モデル・前田エマに聞く「旅は出かけるより帰るためにある」

INTERVIEW

前田 エマ

Ema Maeda

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21

旅に出ると、本当の自分を思い出す

モデル・前田エマに聞く「旅は出かけるより帰るためにある」

2018.08.07

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フィルムカメラは現地で現像がおすすめ。風合いの違いもすべて思い出になる

 
 
JAL:旅の記録や表現の手段として、写真や絵日記、文章など、いろいろな方法がありますよね。前田さんは多才なので、どう使い分けているのか気になります。

前田:写真は、その瞬間を満喫しながら、気持ちのままに撮れるのがいいですね。絵や文章を書こうとすると、どうしても考える時間、書き留める時間がかかってしまうので、感情とワンテンポずれてしまう。フィルムカメラは、できれば現地で現像するのがおすすめです。色合いや風合いも、日本で現像するのと違って面白いんですよ。大きさひとつとってみても、日本で一般的なL版とかはなくて、トリミングのしかたも違う。それを含めて思い出にできる気がします。

インスタントカメラもよく使います。充電の必要がないうえに、デジカメに比べて盗難の心配がないし、万が一なくしたとしてもダメージが少ないから、海外旅行では特に重宝します。外国ではほとんど売っていないようなので、現地で現像できるかはわからないのですが。


JAL:パリ旅行へ出かけたときのことを語っている過去のインタビュー記事では、「最初の頃は引いた視点から街を撮っていたけれど、日が経つにつれ、被写体が身近なものになっていった」と話していらっしゃいましたね。

パリの街並み。「雨続きの旅でした」と前田さん(撮影:前田エマ)

パリの街並み。「雨続きの旅でした」と前田さん(撮影:前田エマ)

前田:着いてすぐの頃は、「自分は部外者で、この街にお邪魔している」という気持ちが強かったんです。でもその場所で時間を過ごしていくうちに、少しずつ、日本にいるときと近い感覚になっていきました。人とのつき合いと似ているかもしれませんね。初対面の人とも一緒に過ごすうちに、その人との距離感のとり方がわかってくる。「これくらい近づいてもいいんだ」と思えるようになる感じです。

JAL:写真以外に、日記などで旅の記録を残すことはありますか。

前田:日記は書かないのですが、旅に出ると母に手紙を書きます。送った手紙は母がとっておいてくれているので、あとから見返すと、その日あったことがわかって日記代わりにもなりますね。

旅に出ると、自分の輪郭が浮き彫りになっていく。「私はこんな人間だったんだ」

 
 
JAL:創作活動の際、旅はどんな影響を与える存在でしょうか。

前田:エッセイを書くにしても絵を描くにしても、自分がふだん抱えている疑問や感動などが題材になります。旅に出るとそういう、自分がもともと持っている感性を再発見できる気がするんです。

前田:私は鈍感で雑な部分が多いので、日常生活が続くと自分の感情に慣れてしまうところがある。暇だとずっと寝てしまうんです。叶えたい夢があるはずなのに。でも旅先で、毎日たくさん予定を詰め込んで、いろんな新しいものを吸収するなかで、急に雨が降ってきたときとかにふと日常を思い出して、「あ、私やっぱり雨の匂いが好きだな」と気づいたりするんです。

「私はこういうのが苦手なんだ」とか「ここまでお腹がすくとこうなるんだ」とか、自分でも知らなかった意外な一面や、いろんなことが浮き彫りになっていく感じがします。


JAL:アートを目当てに旅先を決めるとおっしゃっていましたが、特に思い出に残っている場所はありますか。

前田:いろいろありますが、フランスの田舎町にある「シュヴァルの理想宮」はすごかったです。郵便配達員のおじいちゃんが、30年以上もかけて少しずつ、石を拾っては積み上げてつくったお城のような建物です。彼自身は住んでいる村から生涯出たことがなかったのですが、「理想宮」はいろいろな動物やモンスター、神話の登場人物などをかたどってつくられています。配達のときに見たポストカードなどから、外国に思いを馳せていたといわれているんです。テレビで見たときに「死ぬまでにどうしてもこれを見たい!」と思って、見に行きました。

JAL:実際に行ってみて、テレビの画面で見るのと違いはありましたか。

前田:テレビで見たとおりにすごかったです(笑)。テレビのまんまでした。でも私はなんでも、自分で本物を見たものについてしか「面白い」とか「面白くない」と言いたくないから、行けてよかったです。

「イライラ」こそが創作の原動力。「旅は出かけることより帰ってくることが大事」

 
 
JAL:最近の旅で、印象に残っている行き先はありますか?

前田:大分と京都の田舎で暮らす友人家族を訪ねたことですね。彼らとともに過ごしていると、時間の流れがまったく違うことに気づきます。そこでのゆっくりとした生活を知ったあとに東京へ戻ってくると、あの時間が夢だったんじゃないか、いやむしろ、いまここで過ごしている忙しい時間がニセモノなんじゃないか、と不思議な気持ちになりました。

イライラしているような感じです。「ここじゃないところに行きたい」とか、「もっとこういう経験をしたいのに」「もっと人を大事にしたいのに」とか。でも、その「イライラ」が私の創作の原動力だし、もっといえば「このイライラこそが私なんだろうな」と最近思いはじめています。


JAL:田舎に憧れながらも、東京にいることを選ぶということでしょうか。

前田:田舎暮らしは憧れるけれど、いまの私にはその必然性がないんです。そこに恋人がいるとか、そこでしかできない仕事があるわけでもないので。よそ者のままで終わってしまうと思う。だからいま、私は東京で生活する人間なんだなって噛みしめています。

東京でのイライラを一瞬だけなくせる方法は、何かをつくり出すことと、楽しかった旅の思い出を振り返ること。「私が東京で生きているいまこの瞬間、彼らもまた、あの場所でこの時間を過ごしているんだな」と思い出すと、私はここで頑張ろうって思えるんです。

JAL:旅に出ることで、自分のいまいる地点を再確認するんですね。

前田:ウィーンにいるときも、「あと何日で東京に帰る」というのをすごく意識していました。「私は結局、ここの人間じゃない」。私には、「帰る」という目的がある。だからこそ、その場所での時間も有意義に過ごせる気がします。

反対に、いろんなものを見たり、新しい人に出会ったりする旅先の時間があるからこそ、帰ってきてから少し違った視点で日常を見られるようになる。「私はここで何ができるか」と、あらためて考えさせられるんです。私にとって、旅は「出る」より「帰る」ことが大事。東京へ帰ってくるために、私は旅に出ているのかもしれないですね。

 
 

前田エマ

1992年神奈川県生まれ。2015年春、東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、その分野にとらわれない活動が注目を集める。芸術祭やファッションショーなどでモデルとして、朗読者として参加、また自身の個展を開くなど幅広く活動。現在はエッセイの連載を雑誌にて毎号執筆中。

前田エマ

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