写真家・藤代冥砂がシンプルに暮らす家「沖縄のしろ」
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自然と調和した外人住宅と異国感

写真家・藤代冥砂がシンプルに暮らす家「沖縄のしろ」

2017.05.25

世界中を旅しながら撮影を続けてきた藤代冥砂さんは、2011年沖縄へと移り住み、その自然の豊かな色彩に魅了された。2016年、沖縄の風景を捉えた写真集『あおあお』(赤々舎)を出版し、以降も沖縄と東京を行き来しながら撮影を続けている。
 
移り住んで6年。沖縄という島では、東京とは違った速度で時間が流れ、独特の風土のなかに「癒し」あったという。写真家・藤代冥砂さんが暮らしのなかで見つけた沖縄の魅力を綴る連載エッセイの最終回です。
 
連載第1回「沖縄のあお」、第2回「沖縄のみどり」もあわせてお楽しみください。
 
文・写真/藤代冥砂

沖縄の外人住宅に暮らして

沖縄では、「外国人住宅」と呼ばれている家に住んでいる。主に六十年代に米軍によって建てられた従軍者向けの住宅で、白いコンクリート造りの簡素な平屋は、今ではカフェや雑貨などのお洒落な店舗にも多く使われているが、もちろん一般の日本人も住んでいる。
 
白い四角い家は、沖縄の海の「あお」山、自然の「みどり」のなかで目立ちはするものの、不思議な調和もあって、日本でもアメリカでもない異国感を醸し出している。

沖縄の外人住宅に暮らして

その白い借家の外人住宅に住んで6年。通気性や古い排水管などには目を瞑らなくてはいけないものの、概ね満足して住み続けている。
 
どっしりとしたコンクリートの風合いには、木造の軽やかさ、しなやかさ、自然との寄り添いなどは無いのだが、台風にはびくともしないし、白い四角い箱というシンプルな空間につられて、シンプルな内装、家具、生活雑貨に興味が湧き、ひいてはシンプルな暮らしにも繋がっていきそうで、そういう面も案外見逃せない。家の形状がもたらす普段の暮らしぶりが人の内面にも影響を及ぼすこと。白い家はそのことを実感させてくれた家でもある。
 
外人住宅は、主に米軍基地周辺に建てられ、見晴らしの良い土地にあることが多い。もともと高台などの眺望のきく土地は、沖縄では墓地に使われることが多いが、アメリカ人は気にすることなく、眺めのいい場所として積極的に住居地に当ててきた。

今でも残っている外国人住宅は墓地に隣接しているケースが多い。私の住む家からは少し離れているので、視界に墓地はないのだが、墓地と住居が近いことを気にする人は結構多いかもしれない。かく言う私も気になるほうだが、視界になければ無いことにできる鈍感さが幸いしている。

先祖崇拝が残る沖縄での暮らし

沖縄では先祖崇拝が大切にされ、ご先祖さまには良い土地をという心から高台に墓地があると聞く。私は高い場所が好きで、散歩中にも上へ上へと登ってしまうため、墓地に行き当たることが多い。まるで墓地巡りをしているかのように。そこからの眺めは実に素晴らしく、沖縄の人の信仰心の厚さをうかがい知る。ご先祖さまたちもさぞ晴れやかな気持ちでいらっしゃることだろう。
 
話を家に戻すと、我が家からの眺めも同様に良く、遠くに東シナの海と慶良間諸島の島影がある。早朝に起きて夕刻までにいそいそと仕事を済ませて、簡素なアウトドア用の椅子を庭に出し、プシュッとビール缶のプルリングを引く時の幸福は、日々の大切な場面である。この時のために、薄暗い時分からの起床があると言ってもいいくらいに。

先祖崇拝が残る沖縄での暮らし

癒しと「農」のある生活

その起床時についてだが、私は早朝から起きることが多く、まず軽いヨガをしてから瞑想へというのが流れになっている。沖縄という島国は、癒しという言葉と共に語られることが多いが、私もご多分にもれず、沖縄に移住してから、「癒し」に興味を持った。
 
私の場合は、癒されることだけに飽き足らず、人を癒すことにまで広がり、様々なことを試行錯誤中である。その中でも瞑想はお金も道具も不要とあって習慣化しやすく、今ではワークショップを月に4度ほど開くまでになった。心のセルフメンテナンスとして、実に奥深い。

癒しと「農」のある生活

沖縄に来てから始めたことはそれ以外にもあって、農的生活もそのひとつだろう。今年は多忙もあって、月に一週間ほどしか沖縄に居つけず親しめていないが、ちょっと前までは畑を借りて家庭菜園的なことをしていた。麦を作ったこともある。
 
沖縄の土は本土とは違う性質でなかなか苦労もあるのだが、日々草土に触れていることで得られる気持ちの安らぎがある。不思議なもので、草土が心のアース線となって、余分なものを浄化してくれるようで、作業後の晴れ晴れしさは代え難いものだ。これからどこへ移住しようとも、草土との繋がりは絶やさないだろう。

沖縄には、海と空の「あお」があり、大地の「みどり」があり、そして暮らす家の「しろ」があって、私はその色彩の中で生活させていただいている。意味や計画からしばし離れて、ただただ色彩に包まれるように暮らすこと。私が沖縄から受け取ったプレゼントはこのことだろう。

その色は、私が沖縄を離れても、丁寧な深呼吸をひとつ、そして目を閉じれば、いつも心と体に広がってゆく。広がりは、浜の波のように、寄せては引き、寄せては引き。

藤代冥砂(ふじしろ・めいさ)

1967年千葉県生まれ。女性、聖地、旅、自然をメインに、エンターテイメントとアート横断した作品を発表。写真集に『RIDE RIDE RIDE』(スイッチ・パブリッシング)、妻の田辺あゆみを撮った『もう、家に帰ろう』(ロッキング・オン)、など多数。「新潮ムック 月刊シリーズ」(新潮社)で第34回講談社出版文化賞写真部門受賞。小説家として『誰も死なない恋愛小説』(幻冬舎)、『ドライブ』(宝島社)などを発表し、近年は詩作にも取り組んでいる。

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

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