2017年3月に日本で34か所目の国立公園となった、鹿児島県南部の島々、奄美群島。公園のテーマは「生命にぎわう亜熱帯のシマ~森と海と島人の暮らし~」。奄美といえば「奄美大島」がいちばんに思い浮かぶかもしれませんが、群島のなかにはさまざまな個性を持った島々がいっぱいです。今回は8つの有人島のうち、与論島、沖永良部島、徳之島、喜界島について、それぞれの島を代表する「森と海と島人の暮らし」を紹介します。

与論島で、真っ白な砂浜のビーチに癒される

百合が浜、兼母(カネボ)海岸

画像: 世にも珍しい「船で渡る砂浜」、百合が浜

世にも珍しい「船で渡る砂浜」、百合が浜

与論島にある百合が浜は、毎年春から夏にかけ、中潮から大潮の干潮時に姿を現す真っ白な砂浜。陸が海に接する「海岸」ではなく、条件がそろったときにだけ海面に出現する「小島」です。大金久海岸から約1.5kmの距離を船で渡り、期待に胸を膨らませつつ上陸すれば、360°どこを見ても、青い空と白い雲、エメラルドグリーンの透きとおった海が広がります。「百合が浜で年齢の数だけ星砂を拾えば幸せになれる」という伝説もある、ロマンチックなビーチです。

画像: 夕日が美しい兼母海岸

夕日が美しい兼母海岸

与論島には百合が浜以外にも、真っ白な砂浜のビーチがたくさんあります。与論空港から徒歩10分ほどの場所にある兼母(カネボ)海岸は、美しい夕日のスポットとしても有名。上の写真に見られる砂浜の凹凸は、「幸せを呼ぶ」とされるウミガメの足跡です。ウミガメを間近で見たい方は、遭遇率があがるといわれる10月から12月の訪問がおすすめです。

赤崎海岸「お食事処 味咲」

大金久海岸から海岸沿いに南へ向かったところにある赤崎海岸も、真っ白な砂浜がすばらしいビーチ。海辺の散歩に疲れたら、赤崎海岸のすぐ目の前にある「味咲」でひと休みもまた一興です。こちらのお店では、名物の島もずくをつかったお蕎麦やお茶漬けが人気。また、「ひみつのアッコちゃん」「めがね」「かおり」など、名前も見た目もユニークなかき氷も評判です。ぱちりと写真に収めれば、きっとフォトジェニックな一枚になるでしょう。

画像: 色鮮やかでトロピカルな魅力満載の、「味咲」のかき氷

色鮮やかでトロピカルな魅力満載の、「味咲」のかき氷

与論島に白い砂浜のビーチがたくさんあるのは、珊瑚礁が隆起してできた島だから。海が綺麗なビーチは数あれど、これほどまでに砂浜が白いビーチは珍しく、「東洋の真珠」とも呼ばれています。

ヨロン島観光ガイド
webhttp://www.yorontou.info
お食事処 味咲
営業時間11:00〜18:00(予告なく変更の可能性あり)
定休日不定休
住所鹿児島県大島郡与論町麦屋815(赤崎海岸入口)

「洞窟の聖地」沖永良部島でケイビング

ケイビング(洞窟探索)

画像: 初心者向けのコース「リムストーンケイブ」。棚田のように広がる「リムストーン」と呼ばれる鍾乳石が見られる。天井からも鍾乳石がつららのように垂れ下がる

初心者向けのコース「リムストーンケイブ」。棚田のように広がる「リムストーン」と呼ばれる鍾乳石が見られる。天井からも鍾乳石がつららのように垂れ下がる

大小200から300の洞窟や鍾乳洞を持ち、愛好家のあいだでは「洞窟の聖地」ともいわれる沖永良部島。気軽に雰囲気を味わえる観光用の鍾乳洞「昇竜洞」もありますが、じっくりと満喫したい方には、ケイビング(洞窟探索)ツアーが断然おすすめ。ヘルメット越しに、頭を岩にぶつけたり、ごつごつした岩の隙間を屈んで通過したり、腰まで水につかったり流されたりと、全身で洞窟を体感できます。ツアーでは、ヘルメットやヘッドライト、靴などの機材もレンタルできるので安心です。

画像: 浅い水たまりで砂粒などを核にできる「ケイブパール」(洞窟真珠)。水たまりに落下する雫によって砂粒が水中で回転し、鍾乳石をまといながら真珠のように丸く成長する

浅い水たまりで砂粒などを核にできる「ケイブパール」(洞窟真珠)。水たまりに落下する雫によって砂粒が水中で回転し、鍾乳石をまといながら真珠のように丸く成長する

また、沖永良部島には1月から3月にかけて、ザトウクジラがやってきます。冬でも海水温が下がりすぎないので、クジラと一緒に泳ぐホエールウォッチングも楽しめます。

こんな魅力にあふれる沖永良部島ですが、島の人々にとっては、洞窟もザトウクジラも当たり前で、あまり珍しいものとは思っていなかったそう。そのためか、多くの宝物を持ちながら、あまり観光地化されていないのも沖永良部島の魅力のひとつです。たくさんの「原石」が島中に転がる島を、探検してみてはいかがでしょうか。

おきのえらぶ島観光協会
webhttp://www.okinoerabujima.info

闘牛と子宝の徳之島。2種類の奇岩群も楽しめる

犬の門蓋、ムシロ瀬

画像: 犬の門蓋の眼鏡岩

犬の門蓋の眼鏡岩

一方、島の北東部には、火成岩の一種である花崗岩の海岸「ムシロ瀬」が広がります。ごつごつとした岩肌が連なる、南国には珍しい花崗岩がつくり上げる景色が「ムシロ」(藁やい草などで編んだ敷物)のように見えることから、このように名づけられました。ほかの3島はほぼ珊瑚礁からなっているため、花崗岩の景色を見ることができるのは徳之島ならではです。

