下準備なしが面白い。モンベル創業者が教える意外な「旅」の流儀

INTERVIEW

辰野 勇

Isamu Tatsuno

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起業家にして冒険家・辰野勇が語る

下準備なしが面白い。モンベル創業者が教える意外な「旅」の流儀

2017.09.21

「ぼくは、旅に出るとあたり構わず笛を吹いてます」

 

JAL:辰野さんが旅先に必ず持っていくもの、何かありますか。

 

辰野:必ずというわけではないけど、笛を持っていきます。専用の布ケースに入れて持ち歩きます。

 

JAL:いろんな種類の笛をお持ちなんですね。

辰野さんの笛コレクション。右端は天然石がそのまま笛になったもの

辰野さんの笛コレクション。右端は天然石がそのまま笛になったもの

 

辰野:旅先ではわりと笛を買ってくることが多いんです。1996年に、チベットのヤルツァンポ川の源流を探索するというテレビ番組の企画で、ミュージシャンの渡辺貞夫さんとご一緒したんです。そのときに中国の成都でたまたま横笛を買って、渡辺さんに吹き方を教えてもらってから、すっかり笛にハマってしまいました。

 

JAL:旅先で楽器を鳴らすというのは、とても気持ちよさそうですね。

 

辰野:いいもんですよ。ぼくは、旅に出るとどんな場所でもあたり構わず笛を吹いてます(笑)。最近では、自分でつくった笛をよく持ち歩いています。どこにでも生えてる竹なんだけど、とてもいい音がするんです。

笛を集め始めるきっかけになったという、中国で買った上海横笛

笛を集め始めるきっかけになったという、中国で買った上海横笛

自転車やカヤック、トレッキングなど、「人力で楽しむ旅」がじわじわ流行中

 

JAL:モンベルの取り組みについてもお聞かせください。日本国内の自然を満喫する旅として「ジャパンエコトラック」という取り組みを進めていらっしゃいますね。

 

辰野:はい。「ジャパンエコトラック」は各地の空港、駅、港を起点にして、そこからはなるべく人力だけで旅をするという、モンベルが提案している新しい旅のスタイルです。人力というのは、自転車でも、カヤックでも、徒歩でもいいんです。
 
もとになったのは、モンベルが2008年に鳥取県の大山ではじめた、『SEA TO SUMMIT』という環境スポーツイベント。これは、カヤック、自転車、登山といったアクティビティーを通じて海、里、山を体感してもらうことと、環境シンポジウムがセットになったイベントです。日本各地から訪れる参加者はもちろん、地元の方に楽しんでもらう機会にもなっていて非常に好評なんですが、1大会につき300人限定の、年に1回きりの企画なんです。
 
そこで、それぞれが個人で計画を立てて、好きなように自然を巡ってもらうために、受け入れ態勢を整備したり、ルートマップを作成して配布したりといった活動を始めたんです。ジャパンエコトラックのルートは現在、全国10エリアにまで広がっているんですよ。

海、里、山を人力で体感する旅「ジャパンエコトラック」

海、里、山を人力で体感する旅「ジャパンエコトラック」

JAL:JALでも自転車部を結成して、空港を起点にしたツーリングの旅を実践しようとしているんですよ。

 

辰野:そうみたいですね。すでにいくつかの空港では実現していますが、ツーリングの旅をより快適にするには、例えば空港の到着ロビーで荷物を預かって、そのまま宿泊地まで運んでくれるというサービスなどが重要になってきます。そういったサービスがあれば、空港から自分の輪行バッグ(自転車を分解して持ち運ぶための、専用のケース)を広げて自転車で出発したり、レンタサイクルを借りたりして、スムーズに人力の旅が始められますから。いま、そういう仕組みを整えつつあるところで、実際にすごい勢いで増えています。

旅の醍醐味は人との出会い。大自然もいわばそのひとつのきっかけ

 

JAL:あえて人力で旅をすることの魅力について、辰野さんはどう考えていらっしゃいますか。

 

辰野:車で移動する便利な旅を決して否定するわけじゃないですが、車だと、どうしても点から点へ目的地を移動することになって、その道中は車窓から見てるだけ、ということになりやすい。たとえば地元で親しまれてきたような小さな八百屋さんとかだと、駐車場がないところも多いでしょ。でも自転車だったらお店の横にぱっと停めて、小さな店にも入っていける。そこから人とのふれ合いが始まって、点と点をつなぐ線のなかに、さらに面ができてくると思うんです。
 
ぼく自身の旅もそうだけど、やっぱり人に会って、そこにつながりができることがいちばんの醍醐味。そういう意味では、大自然というのもひとつの媒体、きっかけだと思ってます。「あの人に会いに行く」ってことを旅の目標にすることもあれば、旅のなかの偶然の出会いから長くおつき合いが始まることもありますけど、どこへ行ったとしても必ず人との出会いはありますからね。

「すごい海や山へ行ってみたい」。純粋な気持ちが出会いを生み、ビジネスにもつながる

 

JAL:「ジャパンエコトラック」は、人と自然、人と人の交流から、ひいては地域活性化にもつながる取り組みなんですね。

 

辰野:そうですね。だけど、ぼくにとってそういった理屈は後からついてくるもの。まずは単純に、すごい海、すごい山があるのなら、そこへ行ってみたいじゃないですか。『SEA TO SUMMIT』を始めた鳥取の大山も、日本海からダイナミックにせり上がった、冬にはかなりの積雪がある厳しい山で、若い頃からずっと登っているんです。
 
つまり、自分たちが楽しいと思うこと、自分たちがやりたいことをやっていると、この指とまれという感じで人が集まってくる。それがいいんじゃないかな。その先に地域の交流人口が増えるとか、いろいろな社会的意義も出てくるんだけど、それは後からの話なんですよ。

 

JAL:若い頃から各地を飛びまわっていらっしゃる辰野さんにとっても、すごい海、すごい山、豊かな自然はまだまだありますか。

 

辰野:日本国内だけでも、いまだに新しい発見がたくさんありますよ。それを追い求めて出かけて行った先で誰かと出会って、お茶でも飲んでいきませんかってところから交流が始まって、次のステージが広がる。場合によっては、そこからビジネスチャンスも生まれてきます。旅をすることでどんどん世界は広がっていくんですよ。

 

辰野勇

1947年、大阪府堺市生まれ。少年時代にハインリッヒ・ハラーのアイガー北壁登攀記『白い蜘蛛』に感銘を受けて以来、登山に目覚める。1969年にはアイガー北壁日本人第二登を達成し、名実ともに日本のトップクライマーに。1970年には日本初のクライミングスクールを開校。1975年、28歳の若さで登山用品メーカー、株式会社モンベルを設立。カヌーやカヤックにも熱中し、『第3回関西ワイルドウォーター大会』優勝。一方、1991年には日本で初めての身障者カヌー大会『パラマウント・チャレンジカヌー』をスタートさせるなど、社会活動にも尽力。近年では、びわこ成蹊スポーツ大学客員教授を務めるなど、野外教育の分野においても活動する。阪神淡路大震災や東日本大震災では「アウトドア義援隊」を組織し、アウトドア経験を生かした災害支援活動を自ら被災地で陣頭指揮した。

辰野勇

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

ジャルパックで行く、ジャパンエコトラック ライドイン阿蘇ツアー

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