切さを音楽で伝えたい」。その一心で、医者からオペラ演出家の道へ

 
OnTrip JAL編集部(以下、JAL):田尾下さんは中学、高校時代はハードロックに入れ込んでいたそうですが、オペラに開眼するきっかけは何だったのでしょうか? 
田尾下哲(以下、田尾下):学生時代はバンドを組んでいて、ギターをやっていました。当時は、世界でいちばん歌がうまいのは「Wham!」のジョージ・マイケルだと思っていましたね(笑)。ただクラシックにも、母の影響で触れてはいました。そんなある日、ルチアーノ・パヴァロッティ(イタリアのオペラ歌手)の歌をCDで耳にする機会があったんです。それが叙情豊かで大変にすばらしくて、ジョージ・マイケルより歌がうまい人がこの世にいるのか! と驚きました(笑)。

田尾下哲さん

田尾下哲さん

 
JAL:その後、ご友人の死をきっかけに医者の道をめざしたそうですね。

田尾下:そうですね。命を救うために一生を捧げる人になりたいと思っていました。その友人は白血病で亡くなったんですが、同じ頃ホセ・カレーラスというオペラ歌手も白血病を煩っており、その後復活したんです。同じ病気になったのに、私の友人は死に、カレーラスは助かった。そのことに当初はなんともいえないやるせなさを感じました。

でも、カレーラスが白血病基金をつくり、同じ病気の人のために活動している様子を見て、次第に彼の音楽に対する興味が湧いてきました。そこで歌を聴いてみたところ、非常に情熱的でドラマティックで。次第に惹かれていったんです。音楽やオペラはただ単に人の心を癒すだけでなく、医者にすら踏み込めない愛や命の大切さまで、聴く人に伝えることができる。こんなに素晴らしい仕事はないなと考えるようになりました。

劇場のホワイエでワインを飲んだり、友人と語らったり。開演前から「観劇」は始まっている

 
JAL:その後、ドイツ人演出家のミヒャエル・ハンペ氏に師事し、演出の道に進まれることになったのですね。初めて海外でオペラを観たのはいつでしたか? 
田尾下:1999年に当時26歳で訪れた、イタリアのミラノ・スカラ座が最初だったと思います。オペラに携わる人にとって、スカラ座はまさに夢の舞台。私自身がオペラに開眼するきっかけとなったパヴァロッティの音源も、スカラ座での公演でした。いつかは足を運んでみたい憧れの劇場だったんです。

ミラノスカラ座

ミラノスカラ座

 
JAL:日本の劇場との違いを感じられましたか?
 
田尾下:すごく感じましたね。日本人は、開演ギリギリに劇場に駆け込む方が多いんですよ。私自身も本場のオペラを見るまでは、指揮者が登場して音楽が鳴り始めるまでに席につければいいと思っていました。でもヨーロッパの人々は早めに劇場に着いて、ホワイエ(ロビー)でワインを飲んだり、友人と語らったりと、開演前の時間をゆったりと味わっているんです。席に座って携帯電話で仕事をしているような人はほとんどいない。こうした贅沢な時間の過ごし方はヨーロッパならではだと思いました。 
JAL:上演開始前から、観劇の時間は始まっているんですね。
 
田尾下:スカラ座を訪れたのと同じ頃、イタリアの教会でミサに参加したことがあったんです。私はそのときもミサが始まるギリギリの時間まで、携帯で電話をしたりメッセージを送ったりしていました。でも地元の人はどうかというと、静かに聖書を読んだり、じっと物思いにふけったり。ミサに臨む心の準備をするための時間として、待ち時間を過ごしていたんです。こうした心の持ち方や感受性が、オペラという文化を育んできたのだなと実感したできごとでしたね。

ヨーロッパ人にとって、オペラはハレの場。クリスマスや大晦日、特別な日を彩る生活の一部

 
JAL:ヨーロッパの人々にとって、観劇はどのような意味を持つものなのでしょうか? 

田尾下:熱狂的なファンは別として、一般的な現地の人々にとって、オペラはハレの場です。たとえば12月24日のクリスマス・イブには、あらゆる劇場がまず満席になるんです。有名な『くるみ割り人形』をはじめとして、クリスマスを題材にしたオペラの演目はたくさんありますし、そうでない演目でも満員になります。家族で劇場に足を運び、そうした演目を楽しみながらクリスマスを祝う、という習慣がヨーロッパにはあるんです。

クリスマスシーズンの、ウィーンの街なかの様子

クリスマスシーズンの、ウィーンの街なかの様子

 
JAL:年中行事と深く結びついたものなんですね。
 
田尾下:そうですね。ジルベスターと呼ばれる大晦日の公演も人気です。オーストリアのウィーン国立歌劇場をはじめとしたドイツ語圏の劇場では、年越しをテーマとした『こうもり』という物語が、毎年の年末年始の風物詩となっています。このように、彼らにとって劇場は身近でありながらも特別な場所。「わが街の劇場」という誇りを持っているんですね。

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