画像: ムシロ瀬の花崗岩がつくり出す個性的な風景

ムシロ瀬の花崗岩がつくり出す個性的な風景

戦艦大和慰霊塔(犬田布岬)

また、夕日スポットとしても知られる犬田布岬には、第二次世界大戦末期に沈没した「戦艦大和」を祀る慰霊塔があります。戦艦大和の沈没地点が徳之島沖と考えられていたために、1968年に建立されたものです。この慰霊塔のみならず、奄美群島を旅していると、いたるところで戦跡に出会います。沖縄に近く、軍事施設等も多く築かれていた奄美の歴史をより深く知るためには、避けて通れない場所です。

画像: 犬田布岬の戦艦大和慰霊塔

犬田布岬の戦艦大和慰霊塔

闘牛

徳之島ではおよそ400年前、薩摩藩の支配下にあった時代から今日に至るまで、闘牛が島民のあいだで親しまれています。島には闘牛場が複数あり、飼われている牛の数は約300頭。島民は家族のような愛情をかけて牛を育てており、あどけない顔をした青年たちが海岸を散歩させるなど、一人前に牛を扱っている姿を見かけることができます。

画像: 徳之島の代名詞のひとつともいえる闘牛

徳之島の代名詞のひとつともいえる闘牛

ちなみに徳之島には出生率が高い町が多く、空港は「徳之島子宝空港」の名前で親しまれています。子育てや牛のお世話に夢中で、観光客をあまり気にしていない雰囲気もある徳之島の人々。必要以上にかまわれない、心地よい距離感も魅力です。

徳之島観光連盟
webhttp://www.tokunoshima-kanko.com

変わらぬ「島人の暮らし」が息づく喜界島

手久津久集落の巨大ガジュマル、神社仏閣

喜界島には数多くの神秘的なガジュマルの木があります。ガジュマルは家の防風垣として、昔から島の人々にとって重要な役割を果たしてきました。

画像: 手久津久集落の巨大なガジュマルの木

手久津久集落の巨大なガジュマルの木

樹齢100年を超えると推測される、手久津久集落の巨大ガジュマルもそのひとつ。空を覆い隠すように伸びる枝や、16mに及ぶ幹回りは圧巻です。伸びた気根が幾重にも垂れ、とても1本の木とは思えない迫力。不思議な力に満ちあふれた、島いちばんのパワースポットで、町指定の天然記念物ともなっています。

画像: 苔むした大きな岩が鳥居の横に据えられた末吉神社(左)と、さとうきび畑のなかに佇む保食神社(右)

苔むした大きな岩が鳥居の横に据えられた末吉神社(左)と、さとうきび畑のなかに佇む保食神社(右)

パワースポットといえば、喜界島は周囲50km弱の小さな島にもかかわらず、そのなかに全部で52もの神社仏閣が存在します。島の歴史のなかで、それだけ信仰と人々の生活が深く結びついていたということでしょう。生い茂る樹木と石垣に守られた神社や、広いさとうきび畑のなかの神社など、個性的な佇まいのものも数多くあり、大自然のパワーとあいまって神秘的な魅力がより印象的に感じられます。

珊瑚の石垣

画像: 花良治集落の珊瑚の石垣に、鮮やかなピンク色のアサヒカズラが映える

花良治集落の珊瑚の石垣に、鮮やかなピンク色のアサヒカズラが映える

喜界島を歩いていると、台風や潮から家を守るために珊瑚を積んでつくられた石垣を数多く見かけます。この「珊瑚の石垣」は、昔は奄美群島のほかの島々にもあったそうですが、「ハブが住みつく」という理由でいまはほとんどなくなってしまいました。そんななか、喜界島にはハブがいないので、現在も昔ながらの石垣の姿が残っているのです。そこに蔦がからみ、色鮮やかな花が咲いている様子にはまさに「生命にぎわう亜熱帯」を感じます。

古くからの集落や神社、樹木が残る喜界島。人々は珊瑚の石垣やガジュマルの木に守られた家で暮し、神社で祈りを捧げ、ときには荒れ狂う亜熱帯の自然をやり過ごしてきたのかも知れません。そうした「島人の暮らし」が、初めて見るのになぜか懐かしくも感じられます。

喜界島ナビ.com
webhttp://kikaijimanavi.com

特色のある島々が集まる奄美群島。ひとつの島をじっくり訪れるのもよいですが、アイランドホッピングをすることで、それぞれの個性がより鮮明に感じられるでしょう。今回紹介したうち、沖永良部島、徳之島、喜界島へは、いずれも奄美大島から日本エアコミューター(JAC)の飛行機が飛んでいます。与論島へは、鹿児島からはJACで、那覇からは琉球エアコミューター(RAC)で行くことができます。

南の島といえば夏のイメージばかりかもしれませんが、奄美群島は亜熱帯のため、冬でも比較的気候は温暖。これからのオフシーズンの時期は、観光客が少なくのんびり過ごせるほか、ホテルや飛行機がお得な料金で予約できる場合もあります。ぜひこの機会に訪れて、各島の魅力を堪能してみてはいかがでしょうか。

keikei

2011年にオートバイで日本一周、2015年にクルーズ船で世界一周を達成。これまでに訪れた日本の離島は24島。自身の運営するウェブサイト上で、国内外の情報をシェアしながら活動するライター。
日本の残したい風景:www.tabi55.asia
みんなのそら:sky-over-the-head.link
I LOVE JAPAN:i-love-japan.info

東洋のガラパゴスと呼ばれる奄美群島へ

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